安保法制違憲判断に反論余地はない
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NETIB NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介している。6月10日のブログでは、安保法制案をめぐる論議のなかで、憲法を改定せずして実質中身を改定しようとしている安倍政権の矛盾をするどく指摘している。憲法学者が「違憲」と断じているにも関わらず安保法制案を主張する安倍首相の論法は詭弁に詭弁を重ねているに過ぎないというのが、植草氏の主張だ。
ものごとを崩壊させる原因は「矛盾」である。「矛盾」とは、「どんな盾も突き通す矛(ほこ)」と「どんな矛も防ぐ盾(たて)」を売っていた楚の男が、客から「その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と問われ、返答できなかったという話に基づく故事成語である(Wikipedia)。
もし矛が盾を突き通すならば、「どんな矛も防ぐ盾」は誤り。もし突き通せなければ「どんな盾も突き通す矛」は誤り。したがって、どちらを肯定しても男の説明は辻褄が合わない。
安倍政権が窮地に追い込まれている理由は矛盾を押し通そうとしているからである。順風満帆(じゅんぷううまんぱん)にみえる安倍政権だが、矛盾を押し通そうとするなら、思わぬ転落に直面する可能性があるだろう。安倍晋三氏は憲法改定を主張していた。憲法を改定し、集団的自衛権の行使が可能にすることを提唱してきたのだ。ところが、憲法改定のハードルは高い。簡単に憲法を改定することができないことが分かった。
ここで、矛盾のない道筋を考える者であれば、憲法改定を実現させる道をじっくりと見定める。ところが、安倍晋三氏は、憲法を変えるのが難しいから、憲法を変えずに、中身だけを変えてしまおうとした。憲法の中身を変えるということは、実体としての憲法改定である。憲法を改定せずに憲法を改定しようとしているのである。これを矛盾と言わずして何と表現できるだろうか。これは「おそまつくん」である。安倍晋三氏、谷垣禎一氏が、賢明に詭弁を積み重ねるが、詭弁を重ねても、人を説得できる論理を構築することはできない。潔く法案を撤回する決断を示せば、その見識に対する評価を得ることができる。「過ちて改めざる、是(これ)を過ちと謂(い)ふ」は論語にある言葉だ。憲法は国の基本法である。憲法を基礎に置いて政治を行うことを「立憲政治」と言い、この考え方を「立憲主義」と言う。権力の暴走を防ぐために、憲法に基礎を置く考え方が「立憲主義」である。安倍政権が提案している安保法制は、日本国憲法に反している。この点が問題にされているのだ。
政府がこれまで示してきた憲法解釈に照らしても、安倍政権が国会に提出した安保関連法案は矛盾する。昨年7月1日の閣議決定も憲法に反している。このことが問題にされている。決定打になったのは、国会の憲法審査会で、自民党が推薦して招致した憲法学者が安倍政権提案の安保法制案を「違憲」であると断じたことだ。安倍首相は現状を冷静に判断して、法案を撤回するべきである。それが、安倍首相にとってのぎりぎりの逃げ道である。この判断を誤り、過ちに過ちを重ねれば、安倍政権は転落することになるだろう。
安倍政権は1959年の最高裁砂川判決を正当性の根拠に持ち出すが、砂川判決は集団的自衛権を容認した判決ではない。最高裁砂川判決は、「国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを憲法は禁じていない」として、自衛権を認めたが、集団的自衛権を認めたわけではない。
国連憲章第51条は自衛権として、個別的自衛権と集団的自衛権を明記し、日本政府は日本が主権国家として自衛権を有することから、集団的自衛権を有すると判断してきた。しかしながら、「集団的自衛権については、憲法の制約からこれを行使できない」と判断してきたのである。
歴代政府は砂川判決を踏まえて国会答弁や政府見解を積み重ね、1972年の政府見解で、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」ことを明確に示し、爾来、40年以上、この見解を維持してきた。安倍政権は、こうした経緯があるにもかかわらず、砂川判決を引っ張り出して「集団的自衛権の行使も許される」と言い始めたのである。これに対して憲法学者が一斉に「論理に無理がある」と批判しているわけだ。詭弁に詭弁を重ねても詭弁にしかならない。安倍首相がここで矛盾を押し通そうとするなら、その矛盾によって安倍政権は崩壊することになるだろう。※続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1165号「安保法制違憲判断に反論余地はない」で。
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