溶けて溶けてどこへ行くの? 我々には覚悟はあるか(4)~第四次産業革命とシェアリングエコノミーが不動産業界に大きな影響(前)
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(株)アパマンショップホールディングス 代表取締役社長 大村 浩次 氏
「賃斡旋店舗数」「賃貸斡旋件数」「取引オーナー数」「管理戸数」で日本最大級を誇るアパマンショップグループ。資産活用のコンサルティングとその関連事業を行う「R-Tech」(Real Estate Tech:不動産テック)および「IT」を武器に成長を続ける同グループにとって、2016年はどんな年だったのか。また17年の見通しについて、(株)アパマンショップホールディングス代表取締役社長の大村浩次氏に話を聞いた。
40兆円以上の市場にどう対応するか
――御社にとって2016年はどんな年だったでしょうか。
大村社長 「30年に一度のチャンスが訪れた年」と感じています。それは、政府が「日本再興戦略2016」で示した「第四次産業革命」と「シェアリングエコノミー」に起因しています。
まず第四次産業革命とは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ビッグデータ、人工知能(AI)を意味しています。当社は「R-Tech」として、モノとインターネットのつながりや、大量のデータベースを活用したAIなどに数年前から取り組んでおり、すでに多くの分野で実用化しています。
また昨年、当社の関連会社である(株)システムソフトが東証一部に上場したことで、グループとしてのIT対応力が高まったと考えております。IoTの取り組みの一例を紹介させていただきますと、当社はマーケティングやプロモーション企画として、大手広告会社などへクリエイティブを発注し、高額な費用を支払っていました。
それを現在では、日本中に発せられたソーシャル情報のなかから、当社が必要とする情報をクローラ(ウェブ上の文書や画像などを周期的に取得し、自動的にデータベース化するプログラム)で集約し、その情報から「顧客は当社にどのような印象を持っているのか」「改善すべき問題点はあるのか」「顧客のニーズはどうか」など、AIで分析することで、マーケティングやプロモーションの方向を割り出しています。
AIで世のなかにある顧客の声をピックアップすることで、問題点だけでなく、それを解決する方法まで導き出せるのが特長です。かつては大手広告代理店に依頼すると数千万円のコストが発生していましたが、今は数十秒で結果を出すことができます。次に、政府は「シェアリングエコノミー検討会議」をつくっています。シェアリングとは、空いたものを使う、交換する、代用するといった概念です。つまり、日本中のスペース、モノ、人手、能力、お金などをビジネス化して有効に活用し、潜在需要を掘り起こすのがシェアリングエコノミーです。スマートフォンなどデバイスの普及とITの活用によって、世界中で普及が加速しています。
たとえば、世界では多くの人が車を保有していますが、その利用率は極めて低い。そこで「Uber」のようなプラットフォームを使い、利用客と空車をつないでシェアをする。また「Airbnb」は、空き部屋を貸したい人と借りたい人の間でシェアされていく。このようなシェアリングエコノミー市場は、25年までに約41兆円まで拡大するとされており、今後も大きなビジネスチャンスが見込めます。
第四次産業革命とシェアリングエコノミーの2つが、不動産業界に大きな影響を与え始めた元年が16年といえるでしょう。17年以降も同じ傾向が続くことは間違いありません。
通信環境不要のスマートロック
――第四次産業革命とシェアリングエコノミーは、実際に御社のビジネスでどのように活かされているのでしょうか。
大村社長 一例を紹介しますと、システムソフトが、さくらインターネット(株)(本社:大阪市中央区、田中邦裕代表)および(株)tsumug(本社:東京都千代田区、牧田恵里代表)と提携して、世界初の「3G/LTE搭載カギデバイス」を使ったIoTシェアリングスマートロックを開発しています。
この鍵は、「遠隔地からの開閉」「シリンダー交換不要」「不動産業者ごとの案内件数や成約率の確認」「防犯データの収集」などを実現しています。
既存のスマートロックは、Wi-Fiがなければ動かないなど、住宅に何らかの通信環境が必要でした。IoTシェアリングスマートロックは、住宅に通信環境がなくても、スマホで遠隔地からカギが開けられるようになったのです。
不動産業界は、今まで管理会社から鍵を借りて内覧(案内)していました。しかし、この商品であれば、内覧の時間だけドアを開閉できる番号を付与することができるなど、業務の生産性が飛躍的に向上します。カギとインターネットがつながるIoTを実現したことで、コンビニのPOSシステムのように防犯を含むさまざまな情報を、リアルタイムに取得分析することが可能となったのです。これを民泊に応用すれば、たとえば外国人の方が11時30分に現地に着いたとして、そこから11時33分まで番号を入力すると玄関を開けられるようにしておけば、誰がいつ入ったかデータですぐにわかりますので、利便性が向上します。この商品はトランクルームやオフィスのカギなどにも採用されるでしょう。
シェアリングエコノミーに関しては、上述の民泊をはじめ、トランクルームやカーシェアリングに取り組んでいます。日々の業務に勘案すると、もはやIT対応が50%以上を占めており、経営環境は猛スピードで変化しています。当社はこの変化を30年に1度のビジネスチャンスと捉え、さまざまな施策を実施しております。これら一連の経営環境の変化は、スマートフォンなどデバイスの普及があったからこそ実現したと感じています。
――かなり幅広い情報をお持ちの印象を受けますが、こうした情報はどういうかたちで集めているのでしょうか。
大村社長 アライアンスを希望する企業の情報は月間50件を超えます。国内に独自の情報ネットワークを保有・運営しなくてはなりません。海外にも目を向けて定期的に世界の主要国を訪問し、ビジネスの動向を肌で感じなくてはならないと思うのです。私は営業日に海外出張することが難しいため、月1回をメドに、休日を使って短時間の海外訪問を行っています。
自身の目で現場を見ること、ダイレクトにビジネスの動きを感じることは極めて重要であると思います。(つづく)
<COMPANY INFORMATION>
(株)アパマンショップホールディングス
代 表:大村 浩次
所在地:東京都中央区京橋1-1-5
設 立:1999年10月
資本金:76億1,309万8,168円
売上高:(16/9連結)373億8,300万円<プロフィール>
大村 浩次(おおむら・こうじ)
1965年生まれ、福岡県出身。99年10月、(株)アパマンショップネットワークを設立。2006年7月、(株)アパマンショップホールディングスに商号変更。法人名
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