世界の民主主義の危機と多国間主義(4)
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Devnet International 創始者
ジャーナリスト ロベルト・サビオ 氏Net I・B-Newsでは、世界の有識者約14,000名に英語等10言語でニュースを配信する「OTHER NEWS」(本部:イタリア)に掲載されたDEVNET INTERNATIONALのニュースを紹介している。今回はDEVNETの創始者でガリ元国連事務総長の秘書室長を務めたロベルト・サビオ氏から寄稿していただいた記事を掲載する。
DEVNETはECOSOC(国連経済社会理事会)認証カテゴリー1に位置付けられている一般社団法人である。
1981年に反ダボスの集合空間として創設された世界社会フォーラムは、創設以来、その機能と規範のアップデートを一切行うことができず、縮小しつづけている。一方、女性の権利と可能性の平等を求めるMe Too、人種差別に反対するBlack Lives Matter、グレタ・トゥーンベリによって拍車がかかった気候変動反対運動など近年の大きな市民社会運動は、実際の組織として構築することができていない。開発援助はかつて非常に重要な優先事項であったばかりでなく、それに関連する機関や省庁も多くあったが、90年代には縮小する一方であり、今では難民や移民、ウクライナ侵攻の犠牲者など、グローバルサウスの問題とはまったく関係のない問題をも扱いはじめている。このような状況で、市民社会は深刻な危機に見舞われている。政治機関はますます自己中心的になり、関心と参加を促すような中長期的な展望をもったプログラムを提示することができなくなっているのである。そして、民主主義と人類の未来にとって重大な影響をおよぼす若者の不就労は拡大しつづけている。
前回のフランスの総選挙では、25歳以下の有権者の75%が投票に行かなかった。人口動態の変化により、豊かな国々では有権者の多くが55歳以上となり、若者とは異なる関心をもっている。(フランス革命以来、進歩と近代化のために不可欠であった)次世代の発言と提案が機能しなくなれば、社会はより保守的になり、分裂することになる。今の若者は、社会は役に立たないのでインターネットによって同じ志を持つ者とつながるだけで、社会から切り離されたバーチャルな世界に避難する傾向がある。ザッカーバーグが創始したメタ・バーチャル・ワードは、彼らの現実逃避を加速させ、社会の刷新を促すという本来の役割を否定してしまうのである。
国連を弱体化させる要因は国連内部にも見つかる。安全保障理事会(国連で唯一拘束力を持つ機関)の5つの常任理事国(P5)が、歴史的には理解できるもののうまく機能しない拒否権を発動させることによって、重要だが議論を呼ぶ問題についての決定を基本的に下すことができないのである。P5は自分たちが気に入らない議案については、これを個別に阻止することができ、世界的に影響を与える多くの議案を挫折させてきた。拒否権が撤廃されるか、何らかの民主的説明責任が課せられるようになるまでは、ウクライナ戦争のような劇的な出来事は安保理の外でしか解決策を見出すことはできまい。ブトロス・ブトロス・ガーリやコフィー・アナンのような無党派層の事務局長が、拒否権や無効化キャンペーン(いずれの場合も米国による)によって妨害されたことは歴史に示されている通りである。
こうしたことから、今こそ行動し、民主主義と多国間主義を救う時であることがわかる。 だが、これらの問題に関して何千人もの市民が大通りを行進することはないだろう。新自由主義的なグローバリゼーションの文化が与えたダメージは大きく、深い。また、消費主義に惑わされ、インターネットの商業的搾取に麻酔をかけられ、外国人憎悪、ポピュリズム、ナショナリズム、過激主義に操られ、基準となる価値と理想を奪われた社会では、民主主義と多国間主義の問題について意識と行動を起こす努力は非常に難しい。これには非常に強い国際・国内組織と、非常に大きな財政手段が必要になるであろう。
最近のピュー世論調査によると、14歳以下の若者の79%が貧困と戦争は自然現象であると信じているという。私たちは安定した多国間世界から、不安定で攻撃的かつ非民主的な多極化世界へと導かれているのである。その背後にあるのは競争原理であって、これを乗り越える平和・正義・連帯・発展といった価値を緊急に再確立しなくてはならない。
もちろん、多国間主義も非民主主義国の道具として使われることがあるが、気候変動抑制のための緊急行動の必要性が政治的対立のなかに埋没していくのを見れば、やはり必要なものである。中国政府はナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問に対する報復として、米国との協力関係を断つことを決定したが、いくつかの世論調査によると、中国国民は環境問題に大きな関心をもっているようであり、誰もが知っているように、地球規模の問題には国家的な解決策ではなく、地球規模の解決策が必要なのである。
中国がこの分野でさまざまな取り組みを行っても、近隣の国々が同じことをしなければ、中国の問題は解決しない。しかし、それでも人々は街頭に立とうとはしない。とはいえ、これらの問題を解決するための議論に参加することに興味をもつアクティブな市民が何十万、何百万といることも事実で、それを認識する必要がある。今ここに、比較的簡単で、費用もあまりかからない、世界規模の参加型の民主的な協議を世界中で同時的に行ったその過程において生まれた、革新的な計画を紹介することにする。
私たちはこの計画を「民主主義とマルティラテラリズムに関する省察の日々」と呼んでいる。その序文は、この討論と考察のプロセスを開始するための文書としての役割をはたすものである。このプロセスは活気に満ちた力強い宣言を生み出し、世界の市民社会、国際機関、学界の巨大なネットワークがこれを利用し共有すれば、重要な目覚めの基礎となり得るものである。
(つづく)
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