ユン大統領の支持率急落、原因は?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏人事をめぐる喧騒とコミュニケーション能力不足
ユン大統領は選挙公約として「公正」を掲げていたが、ユン大統領と同じ検察出身者や知人を要職に起用したことが連日報道されて信頼を失い、それが支持率の下落につながっている。
ユン大統領に対する不満の1位が人事の失敗で、割合としては25%を占めている。ある程度、自分が信頼できる人物を採用するのは理解できなくもない。しかし、それが度を越して、国民からの非難があるにも関わらず、そうした人事を続けていたことが、支持率下落を招いている。
ユン大統領は国民との意思疎通を大事にし、大統領執務室を青瓦台から龍山に移転した。権威的で、昔の王室のような構造では国民の声に耳を傾けることができないという理由からである。また、出勤途中、記者の質問に答える時間まで設けた。ところが、こうした新しい試みは裏目に出ている。大統領の経験不足や、未熟さからくる発言のせいで、世論の悪化を招いたのだ。問題を指摘する記者に真摯に答弁するというよりは、言い訳を並べたり、責任転嫁のような発言ばかりが目立ち、大統領に対する国民の信頼は著しく低下した。
大統領自身の「世論調査など気にしない」という発言は、当初大統領が掲げていた公約に矛盾するような発言で、国民の反発を買った。人事の問題を指摘する記者に納得できる説明はなく、前政権との比較だけで、「道徳的に優れた人物なので今回の人事は問題ない」という答えは一般市民をがっかりさせるには十分だった。
韓国がおかれている状況は、過去のどの時期よりも厳しいのに、間違った選択をしてしまったという後悔が国民の間で広がっている。しかし、与党は野党がマスコミをうまく操ってこのような支持率になっているだけで、いずれ支持率は戻るという楽観的な姿勢を貫いている。
課題山積の韓国経済
物価高騰、インフレ率の上昇、利上げによる消費委縮、原油高、ウォン安、新型コロナウイルスの感染再拡大、貿易赤字の増加など、これまで韓国が経験した経済危機よりも、もっと深刻な経済危機が忍び寄っていると経済専門家は警鐘を鳴らしている。しかし、経済が危機に向かっている最中にあっても、これに立ち向かうような具体的な政策や対策は見当たらない。経済の悪化よりも、政府の無対策と立ち向かう姿勢の欠如に国民が失望し、政府の代表である大統領の支持率が下がっているわけである。さらに「国民の力」代表の李俊錫(イ・ジュンソク)氏が性接待スキャンダルをめぐり、6カ月の党員資格停止処分を受けた。それに反発するかたちで与党内に不協和音が生じ、政局運営に影響がでていることに国民は嫌気がさしている。
こうしたことが複合的に作用して大統領の支持率は下落している。また、大統領夫人は選挙期間中に記者会見を開き、自身の経歴詐称を認めたうえで、もし夫が大統領になっても、妻の役割に専念すると宣言していたが、夫が大統領に就任すると、この約束を破り、活動を活発化させている。
もちろんファーストレディーなので、それなりの活動は必要である。しかし、NATO首脳会議に同行する際の日程調整や企画を、知り合いの民間人に任せるなどの問題が発覚、それが大統領の足を引っ張って、支持率下落につながっている。だが最大の問題は、支持率の下落を止めるような材料が見当たらないということだ。
(了)
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