アビスパ、酷暑の連戦でつかんだ栄冠への道
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Jリーグでは、公式戦のエントリー選手数は最低13人。これを満たさない場合は試合を開催できない──普段ならば「そんな決まりがあるのか」と豆知識程度にしか意識されないルールだが、ルヴァン杯準々決勝に挑んだアビスパにはこのルールが大きく立ちはだかった。
チーム内に新型コロナウイルス感染者が急増したため、8月3日のルヴァン杯準々決勝・対ヴィッセル神戸第1戦では15人、10日の第2戦では14人とギリギリの人数で試合に臨むことになったアビスパ。苦戦を覚悟したサポーターも多かったことだろうが、ピッチに立った選手たちと彼らを送り出した長谷部茂利監督、そしてチームスタッフたちは勝負をあきらめてはいなかった。
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真夏の奇跡! アビスパ、コロナ禍に負けず快勝 神戸1-2福岡「ピッチに立っているのは11人対11人ですから」。第1戦の試合開始前に長谷部監督が語った通り、出場した選手たちは不慣れなポジションにもかかわらず、託された役割を完璧に遂行。第1戦は2‐1、第2戦は1‐0と文句なしの快勝を収め、アビスパ福岡はクラブ史上初のルヴァン杯ベスト4進出をはたした。
第2戦の試合終了後、決勝点となるゴールを決めたFWルキアンの言葉が、すべてを物語っていた。「1人ひとりの選手が、チームのためにどれだけ尽くしたか。それがこの結果です」。ルキアン自身、これまでなかなかゴールに恵まれず、悩んでいたのは間違いない。そしてこの2試合では本来のセンターフォワードではなく、シャドーやサイドハーフとして出場。ゴール前でチャンスに絡むプレーはもちろんのこと、ピンチになれば長駆して自陣に戻り、身体を投げ出す献身的な守備を見せた。
そして、これまで試合出場が少なかったFW城後寿、DF輪湖直樹らベテラン勢の躍動は、「たとえ出番が少なくても、いつでも準備を怠らない」という姿勢を強く感じさせた。長谷部監督が「必要なのは、いい準備をすること」と常々言い続けていることを体現した2試合だったといえるだろう。
また、忘れてはいけないのがサポーターによるアシストだ。ベスト電器スタジアムで行われた第2戦は、声出し応援検証試合。“VAMOS AVISPA”“博多の男なら”“来れないやつらのためにも”……およそ3年ぶりとなるチャントはバックスタンドから玄界灘の海鳴りのように湧き上がり、選手たちを力強く後押しした。そう、“俺たちの街にはアビスパがある”のだ。
さて、ルヴァン杯では苦境を乗り越えて快挙を成し遂げたアビスパだが、並行して進むリーグ戦もまた難しい戦いが続いている。ルヴァン杯準々決勝の間に開催予定だった8月6日のガンバ大阪戦は、アビスパの選手が13人そろわずに延期。13日に行われた鹿島アントラーズ戦では久しぶりにベンチメンバーがそろった状態で試合に臨んだが、オウンゴールで先制を許し、試合終了間際に追加点を奪われて0‐2で敗北を喫した。現在リーグ戦では13位となっている。
そして、アビスパにはもう1つタイトル戦が残っている。現在、準々決勝まで進んでいるアビスパの次の対戦相手は、現在J2のヴァンフォーレ甲府。ルヴァン杯とは違い、一発勝負の一戦は9月7日、ベスト電器スタジアムで行われる。こちらはあと3試合勝てば優勝、そしてアジアチャンピオンズリーグ出場の道が開けるのだ。
J1への定着、そしてルヴァン杯・天皇杯での上位進出。酷暑のなか、厳しい戦いを強いられるアビスパだが、秋には「あの夏を耐え抜いたから、この喜びがある!」と歓喜の瞬間を迎えられるはずだ。今年はカタールW杯の影響で、11月までにすべての日程を終える過密スケジュール。1試合1試合、必死に戦うアビスパの選手たちの背中を、ぜひスタジアムで後押ししてほしい。
【深水 央】
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