2024年11月21日( 木 )

【福岡IR特別連載112】長崎IR、中国を念頭に日米安保に日豪安保新宣言

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 22日、岸田首相とアルバニージー豪首相は、中国習近平政権による台湾を含むインド太平洋島嶼国への強引な海洋進出とその有事を想定し、これを念頭にして新たに構築した「日豪戦略的パートナーシップ」を今後10年間の「日豪安全保障」新宣言として署名した。

 当然、この中身は、台湾有事を懸念、想定しての中国習近平政権に対する「米英豪日の軍事同盟」であると断言して良い。米国との3カ国間安全保障協力の深化は、その戦略上の経済安全保障や政策調整、情報共有などが、この宣言に盛り込まれている。

 それゆえ、我が国防衛上の「台湾有事に関するインド洋、東シナ海など」への地勢学的位置としての「西の護りの要」、すなわち長崎IR「ハウステンボスパッケージプロジェクト」当該地の佐世保にある米国海軍基地、海上・陸上の自衛隊基地がますます重要になっている。

 筆者は、これら日米安全保障に関する問題を重ねて解説しているが、本件誘致開発事業の管轄行政である長崎県と議会に県知事、当該地である佐世保市行政と議会に市長、ならびにこれを協力・推進している九州IR推進協議会(九州経済連合会)の会長などの関係者は、この現状をまったく理解していない、とこれまでの連載で酷評してきた。

長崎IRは観光施設であり「複合統合型施設」だ

長崎県庁 イメージ    すでに本連載で解説している、長崎県の大石知事による「中国PAG社にはIRにぜひ協力してほしい…」、佐世保市の朝長市長による「中国PAG社のハウステンボス買収は本件IR事業に一切影響しない…」、佐世保市行政担当者による「ハウステンボスは観光施設だから法の適用外である…」。さらにこれらを追認した九州IR推進協議会の倉富会長による、「九州経済再生には長崎IRは重要なプロジェクト…」などの発言は、連日、中国習近平政権に関連する我が国の安全保障問題が報道されている状況下において「とんでもなくお粗末で愚か」な発言としか言いようがない。

 重ねて解説しているように、米国『NewsWeek』をはじめとした著名な報道機関が、「今回のハウステンボス買収問題における中国企業は日米安全保障上の強い懸念」と表現している。さらに、その中国企業「PAG」は「中国習近平政権に強いつながりを持つ経営者」の企業であり、彼ら中国共産党幹部たちの資金洗浄(マネーロンダリング)の役目を担うという噂のある国際不動産ファンド企業であると具体的かつ詳細に説明している。

 ファーウェイやアリババと同様に、中国国内に中国共産党政権に抗える民間企業など一切ない。

 長崎IR各組織の関係者たちは、本件に関して、一般的な知識しかない「素人」であってはならないはずだ。完全に本件を担う能力に欠けている。彼らは本件IR事業(統合型リゾート施設)の肝心な部分などをまったく理解していない。それ故、愚かにも、中国企業PAGへの懸念と日米安全保障問題とが「ハウステンボスパッケージの長崎IR」へとつながっているとは考えていないのである。

 本件IRは、カジノ施設だけが常に注目を集めて話題となり、批判されるが、本件統合型リゾート(Intergreated Resort)開発事業における「IR」は、「MICE」という言葉で代表されるカジノ施設(全体の施設面積の3%以下)とホテルや国際会議場、コンベンション施設、多種多様な商業施設などの統合複合型施設の総称である。

 「MICE」の‟M”は、Meetingの意味であり、世界的民間企業、政府機関などを問わない国際会議など、‟I”はIncentiveで国際研究機関、学会、団体などの報奨旅行など、“C”はConventionで、国際見本市や展示会、イベントなどを指し、‟E ” はExhibitionで、ほぼ同じ意味となり、これら各施設が併設統合された施設を、それぞれの頭文字をとって「MICE」と表している。

 要は、これらすべてが、西側諸国の最先端技術や科学・化学(軍事も含めた)などの、ハード・ソフトを問わないイノベーションが集積する国際交流の場であり、その誘致開発施設なのである。我が国および各国のVIPを含む来場関係者たちには、常に「守秘義務」が課されるような内容と情報を取り扱う施設であり、その場所を提供する場ということだ。

 それゆえ、中国習近平政権につながりの深い「PAG」に対し、「ぜひともIRに協力してほしい」などという発言をするのは、支離滅裂であり、理解しがたいものだ。長崎県・大石知事に佐世保市・朝長市長、さらに九州IR推進協議会・倉富会長などの関係者は、いまなおこの事業、環境、意味を理解せず、誠に愚かな発言ばかりしているのである。このことは政府機関および本件のプロの眼にどのように映っているのだろうか。

 長崎IRの基本的計画も非常に杜撰で、あり得ないものだが、これら「日米安全保障」に「日米経済安全保障」さらに「日豪安全保障宣言」問題は、当初からの彼らの予定とはまったく別の話(中国企業のハウステンボス買収が起因)で、その各関係者にとって予想外の出来事で、彼らの能力がいまだ追いついていない。完全に本件を管轄する行政の責任だ。

 彼らは、無知で平和ボケで国際感覚がなく、本件責任者としては、誠に能力不足であり、情けないと筆者は酷評しているのだ。もし彼らが本当にこれらを理解するのなら、国からの本件誘致申請(区域認定承認申請)の可否を待たず、否決される前に、自ら、長崎IRの中断を決断すべきだと解説しているのである。国への責任転嫁などを考えているのなら、言語道断だ。

 各関係者にとって、中止を決断することが政治生命や組織責任者としての立場を全うすることとなる。そして、それは結果的に自らを助けることとなるだろう。

【青木 義彦】

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