2024年12月22日( 日 )

韓国、対中貿易収支が赤字に、貿易戦線に異常の兆し(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

上半期に最大の貿易収支赤字記録

釜山港 貿易 イメージ 一方、今年上半期の韓国の貿易収支は、103億ドルの赤字を記録し、韓国経済に黄信号が灯っている。上半期基準では、史上最大規模の赤字額だ。以前の最大赤字額は、1997年上半期の91億6,000万ドルであった。今年上半期の輸出額は、前年同期対比で15.6%増加の3,503億ドルであったが、原油高や原材料価格高騰のあおりを受け、輸入額は26.2%伸びて、3,606億ドルを記録して大幅な貿易赤字となった。これは統計を開始した56年以来、最大の赤字額で、アジア通貨危機や世界金融危機の時よりも赤字額が大きかった。

 今年上半期の原油、天然ガス、石炭など3大エネルギーの輸入額は、878億6,000万ドルで、昨年の468億6,000万ドルと比較すると、87.5%も急増している。このような状況だったので、貿易収支が最大の赤字を記録したわけだ。韓国経済を支えてきたと言っても過言ではない貿易収支が赤字となっているなか、他の悪材料も重なっており、韓国経済は、「一寸先は闇」のような状況だ。

 米国の大幅な利上げで、米国経済も失速が予想されているし、米国経済が失速すると、韓国の輸出企業への影響は避けられないだろう。景気低迷が予想されるなか、需要は確実に減少し、企業の実績見通しも、決して明るくない。とくに韓国を代表する企業であるサムスン電子は、下半期にDRAM価格の下落も予想され、業績悪化が懸念されている。景気が悪くなると、消費者の財布の紐が固くなるので、携帯電話の買い替え需要など、すべてが落ちこむだろう。

 世界経済の減速懸念から原油、銅、鉄鋼などの価格も軒並み下がっている。また、新型コロナウイルスの変異株で感染者数が再び増えるのではないかという懸念と、ウクライナ戦争の長期化で世界経済がどれほどダメージを受けるかもわからない状態だ。需要が伸びないなかで、インフレを抑制するため、FRBは利上げを継続する可能性が高く、世界中が今までにない危機に見舞われる可能性もある。韓国もガソリン価格を筆頭に、食料品などの物価上昇が続いており、庶民の暮らしは厳しさを増している。

 韓国では5月に5%の物価上昇を記録し、庶民の暮らしが脅かされている。上記でみてきたように、今年の上半期には103億ドルという史上最大の赤字を記録し、韓国の外貨保有高も大幅に目減りしている。そのようなことが反映されたのか、ウォンとドルの為替レートも危機のボーダーラインとされている1,300ウォンを上回っており、通貨危機への警戒感が高まっている。

 現在の韓国の経済状況は、希望をもてるような材料がほとんどない。今後どのように対応するかによって、韓国が以前経験したような通貨危機が再び訪れるのではないかという危機感が高まっている。

(了)

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