2024年12月22日( 日 )

TikTok なぜイギリスで失敗したのか(前)

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 中国のアプリ「抖音」(TikTok)が、はるか離れたグレートブリテンのイギリスで、長引く残業により三行半を突きつけられた。ロンドンで6月9日、TikTokのマネージメントスタッフが現地社員と衝突したことで、退職者が続出している。

TikTok イメージ    退職者も含めた現地社員10人の話では、TikTokがイギリスでTikTok Shop(ミニショップ)を開設してから退職ラッシュが始まり、これまでに少なくとも20人が辞め、メンバーは半分しか残っていないという。ある社員は、「まるでお遊びのように毎週誰かが辞めていく。月曜日は必ず、誰が首になったか、誰が辞めたかと聞いている」と話している。

 あるTikTokショップの店主は、「イギリスはもうおしまい。この仕事はもう捨てられて誰も見ていない。イギリス人社員の退職騒ぎが原因だろう」と話した。店は今年4月中旬ころからアクセスが落ち始め、取引量が激減していた。「イギリス人は残業続きの勤務が嫌で、社内で対立してしまった」とのことである。

 事の起こりは、TikTokヨーロッパ通販担当のJoshua Ma氏がある日の会議で放った「資本家として、『会社は出産休暇を与えるべきだ』とは思わない」の一言である。これに現地の社員が激怒し、後にMa氏がイギリスのスタッフの前から姿を消したとの噂も伝わった。

 これについてTikTokは、「制度はすべて現地の法律に従っており、社員やメディアからの問題についても調査をしている」と答えた。

 TikTok Shopにおける今回の問題は、ある程度予想されたものであった。2021年10月、アジア以外で初となるロンドンで通販本部を開設したが、業績は思わしくなく、社風も批判の対象となっていた。

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 ある社員は、「中国人の社員は技術者が多く、仕事のペースが割と自由であるうえ、勤務形態にも馴染み、作業環境にほぼ慣れ親しんでしまう。ただし、TikTok Shopのような通販部門は手探りの段階であって、売上増も果たさなければならず、かなりの負担が強いられる。また、こういった仕事は運営が大事であり、現地人も採用しなくてはならず、そこで衝突が起こった」と述べている。

 この問題は、海外におけるTikTokの異文化衝突の一端に過ぎない。むやみな成長を続けるTikTokが海外でローカライズ運営をすることの難しさがうかがえ、またこれは中国の技術系会社が海外展開する際に必ず直面する問題である。

 TikTokロンドンのスタッフによると、中国側スタッフと通話をするために早朝から勤務しなければならず、またライブコマースは、夜間のほうが効果が高いので遅くまで勤務しなくてはいけない、という。配信終了後は直ちに「報告書」を書かねばならず、退社後も常にレスポンスを求められ、これを怠ると「名指しで批判」されるという。

 また、TikTokの強引な社風は、リラックスしたオフィス環境のイギリスに似つかわしくないという社員もいる。TikTokは実際、創立以来21年8月1日まで、「996勤務」(朝9時出勤、夜9時退社、土曜日も出勤)をすることで、年間で20営業日分を絞り出す、といった習慣を維持してきた。ロンドンでは、21年のフルタイム労働者の週平均勤務時間が36.8時間で、1日平均ではおよそ7.5時間となる。しかしTikTokの社員によると、ロンドンの通販部門の社員は概ね1日12時間以上働いているという。

 現地社員によると、「我々イギリス人は、お金によるインセンティブはどうでもよく、人間的な気遣いが必要だ」という。今回のTikTok現地社員の退職ラッシュは、文化やマネジメント方法の違いだけでなく、イギリスでの経営不振により社員が重圧を背負っていることも要因の1つである。

(つづく)


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