TikTok なぜイギリスで失敗したのか(後)
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中国のアプリ「抖音」(TikTok)が、はるか離れたグレートブリテンのイギリスで、長引く残業により三行半を突きつけられた。ロンドンで6月9日、TikTokのマネージメントスタッフが現地社員と衝突したことで、退職者が続出している。
TikTokは20年末、ヨーロッパスタッフの拡充を狙い、ロンドンの社員数を同年初めの300人から1,000人に増員して、GoogleやFacebookから新戦力を引き入れた。Eコマースがとりわけ普及して客単価も高いイギリス、そしてヨーロッパの市場を取り込むというTikTokの狙いは理にかなったものであった。
ただし、その道のりはなだらかではなく、EコマースについてはかねてからアマゾンやeBayの現地法人がかなりのシェアを占め、Argos、Asdaなど現地のサイトが残りを分け合う状態で、中国勢は肩身が狭かった。アクセス稼ぎの心得があるTikTokでさえ、通販については赤字続きであった。
TikTokはまた、ヨーロッパでのシェア急上昇を狙って安値での勝負を仕掛けた。アップル、ブランドバッグ、大手家電の類似品を配信スタジオに持ち込み、正規品と抱き合わせて売ったりもした。
TikTokは、希望小売価格が450ポンド(約7万5,000円)であるダイソン製ドライヤーを真似た「ダイソンもどき」のドライヤーを、たった14ポンド(約2,350円)で売った。これを知ったダイソンはTikTokに対し、海賊版を取り締まるよう求め、「不合格品」の排除へ前向きに取り組むよう促すメッセージを送っている。
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トランプ氏はなぜTikTokの禁止に拘るのか(前)あるイギリス人社員は、「ライブコマースは今まで、『やや成功』したものでも売上高が5000ポンド以下であり、ほとんどが売上ゼロで、会社の目標は『非現実的』である」と訴えている。
テレビショッピングの習慣がない中国人は完全にネットショッピングにはまっているが、欧米各国ではまだライブコマースが定着しておらず、テレビショッピングも時に利用されている。外国人によるフルタイムでのキャスターもそれほど多くない今、ライブコマースという業種はまるで成り立たない。これもイギリスやアメリカへの進出を狙うTikTokが不振にあえぐ理由である。
イギリスで失敗したTikTokは今、東南アジアに目を向けている。TikTokは今年4月から、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピンへの越境ECを始めた。ライブビデオが外国にまで配信されたことで、中国のショップが東南アジアのTikTokShopに進出し、動画やライブコマースを通じて東南アジアに売り込むことができるわけである。
あるネットショップの店主は「東南アジアは品がよく出る。今は1日で数百件が出ていく」と言い、タイが一番の売れ所という。TikTokは5月に入ってからかなりのショップが東南アジアに進出している。
通販について、東南アジアではほとんどの国で利用率が5%以下であり、現在はまだ育成の段階にあるが、TikTokの中国ショップがちょうどその消費習慣を育てていく役割を演じている。東南アジアは人口も多く、利用者の性質も中国とかなり似通っている。ただし、イギリスの例からわかるように、しっかりした現地の運営スタッフとサプライチェーンにおける強みがないようであれば、やはり同じように、事業の不具合やアクセス不振などといった問題が東南アジアでも発生することになろう。
猪突猛進を続けるTikTokには、異文化衝突によりもっと厄介な問題が多分に存在している。
(了)
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