2024年12月22日( 日 )

アビスパ、残留へ大きく前進 福岡2-1柏

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 サッカーJ1リーグアビスパ福岡は29日、ホームのベスト電器スタジアムに柏レイソルを迎え、第33節の試合を行った。この試合が、今シーズンのホーム最終戦だ。

 試合前の段階で、アビスパは15位、レイソルは7位。この試合でアビスパが勝利すれば、他会場の結果次第でJ1残留が確定する。対する柏レイソルは残留争いからは距離があるものの、優勝戦線やアジアチャンピオンズリーグ圏内(3位以上)からは遠く、8月6日の京都サンガ戦以来勝ちに見放された状態だ。

 試合を決めたのは、両チームがこの試合に臨むモチベーションの違いだった。

 アビスパ、柏ともに堅守速攻が持ち味だが、まず速攻の切れ味を見せつけたのはアビスパ。4分、中央でボールを受けたFWフアンマ・デルガドが左サイドのスペースに長いパスを送る。そこに走りこんだDF志知孝明が一気に持ち上がり、左足でクロスを供給。MF中村駿、DF湯澤聖人が走りこむが、ハーフバウンドしたボールにダイレクトで合わせたのはFW山岸祐也だった。叩きつけたシュートがネットを揺らすのを、柏GK佐々木雅士はただ見送るだけ。山岸はこれで今季10ゴール目となり、アビスパ歴代最多タイ(1996年のFWトログリオ)、アビスパ所属の日本人選手としては初めてJ1で二けたゴールを挙げた。また1つ、アビスパの歴史に新しいページが加わった。

 そして前半終了間際の43分。右サイドで得たスローインからDF湯澤聖人がクロスを上げると、巧みな動きで柏DFのマークを外したFWフアンマ・デルガドがフリーでヘディングシュートを決めた。アビスパは2点リードで試合を折り返す。

決勝ゴールを決め、吼えるFWフアンマ
決勝ゴールを決め、吼えるFWフアンマ

 試合は、このままアビスパペースで進むかと思われたが、柏の知将・ネルシーニョ監督が大胆な手を打つ。後半に一気に3人の選手交代を行い、システムを変更。46分、交代で入ったFW小屋松知哉からのパスをMFマテウス・サヴィオが後ろへはたくと、これも交代出場のMF戸嶋祥郎がペナルティエリア外から強烈なミドルシュートを放ち、これがゴールネットを揺らした。FW小屋松はこの後も的確な動きで柏の攻撃をリードする。対するアビスパは、長谷部監督が試合後の会見で「相手のシステム変更に少しあわててしまった」と語ったようにやや後手に回ったものの、選手たちが自らの判断で守備を修正。鋭い出足でピンチの芽を摘んでいく。

 GK村上昌謙を中心とした粘り強い守備で柏の攻撃をしのぎ、試合は2-1でアビスパの勝利。他会場でガンバ大阪が勝利したため、今節でのアビスパの残留確定はお預け。だが、自動降格となる17位以下に落ちる可能性はなくなり、J2とのプレーオフに臨む16位の可能性を残している。アビスパ福岡は最終戦の浦和レッズ戦に勝てば残留確定、引き分け以下でも他会場の結果次第で残留となる。なおこの日敗れたジュビロ磐田は最下位(18位)が確定し、1年でのJ2降格となった。

セレモニーであいさつする前寛之選手、長谷部監督(左)、川森社長(右)
セレモニーであいさつする前寛之選手、長谷部監督(左)、川森社長(右)

 試合後、ホーム最終戦セレモニーが行われた。福岡市・高島宗一郎市長、アビスパ福岡・川森敬史社長、長谷部茂利監督、キャプテン前寛之選手があいさつに立った。

 川森社長は「夏場、ベンチ入りする人数がギリギリの試合もあった。また、心ない言葉や投稿で傷ついた心を奮い立たせながら、ホーム最終戦まで戦い抜くことができた」と今シーズンを振り返った。川森社長が長いシーズンを戦い抜いた選手、スタッフ、そしてアビスパの未来を担うアビスパアカデミーの選手たちとコーチ陣に拍手を求めると、ベスト電器スタジアム全体から暖かいエールが降り注いだ。

 長谷部監督は「今シーズンは皆さんにハラハラドキドキさせてばかりですが、これが昇格2年目のJ1のリーグです。簡単には勝てません」と改めてJ1の厳しさを訴えた。「泥臭く戦って、自分たちができる範囲で可能性に賭けて飛躍していく。そんなチーム、そんなクラブです」と長谷部監督がいう通り、アビスパの今のポジションは「挑戦者」。最終戦を勝って、明るい来シーズンを迎えたい。

 「今年一年振り返ると、苦しいことが多かった」という言葉であいさつをスタートさせた前寛之選手。振り返ると、今シーズンは実にさまざまな困難に見舞われた。新型コロナの影響でメンバーが揃わない、試合が開催できない、プレー中に味方同士が激突して倒れる…。ピッチ外の不祥事でクラブを去った選手もいた。「今年一年があったから飛躍していくことができたんだといえるように、ラスト1試合頑張りたいと思います」というキャプテンの言葉には、大きな拍手が巻き起こった。

 セレモニー終了後には、ゴール裏のサポーターを前に今シーズンで引退を表明したGK杉山力裕の胴上げが行われた。2006年に川崎フロンターレでプロ生活をスタートさせた杉山は、2017年に当時J2のアビスパ福岡に加入。1年目はレギュラーとして30試合に出場。2年目以降は出場機会こそ少なかったが、ベテランの経験を生かした貴重なバックアップとしてチームを支えた。今年8月3日、新型コロナの影響でわずか4人のベンチメンバーで臨んだルヴァン杯神戸戦では、ベンチ入りした杉山もフィールドプレーヤー用のユニフォームを準備していたことも懐かしい。

引退するGK杉山力裕の目には涙が光っていた
引退するGK杉山力裕の目には涙が光っていた

 さて、いよいよ今シーズンのJ1リーグ戦もあと1試合。11月5日、アウェーでの浦和レッズ戦で有終の美を飾り、「J1定着」という目標をしっかりとつかみ取りたい。

【深水 央】

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