【清々しい品格(6・前)】タイ国はウクライナ終戦後、復興に全力を尽くす
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DEVNET INTERNATIONAL
タイ王国支部長
タナワン・ブフクファン 氏DEVNET INTERNATIONALタイ国支部長のタナワンさんを囲む会で講話された内容を掲載する(6月20日午後3時30分~午後5時、東京八芳園・壺中庵)。
タイ運河(クラ運河)、2年以内に着工開始
タイ王国にとってタイ運河建設・貫通は長年の悲願だった。国際物流は毎年増加をたどり、コロナ禍によって海運の渋滞が慢性化しており、世界の経済活動に支障をきたしている。この悪影響はタイだけでなく、アセアン諸国の経済発展の足を引っ張る事態となってきた。そうした現状を鑑みて、タイ運河建設の実現が緊急の課題となってきたのである。プロジェクト実現に向けて、DEVNET INTERNATIONALの明川文保総裁をアドバイザーに迎えて入念に討議し、計画を立案した。
まず、このメガプロジェクトを王室プロジェクトとしてスタートすることについて、国王から内示をもらっている。運河の距離は110km、横幅3km、深さ40mで、20万tの船が交互通行できる規模となる。掘除の結果、膨大な土砂が発生する。この土砂を有効活用して、運河の両サイドに広範囲な不動産ゾーンが誕生する。この事業はタイ一国だけのものではない。アセアンの国々と寄り添って、事をなしていきたいと思っている。現時点では、2年以内に着工できる工程を練り上げている。
タイで開催されたAPECでの立場
先立って、タイで2022年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開催された。「Open、Connect、Balance」を掲げ、あらゆる機会に開かれ、あらゆる次元でつながり、あらゆる側面でバランスをとることに注力していく考えである。ロシアによるウクライナ侵略は世界経済にとっても深刻な問題だ。世界が対立で二分するのは悲惨なことである。金融危機とCOVID-19のパンデミックから立ち直り始めた今、ロシアによるウクライナへの侵攻は厄介な要因だ。だからこそ、当事者間の話し合いによる平和の復元を望んでいる。
5月にバンコクで開催されたAPEC貿易担当大臣会合では、APEC加盟国・地域の21カ国の貿易担当大臣がさまざまな重要課題について議論し、多国間貿易システムの良好な機能の支援、シームレスな持続性の促進、そして地域の包括的かつ持続可能な成長に向けて推進することを表明した。この会議は、開かれた貿易と投資を促進する第12回世界貿易機関(WTO)閣僚会議(MC12)で実質的な成果を上げるために、具体化された意見交換と政策提言を行う良い機会であったと思う。
タイの基本的な立場は今まで述べてきた通り、世界の平和と、貿易・投資がトラブルなく自由に行われる環境の整備に全力投入することである。この保証の前提があってこそ、タイ国、アセアンの同志国家、APEC加盟国の経済・国民・将来にとって相互の有益な方法で、弾力的・包括的、均衡のとれた持続可能な成長を達成できると我々は確信している。
タイの政治的立場もバランスが信条
国際レベルでは、プラユット・チャンオチャ首相の政府は中国政府と緊密な関係にある。14年以降、2国間ではさまざまな協力が行われている。現在、タイと中国を結ぶ高速鉄道プロジェクトが一帯一路構想(BRI)の一環として進行中で、その一例である。
しかし、タイ国はほかの国とも良好な関係を築いており、あらゆる面でバランスを保つという傾向を貫くことを信条としてきた。これは不変であり、このバランスを国として将来も貫く。
ウクライナ侵略戦争後に復興支援に尽くす
ウクライナ侵略戦争に対するタイの立場は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の立場と同様に、明らかに中立である。中立的な立場が国益に適うということだ。タイ政府は、今年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことについて、タイに駐在する25カ国の大使からロシアの侵攻に反対するよう圧力がかかっても言及しなかった。ただ、ロシア軍のウクライナからの撤退を求め、ロシアのウクライナへの侵略を譴責(けんせき)する国連決議だけを支持した。その理由は、タイとロシアの長年の関係を考慮しなければならないからだ。
しかし、タイは紛争に巻き込まれた国の人々の安全を懸念し、紛争と戦争を終わらせるための和平プロセスを支持する。タイ外務大臣は、すべての関係者に最大限の自制を求め、事態の収拾に向けて外交手段を含むあらゆるチャネルで対話を追求するために、最大限の努力を払っている。
だが、ウクライナ侵略戦争は長期化しそうな雲行きである。長期化すれば、すべての関係者と全世界に深刻な影響を与えることになる。また、欧州連合(EU)によるロシア産原油の輸入禁止は、EUとその他の世界経済にとって予測不可能な代償を払うこととなった。現在、原油価格の高騰は、世界のインフレと経済ショックを引き起こしている。だからこそ、タイ国は「ウクライナ侵略戦争の一刻も早い停戦」を提案したいのである。
「ウクライナでの戦争行為の停止、早急な復興の実現」については、タイ国王も強く念願されている。復興支援にも多大なる関心を抱かれている。具体的な支援策として早速、2,000万人分の食糧支援体制の準備を始めた。復興作業要員を60万人派遣することも検討している。復興のインフラ整備の一番手になる仮設プレハブ、輸送トレーラーの搬送の用意も抜かりなく進めている。
世界の台所の強みを生かして世界に貢献
タイは豊富な天然資源、年間を通じての栽培シーズン、そして高い技能を持つ地元の労働力を併せもつことから、古くから「世界の台所」と呼ばれてきた。タイの1万社の食品加工業者は、安全で豊富な食糧を供給できる信頼できるサプライヤーとして際立っている。また、コメは世界6位、砂糖は5位、鶏肉とエビは6位と世界トップクラスの常連だ。
加えて、持続可能かつ安全な「未来の食品」を開発するために、最先端技術を駆使してアジアのイノベーションハブを目指している。タイの世界への貢献については、食料供給基地としてフル活動することを戦略に設定している。
※タナワン氏のプロフィールは次回掲載
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