2024年12月22日( 日 )

中国の台湾侵攻の可能性は?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

戦力はどちらが上か

米軍 イメージ    軍事力を単純比較すると、軍事費の面では、米国は年間7,780億ドルを使っているのに対して、中国は2,520億ドルである。軍事大国の米国は軍事費だけでなく、戦闘経験などにおいても中国を寄せ付けない。空母と水上艦の戦力においても、両国は数字の面ではあまり変わらないが、質的な面では米国が優位である。

 しかし、地理的な面を考慮すると、中国は米国より有利である。米軍はグアムなどから飛行しないといけないが、中国は台湾まで150kmしかない。戦闘機の場合、米国は第5世代の最先端戦闘機が主流となっている半面、中国軍は第3世代の戦闘機が主力となっていて、米国が優位にある。中国は潜水艦の数とミサイル戦力では米国より強いとされる。

 ところで、中国の台湾侵攻は実際に行われるのだろうか。現在、中国は軍事費を増やし、軍備を増強しているが、米国の強い戦力を意識すると、簡単に戦争を起こすようなことはないだろう。しかし、今すぐ戦争がなくても、今後4~5年間はその可能性はいつでもあるため、周辺諸国は戦争を想定し、万が一に備える必要はあるだろう。

 中国はウクライナの教訓に倣って、もし戦争を起こすとしても、短期決戦を狙うだろう。しかし、台湾は国土の相当部分が山岳地帯で、中国軍が台湾上陸に成功したとしても、短期間に戦争が終わるという保証はどこにもない。それに、米国と軍事衝突すれば、大きなリスクを冒すことになる。台湾を脅すようなミサイル発射や局地攻撃はあっても、台湾海峡を封鎖するような作戦の展開は難しいだろう。

 ただでさえ、中国経済は不動産バブルの崩壊などで厳しい。そのような状況下で、自国の経済に大きな負担になる台湾侵攻を行うだろうか。普通なら可能性は極めて低いと言わざるを得ない。しかし、世界は論理で成り立っているわけではないので、いつ戦争が起こってもおかしくないと想定し、それに備えるのが賢明だろう。

台湾有事はウクライナ戦争の比ではない

 もし、中国が台湾を侵攻することになったら、近隣諸国の被害の程度はウクライナ戦争とは比較にならないほど甚大なものになる。世界経済への打撃は計り知れないものとなり、深刻なものになるだろう。

 とくに台湾は最先端半導体の3分の2くらいを製造しているため、台湾が侵攻されれば、半導体のサプライチェーンが崩壊し、米国だけでなく中国さえも被害を受けることになるだろう。

 日本も、国内で製造できない高性能のロジック半導体のほとんどを台湾から輸入している。日本が海外から輸入する半導体の46.7%が台湾製である。もし、戦争で半導体不足が再び起こると、その影響は自動車、家電、データセンター、人工知能などにおよび、関連産業に甚大な被害をもたらすことになるだろう。そのようなリスクを冒してまで、中国が台湾侵攻に踏み切るかは疑問である。

 米国でも両国の緊張が高まることに反対する声が多い。台湾を守ることが米国の国益にそれほどプラスにならないと米国が判断したら、米国は台湾を放棄する可能性もなくはない。米中激突が表向きの展開であるならば、実は裏で米中が接近するような交渉が行われている可能性すらある。

 国際政治は冷たいもので、状況次第でいつでも流れが変わることもあり得る。当分の間、東北アジアでの緊張は高まることになるだろう。覇権国家である中国の台頭は、周辺諸国にとって大きなプレッシャーとなるだろう。

(了)

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