高橋・元電通専務逮捕で勢いづく札幌五輪招致反対派
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「電通の、電通による、電通のための五輪」とも揶揄された東京五輪の汚職疑惑が弾けた。五輪組織委員会の理事だった高橋治之・電通元専務が8月17日、逮捕された。容疑は受託収賄で、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」から5,100万円の賄賂を受け取ったと疑われているのだ。電通事情通は、こんな見立てをしていた。「捜査自体は数カ月前から始まっていたが、この時期に逮捕となったのは、安倍元首相銃撃事件で捜査当局への“重し”が取れたのだろう」
すでに永田町界隈では「電通出身の平井卓也・元デジタル担当大臣にまで捜査の手がおよぶのか」との情報が流れ、一大政界汚職に発展する可能性も取り沙汰されているのだ。
「平井元大臣は五輪担当大臣などの東京五輪関連の要職に就いていたわけではないが、自身の経歴を生かして自民党と電通のパイプ役的な存在となっていた。当然、電通が実質的に仕切った東京五輪においても電通の相談窓口のような役割を担っていた。捜査の手が平井氏までおよぶのではないかと囁かれているのです」(永田町ウォッチャー)。
2030年冬季五輪の最有力候補地とされる札幌招致に黄色信号が点灯することにもなった。逮捕当日に日本オリンピック委員会の山下泰裕会長が「影響ができるだけ出ないように、これまで以上に関係者で力を合わせて全力を尽くしていく」と語ると、翌18日には元五輪担当大臣の遠藤利明総務会長が「札幌五輪の招致活動にも水を差す懸念がある。捜査の行方をしっかり見守っていきたい」と議員グループの会合で述べた。ただでさえ札幌市の世論調査で、賛否が拮抗して招致が危ぶまれていたところに、今回の逮捕が追い打ちをかけ、「もはや絶望的」との声も出始めていた。札幌招致推進派が危機感を露わにしたのはこのためだ。
一方、反対派は勢いづいている。招致推進の秋元克広市長を来春の市長選で引きずり降ろそうと、7月15日に出馬表明したのが「市民政党 札幌冬季五輪に反対する会」代表の高野馨氏。札幌市OBであることから「自身を局長職に任じた“上司”に弓を引く」(2022年9月号の財界さっぽろ)と紹介されたが、逮捕当日に次のような発信をした。
「東京五輪のスポンサー契約に端を発した贈収賄疑惑で、ついに高橋元理事など関係者が逮捕されました。このような状況下で、2030札幌冬季五輪の招致を継続するのは、断じて許されることではありません。改めて、下記の招致反対キャンペーンへの賛同をお願いいたします。
https://www.change.org/Sapporo-gorin-hantai」ここで高野氏は6つの招致反対理由をあげたうえで、次のように締めくくっていた。
「とくに、札幌市が赤字財政を続けているなかで、冬季五輪を招致しようとしていることに強い義憤を感じております。札幌市は、この赤字地方債について、いずれは国が返済してくれると信じていますが、国の借金である国債残高が1,000兆円を超えた今、それはほぼ不可能です。
昨年の東京五輪のスポンサー契約をめぐり贈収賄の汚職が発覚し、今般、関係者が逮捕されるに至り、五輪に向けられる国民の視線はますます厳しくなってきております。
札幌市民の住民投票もないまま、札幌市がこのまま冬季五輪の招致活動を進めれば、市民自治や市民参加を自ら否定し、正に民主主義に反することにつながります。
冬季五輪の開催は、札幌市民の血税のみならず国民の税負担をもともなう一大興行なので、全国の皆さまにもぜひこの招致反対の趣旨に賛同していただければ幸いです。利権、金権にまみれ腐敗しきった五輪開催は、『NO MORE』です!」(招致反対キャンペーンのサイトより)。
札幌五輪をめぐる対立構造が浮き彫りになってくる。開催でおいしい思いをする政治家や電通関係者ら招致推進派と、税負担を押し付けられる納税者(反対派)が激突するというものだ。今回の逮捕を受けて、札幌招致への賛否がどう変化するのか。市民の反対が賛成を上回っても秋元市長は招致をゴリ押しするのか。そして来春の札幌市長選で市民はどんな判断を下すのか。
札幌五輪招致をめぐる動きから当分目が離せないようだ。
【ジャーナリスト/横田 一】
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