大分空港への海上アクセスの整備(後)
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運輸評論家 堀内 重人
上下分離経営の採用
ホーバークラフトによるアクセスが採用されることになったが、次に問題となるのは「採算性」である。岸壁の整備など社会インフラの整備に莫大な投資が必要であり、これを回収することは困難と予想された。
そこで、鉄道事業で見られる「上下分離経営」を採用すれば、黒字経営が可能とされた。鉄道で「上下分離経営」を実施する場合、「公」がインフラを整備し所有するが、列車運行は「民」が担うことになる。
大分空港へのホーバークラフトの就航に関しては、大分県が船舶を購入する以外に、発着地や駐車場、発着地に騒音対策として遮音壁などの社会インフラを整備する。大分県では75~85億円程度を見込んでいる。
民間の運航事業者は、大分県から船舶を借りて運航する。運航事業者は人件費、燃料費、船舶修繕費などのランニングコストを負担するが、大分県は貸付料と施設使用料について必要な減免を行う代わりに、損失補てんはしない。
需要予測と今後の予定
利用者数は年間30~40万人台を想定。この数値は、ホーバークラフトの希少性を生かした観光利用も含んでいる。
運航する船舶は定員80名程度のホーバークラフトであり、船内はバリアフリー対応となる。常用2隻と予備1隻の3隻体制で開始し、大分市内と大分空港までの距離が約29km、所要時間は最速で約25分を想定している。運航する時間帯は概ね午前6時~午後10時としている。発着場所については、大分市側は西新地または西大分を候補に調整する。空港側は既存の旧ホーバークラフト航走路を活用する。
2020年4月から運航事業者の選定などを開始し、同年10月から船舶の設計・建造だけでなく、発着地の設計・整備などを進めていて、23年以降に運航を開始する予定である。
大分空港と大分市内の間でホーバークラフトが復活するとなれば、ホーバークラフト自体が日本国内で製造されていないことが問題となる。かつては宇高航路があったことから、三井造船(現在の三井E&S造船)が建造していたが、ホーバークラフトを導入するとなれば、海外メーカーの船舶を導入しなければならない。
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新造船が導入された宮崎カーフェリー(前)世界的に見ても、ホーバークラフトを使用した航路自体が珍しくなっており、通年の定期航路はイギリス本土とワイト島を結ぶ航路ぐらいしかない。旅客輸送用のホーバークラフトを建造できる造船会社も少なく、ホバートラベルに納入した英国のグリフォン・ホバーワーク社ぐらいと思われる。
大分空港へのアクセスを担うホーバークラフトも、大分県がグリフォン・ホバーワーク社に発注している。
今後の展望
大分市内から大分空港へのアクセスとして、23年からホーバークラフトによる輸送が予定されているが、この事例はほかの空港でも応用が可能である。
例を挙げれば、関西国際空港や中部国際空港が該当する。これらの空港は海上空港であるうえ、かつて関西国際空港では神戸~空港間で高速船を運航していた。コロナが収束すれば、神戸だけでなく、淡路島や高松、徳島からの高速船によるアクセスを検討してもよいだろう。
中部国際空港に関しても、四日市や桑名だけでなく、鳥羽や松阪、津をはじめ、浜松などからの高速船によるアクセスを検討してもよいと考える。伊勢湾に位置することから、陸路では名古屋への迂回を強いられるうえ、交通渋滞に遭遇するなど時間的に不安定な面もある。
海には「渋滞」がないことから、陸路では迂回を強いられるような地域に対しては、ホーバークラフトや高速船によるアクセスを積極的に検討する必要があるように感じる。
(了)
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