2024年12月22日( 日 )

【福岡IR特別連載94】長崎IR、佐世保市長発言が800億円以上の"熨斗"までつけた

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 『西日本新聞』の23日付記事は、早すぎて驚くばかりだ。筆者は、前号(【福岡IR特別連載93】長崎IR、寝首をかかれた長崎県と佐世保市行政)で、お上が「寝首を掻かれた上に、熨斗まで付けて...」と朝長則男佐世保市長のインタビュー発言を揶揄し、指摘したばかりだ。それも公共放送のNHKの電波に乗せてだ。

 その理由について、すでに具体的にわかり易く解説している。さらに、それを端的にいうと、長崎県知事、佐世保市市長はとくに慎重に発言すべきということだ。しかし、先日の「ハウステンボス(以下、HTB)の所有者が代わっても、長崎IRに影響はない...」という朝長市長の発言は、買収先の中華系企業PAGに対して、お上、すなわち、行政機関自身が保証したようなもので、“とんでもなく愚かで、大変なお人好しだ"と指摘している。

長崎県庁 イメージ    これらの行政機関がHISの澤田氏に「寝首を掻かれた上に、熨斗まで付け」たというとが、西日本新聞の報道により、大きな見出しで「HTB売却、総額800億円超の案も…」という記事で、瞬時に伝えられた。筆者の予想をはるかに超えた交渉最終段階での転売額だ。

 筆者は、HTB転売に関して、ここ数カ月長崎県行政および関係者に「ハウステンボス転売話が出てきて、墓穴を掘ることになる」と何度も警鐘を鳴らし続けた。もちろん、裏付けがあっての話だ。これが正に現実となり「HIS澤田秀雄氏の"1人勝ち“」と報じられた。

 重ねていうが、IR、行政との約束および200億円という巨額での隣接地買収条件が無ければ、強かかつ優秀なこの中華系企業がこのような値段を付けるわけがない。長崎県行政が、これでもかとたくさんの「熨斗」を付けているがゆえに「付加価値」がつき、この売却額となったのだ。

 関係者はいまだにこのことを理解しておらず、お粗末でお人好しだ。しかし、HIS澤田氏とっては、戦略通りの絶妙なタイミングである。また、同中華系企業にとっても、お上(行政)のお墨付きを得たようなものであり、長崎県行政は大変なことに巻き込まれている。

 信義上の問題はあるものの、「背に腹はかえられぬ」が大義名分となっているため、責められる問題ではないと繰り返し解説してきた。単に長崎県行政および関連自治体の首長の能力が低過ぎるのだ。これらはあくまでビジネスの範囲のことで、彼らが澤田氏の「手の掌で転がされた」だけの話である。

 神近義邦氏(HTBの創業者)が約3,000億円超を投下したHTB。諸々のサラリーマン組織の不始末という経緯を経た後の2010年、HISはわずか20億円で買い取り継承した。長崎県および佐世保市は当時も、10年間の公租公課の免除や減免という「熨斗」を付けまくった。彼らの政治姿勢と行政能力の低さは当時も今もまったく変わらない。

 マスコミは、このことを理解せず、HIS澤田氏の経営手腕を高く評価し、賞賛する報道に終始した。タダ同然で購入し、税金も掛からないのであるから、利益が出るのは当たり前と筆者は当時から揶揄したものだ。

寝首を掻かれても、怒らず、お人好しで終わるのか?

 大石賢吾長崎県知事と朝長市長は、まだ理解できないようで、HIS澤田氏に「熨斗」を送り続けているのである。いずれも"蚊帳の外"に置かれ、結果として「寝首を掻かれた」のだ。

 なぜこの事態にもっとプライドをもって怒らないのか?

 幸いなことに、HTBの売却話は確定しておらず、まだ間に合う。両名は、速やかに"長崎IRの中断"を決断すべきだ!もこの決断ができなければ、近々大変なスキャンダルになるだろう。中華系企業と問題を起こしたばかりで、同じ失敗を繰り返すのか。いい加減に目を覚ますべきだ。

 中華系企業へのHTB売却問題は、IR誘致開発事業とはまったく別物である。佐世保市長・朝長氏は勘違いしているようだ。このことを理解できず、IR誘致事業に執着するなら、両首長の政治生命は終わるだろう。

 しかし、実現不可能ではあるものの、"付加価値"があるように見えるからこそ、800億円超の値が付くのである。HIS澤田氏も長崎IRが実現可能と考えるなら、この時期に売却の話はしないはずだ。不可能と判断しての戦略であり、政府が長崎県の区域認定申請を否決する前に転売の話を進めているのだ。もし、国が承認すれば、HTBの付加価値は今回とは“ケタ違い"になるのだから。

 長崎県と佐世保市の助けになるのは、今後全株式を売却し、法的なつながりがなくなる福岡IRとその財界である。長崎IRの後援者である九州電力の松尾氏も元J R九州の石原氏も後期高齢者であり、誰も彼らに忖度する必要はなくなり、長崎県と佐世保市との強い絆はなくなる。現在、福岡財界で長崎IR実現に期待している人はいない。

 逆に、福岡でIR誘致開発が実現すれば、彼らは自らのリスクなく“漁夫の利"が得られるのだ。(西九州)新幹線の導入もそうだが、人は都会から地方よりも、地方から都会に動く。九州、西日本地域から大都市の福岡市都市圏へ人、物、金が集中するだけだ。

 両名は早急に決断し、福岡IR実現のための提携戦略に切り替えるべきだ。このことにより、長崎県と佐世保市の付加価値が最大限上がる。ぜひ、素直に、このアドバイスを聴き入れ、大英断をと願うしだいである。

【青木 義彦】

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