大分空港への海上アクセスの整備(前)
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運輸評論家 堀内 重人
大分空港へのアクセスの不便さ
大分県は2020年3月4日、大分市内から遠くて不便な大分空港への利便性を向上させるため、海上アクセスを導入する旨を発表した。大分空港は大分市から北東の国東半島に位置している。
大分空港の利用者数は増加を続けている。2018年度の大分空港の利用者数は、16年ぶりに200万人を突破した。LCCの就航拡大やインバウンドの増加もあり、コロナ前には今後もさらに増加すると見込んでいた。
空港は地域発展における重要な交通基盤であり、航空需要の増加を確実に取り込み、地方を発展させることは重要である。そうなると最大の課題となるのが、大分空港が他空港よりも著しく時間を要することであり、大分空港と大分市内などとのアクセスの改善が必要となっている。
現在、大分市内と大分空港を結ぶアクセスは路線バスが担っているが、所要時間は約60分も要し、大分市内などで交通渋滞に遭遇すればさらに時間を要することになる。
大分県では18年度から大分空港アクセスの改善について調査を進め、結果を取りまとめて発表した。
大分県は、大分市と大分空港の間のアクセスを改善させるには、「ホーバークラフトによる輸送が適当」と判断した。運航開始は23年以降を予定している。
ホーバークラフトの導入を決めた理由
ホーバークラフトは、空気の力で浮いて海面を走る交通機関である。地上も走行が可能であるが、自動車との混合が生じるなど問題が多い。そこで船舶として水上で運用される。
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JR九州の在来線特急料金値上げについて(前)ホーバークラフトの定期旅客輸送は、かつては大分空港へのアクセスだけでなく、国鉄・JRの宇高連絡輸送で活躍していた。前者は21年まで運航されていたが、船舶の更新時に当時の三井造船が後継船を建造しない旨を示したことや、リーマン・ショックの影響で大分空港の利用者が減少したこともあり、運航を取り止めた。後者は、瀬戸大橋の開業により廃止されている。現在では、ホーバークラフトは世界的に見ても珍しい例となる。
大分県は、陸路と海路による輸送を比較した場合、大分市街と大分空港は別府湾を挟む位置にあり、ショートカットで進める船舶による「海上アクセス」が最適であるとした。
大分空港と大分市内の間に鉄道を整備するとなれば、建設費が膨大であるだけでなく、鉄道などの陸路では迂回を強いられてしまう。船舶による海上アクセスは、事業費が安価になるだけでなく、所要時間も短くなる。
海上アクセスを採用することになったが、高速船が2案、ホーバークラフトが1案の計3案が出た。船型の選定については、時間短縮の効果、空港側の接岸などの問題、発着地側の整備費、運航開始までの期間を検討した。
高速船を導入した場合は、定員が多くなるために輸送力がある半面、現在約60分の所要時間が40分に短縮されるのに対し、ホーバークラフトを導入した場合には25分まで短縮されるという。
空港側の接続に関しては、高速船では新たに港などを建造する必要が生じるため、空港からの距離が約250~750mも離れてしまう。一方、ホーバークラフトならば小型であることもあり、空港から約40mと隣接した距離となる。
大分県の負担額を見ると、高速船が約115~200億円であるのに対し、ホーバークラフトであれば約75~85億円となるうえ、整備期間も高速船の11~12年に対し、ホーバークラフトは3~4年で済む。
船舶の建造費が高く、輸送定員が少ないホーバークラフトではあるが、高速船の場合には新規に空港に港を建造する必要が生じるため、そのコストや建設に長い年月を要してしまう。それらを検討した結果、既存施設を活用できるホーバークラフトが最善であると判断された。
(つづく)
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