2024年07月16日( 火 )

本気度問われる政府の米国国債売却

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、政府の円安対策への本気度に疑問を呈した9月23日付の記事を紹介する。

9月22日、日本政府がドル売り・円買い介入を実施した。
岸田首相は「過度な変動に対しては断固として必要な対応を取りたい」と述べた。
「断固として必要な対応」
と威勢は良いが介入効果は限定的。

1ドル145円台にまで進行したドル円レートは介入実施後に一時1ドル140円台にまで円高に振れたが、その後はドルが値を戻し、現在は1ドル142円台で推移している。

円安が加速した背景は内外金利差および内外金融政策スタンスの相違。
米国をはじめとして主要国が金融引締め政策を推進するなかで日本銀行は金融緩和政策に固執している。

9月21日、米国FRBはFFレートを0.75%ポイント引き上げる措置を決定した。
直近3回の政策決定会合(=FOMC)で0.75%幅の利上げを3回連続で決定した。
米国でインフレ率上昇が加速し、インフレ抑制の政策方針を明示している。
欧州でもECB(欧州中央銀行)は9月8日の定例理事会で0.75%幅の利上げを決定した。

ウクライナ戦乱を背景に資源価格が急騰。
これらの事象を背景に世界的にインフレ圧力が高まっている。
これに対応して主要国が足並みをそろえて金融引締め政策を実行している。

これに背を向けているのが日本銀行。
日本銀行は9月22日の政策決定会合で大規模金融緩和政策の維持を決定した。
お金は金利の低いところから金利の高いところに向けて流れる。

海外金利が上昇し、国内金利が超低金利に据え置かれれば、お金は日本円からほか通貨へ向かって流れる。
このために円安=ドル高・他通貨高が生じる。

円安を止めるには日本の金融政策修正が必要不可欠。
9月22日の日銀金融政策決定会合で日銀が金融政策修正を発表し、併せてドル売り=円買い介入を実施したなら効果は絶大なものになった。
一気に円高に回帰したと考えられる。

しかし、日銀の決定は逆向きだった。
大規模金融緩和政策維持を決定し、同時に日本政府がドル売り=円買い介入を実施した。
暖房を全開にしながら冷気を注ぎ込んだようなもの。
冷気を注ぎ込んだ瞬間は一部の温度が低下するが、冷気の注入をやめれば部屋の温度はまた上がる。

意味不明・支離滅裂介入のそしりを免れない。
日銀は物価安定の責務を負っている。
物価安定とは言い方を変えれば「通貨価値の維持」。

いま日本円の通貨価値が著しく毀損している。
グローバルスタンダードで円の価値が暴落している。
かつて70円で1ドルを購入できた。
いまや140円出さなければ1ドルを購入できない。
日本円の価値が半分に暴落している。

日本円を保有する日本国民の財産価値は国際標準で半分に目減りしている。
円の通貨価値が半分に暴落しているということ。
日本国民は巨大な損失を蒙っている。

それだけではない。
日本でもインフレが確実に進行している。
9月20日に発表された8月全国消費者物価上昇率は前年同月比3.0%上昇を示した。
30年ぶりのインフレ率だ。
物価上昇の最大原因は円安。

※続きは9月23日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「本気度問われる政府の米国国債売却」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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