ウォン安進行で韓国経済危機の懸念が高まる(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏為替レートとは
貿易などで2国間で代金の決済が行われるときに、必ず登場するのが為替レートだ。国際取引ではドルをベースに取引が行われることが多いので、まず自国通貨とドルを交換しなければならないことが頻繁に発生する。自国通貨とドルを交換する際の交換比率が為替レートなのだ。すなわち、自国通貨の価値をドルで表示して、自国通貨の価値を図っているのが為替レートである。
ウォン・ドルレートというのは、1ドルを買うのに韓国ウォンはいくら必要なのかを表す。為替レートが上がって、1ドルが1,000ウォンから1,500ウォンになったら、1ドルの商品を購入するのに、以前は1,000ウォンが必要だったのに、今は1,500ウォンが必要になるので、ウォンの価値が下落したことになる。ウォンの価値が下落すると、原油や原材料などを輸入するときの輸入価格は高くなるし、企業の生産コストもアップするし、物価にも上昇圧力がかかる。
それだけではない。韓国政府も企業も、資金が不足すると、海外で借金をする場合が多く、韓国はドル負債を多く抱えているが、ウォンの価値が下落すると、負債の返済負担が重くなってしまう。
このような状況になってくると、債権者は資金回収に問題が発生するのではないかと思い、早期の資金回収を急ぐことになり、それがさらなるウォン安を誘発する。このようなことが急激に進むと、それが通貨危機に発展する。通貨危機を回避するためにも、韓国政府も自国の通貨防御に手を打つことになる。それが為替介入である。
韓国政府も行き過ぎた最近のウォン安を防御するため、保有している外貨準備金のうち、ドルを売りに出す。しかし、為替介入の効果は未知数で、外貨保有高だけ減ってしまうこともよくあるようだ。またウォン安になると、個人レベルでは、海外に子どもが留学している場合は送金額が増え、負担が増加するので、最近の急激なウォン安は親たちの悩みの種になっている。
ウォン安が止まらない
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韓国の対中貿易収支が赤字に、貿易戦線に異常の兆し(前)韓国は原材料や部品などを輸入して、それを国内で組み立て、加工して輸出する産業構造をもっている。原材料と中間財の海外依存度が高いため、為替レートによって生産コストの変動が激しくならざるを得ない。そのような状況下、15日のソウル為替市場でウォン・ドルの為替レートは、一時的に1,320ウォンを突破した。ウォン・ドルの為替レートが1,320ウォンを突破したのは2009年4月30日以降、13年2カ月ぶりのことだ。21年から為替レートは下降トレンドに入り、その後ウォン安が止まらない状況だ。もっと深刻なのは、今年の下半期もこのトレンドが続きそうなことだ。
その背景にはまず、米国は新型コロナウイルスの感染拡大で、景気が低迷するのを防止するため、大量の量的緩和を実施してきたが、今に至って、その逆の量的緊縮政策に切り替え、利上げを実施していることがある。これによって、海外に投資していた資金は回収されることになるので、投資した国の通貨を売って、ドルを買うことになる。韓国でも外国人の資金が相当流出したので、その結果ウォン安となった。
2つ目の背景に、原材料の価格高騰がある。韓国経済が今後悪くなるのではないかと懸念され、それがウォン安を引き起こしている。3つ目に、21年以降韓国株式市場の株価が振るわず、外国人投資家が株を大量に売っていることがあり、それがウォン安が進む要因の1つとなっている。
(つづく)
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