中国大陸と台湾間がビザ免除へ、両国の思惑は?
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中国共産党のナンバー4の兪正声・全国政治協商会議主席は、今月上旬の「海峡フォーラム」で、台湾から中国大陸を旅行する人に必要なビザ(査証)手続きを免除する方針を明らかにした。中国側は「同胞の交流拡大のため、さらに良い条件をつくる」としており、今後は「台湾同胞証」を発行し、関連手続きを免除するという。
免除の方針に関し、台湾マスコミ関係者は「ビザ免除は明らかに中国側の台湾への『こび売り』。来年の総統選挙で野党『民進党』の政権奪取が確実視されるため、中国側としては、国民党が与党内に歩み寄りを印象づけ、政権交代後も距離感を保つための策略だろう」と見ている。
実際、ここ数年、台湾と中国の交流は増している。台湾と大陸を結ぶ直行便の便数も増え、利便性も高まった。「『中華』の古い歴史を知りたい」と台湾から大陸の名所旧跡を見に行く観光客も増えている。「中華人民共和国は嫌いだが、ルーツは同じだ」と、寛容になった台湾人も増えている。経済交流や民間交流が、台湾と中国の「障壁」を取り除いてきた面もある。かつては李登輝氏ら台湾指導者が大陸側を非難してきたが、ここ数年、野党・民進党側にも激しい口調は見られない。「中国を刺激しないようにしつつ、それでも、台湾は『独立した国家だ』と自身の主張は述べる」といった空気感だ。昨年、九州国立博物館で開催された「台北博物院展」でも、中国を刺激しなかったことが、成功の一因とも言える。
台湾与党の国民党は現時点で、来年の総統選候補者を明確に押し出せていない状況だ。民進党の蔡英文氏が現状の勢いに乗り、総統に就任する可能性が高まっている。その中で、台湾が中国を刺激しないのと同様に、中国側も台湾の顔色をうかがっているようだ。とはいえ、ある台湾人は「行政レベルでも交流が促進するのは悪いことではないが、大陸側の政治家が、台湾人を『同胞』と呼ぶのは解せない」と話している。
【杉本 尚丈】
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