2024年09月04日( 水 )

利にさとい学者政商・竹中平蔵氏が「嫌われる」ワケ(中)

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 政商とは、政府や政治家と特殊な関係をもって、利権を得ている商人(「広辞苑」)。表向きは学者を装いながら、政府の諮問会議に入り込み、「利権漁り」を生業とする人物を学者政商という。学者政商として大活躍をしていた竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授)が、いよいよ黄昏を迎えた。学者政商・竹中氏の手口を振り返ってみよう。

日本経済の低迷をもたらした元凶と糾弾される理由

 「日本経済が長く低迷してきた最大の元凶は竹中平蔵氏だ」。ネットには竹中氏に対する非難が溢れている。

 小泉純一郎政権は非正規雇用の範囲を拡大し非正規雇用者を激増させた。その結果、先進国のなかで、日本だけが平均年収は20年以上にわたり減少が続いた。とうとう韓国にも抜かれた。賃金が上がらず、日本人が「出稼ぎ」する時代がやってきたと報じられた。
 この賃下げこそが、日本経済の活力を失わせ、国民生活を苦しくさせた最大の要因だ。

 小泉内閣で、小泉首相の委託を受けて経済政策を一手に引き受けてきたのが竹中氏だ。日本が先進国から中進国に転落した最大の元凶が竹中氏といわれる所以だ。

 政策立案者として権力の中枢にいた竹中氏は、日本経済の活力を失わせたという自覚はあるのだろうか。「担当大臣ではなかった」と見苦しい釈明を聞いていると、自己保身に汲々する姿は哀れというほかはない。

住民税を逃れる方法を披露

    竹中氏の「人品骨柄」を示す逸話がある。
 元日本経済新聞記者のジャーナリスト佐々木実氏は著書『竹中平蔵 市場と権力』(講談社刊)で、竹中氏の人柄や品性を疑わせる話を載せている。

 小泉内閣の閣僚になった竹中氏は、住民税不払いが脱税にあたるのではないかと国会で追及された。というのは、90年代前半、米国と日本を股かけて生活していた4年間、住民税の支払いを合法的に逃れていたと臆面もなく披露していたからだ。

 節税の秘策を『週刊朝日』(2000年5月26日号)の対談で、作家の林真理子さんに堂々と勧めている。そのくだりを、孫引きする。

 竹中 私は、作家の方こそ、海外で過ごすべきだと思いますよ。税金が減りますよ。

 林  どうしてですか?

 竹中 地方税を支払わなくていいんです。地方税は台帳課税主義で、一月一日時点で住民台帳に載っている人がそこの場所で払う。もちろん海外に生活の基盤があることが前提ですが、一月一月にどこの住民票台帳にも載っていなければ払う必要ありません。

 小泉政権の閣僚になった竹中氏が、住民税を回避するために住民登録の抹消と再登録を繰り返していたと公言していたから、国会で問題になったのは当然だ。

利益誘導の核心は「利権は細部に宿る」

 住民税不払い問題は竹中氏の「人品骨柄」を如実に示している。政策立案者として、脱税には手を染めないという矜持を持ち合わせていない。法の抜け道を見つけたことに無上の喜びを感じ、その眼力を自慢しているのである。

 「戦略は細部に宿る」。竹中氏がよく口にする、最も得意とする作戦である。

 通常政治家は基本的な方針を定めたら、法案や具体的な施策は官僚に任せる。そこに官僚が「骨抜き」をするチャンスが生まれる。竹中氏は法案や具体的な施策づくりを官僚任せにせず、自分とそのブレーンでやる。
 官僚の常套手段の「骨抜き」作戦を逆手にとり、妥協したふりをして答申案や法案にこっそりと重要に条項を盛り込む。「骨抜き」ならぬ「骨入り」である。

 「戦略」を「利権」に置き換えると、竹中式利益誘導の核心になる。「利権は細部に宿る」だ。

(つづく)

【森村 和男】

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(後)

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