新競技場は700億円以内で清楚に作れ
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政治経済学者の植草一秀氏が7月18日、新国立競技場の建設費が高騰したことで、白紙撤回された問題に触れ、「新競技場は700億円以内で清楚に作れ」と述べた。自身のブログとメールマガジンの記事で述べたもの。植草氏は同記事で、オリンピック利権に群がる関係者を厳しく糾弾している。NETIBでは、同記事の一部を抜粋して紹介する。
国立競技場の建設計画が白紙撤回された。無駄な競技場を作るために2,500億円を投入することは許されない。政府の迷走ぶりは目を覆うばかりである。いっそのこと、オリンピックを返上した方が良いと思われる。
建設費が膨張した理由は、このオリンピック利権に群がる関係者が私腹を肥やそうとしたためである。オリンピックというきれいな衣装で、人々の目をくらまし、私的な不労所得を得ようとした者が数多く存在したのである。
デザイン案の決定過程そのものが極めて不透明である。巨大な国費を投入するこうした事業では、この種の利権漁りの行動が絶えない。政治を私物化する行為である。政府債務が膨らみ、財政が破たんの危機に直面していると喧伝され、庶民には巨大消費税の重圧がかけられている。所得がない国民にまで富裕者と同じ税率が適用され、年間17兆円もの重課税が強制されている。その一方で、利権官僚と利権政治屋、そして利権事業者の私腹を肥やす政府支出は膨張の一途を辿っている。
このような悲惨な国の民はあまりにも不幸である。不幸の原因は政治の堕落、政治の貧困にあるが、その政治を生み出しているのが国民自身であることを忘れてはならない。どのような政治を実現するのかという視点に立つと、何よりも重要なことは選挙である。選挙の際に、誰を選び、どのような政権を樹立させるかの、決定権を持つのは国民である。選挙の際に、十分な戦略と戦術を持って対応しないと、望ましくない政権が樹立され、望ましくない政治が出現してしまう。選挙の重要性を再認識しなければならない。
オリンピックのメインスタジアムの問題に戻るが、これまでのオリンピックにおけるメインスタジアム整備費用は以下の通りである。
1996年 アトランタ 254億円
2000年 シドニー 660億円
2004年 アテネ 355億円(改修)
2008年 北京 513億円
2012年 ロンドン 600億円
2016年 リオデジャネイロ 550億円(改修)整備費用は200億円から700億円となっている。アテネやリオデジャネイロでは、既存の施設の改修によってスタジアムが整備された。「都市の中心で開催するコンパクトな大会」を掲げて招致した東京オリンピックのメインスタジアムの整備費用が2500億円に膨れ上がること自体が言語道断なのである。
ここまで費用が膨張したのは安倍政権の下においてである。安倍政権の金権体質を象徴する事象である。諸外国のオリンピック・メインスタジアム整備費用を念頭に入れれば、スタジアムを新設するとしても、700億円程度を上限として整備計画を策定するべきである。
本来は、旧国立競技場を改修して利用すべきであった。それが、財政事情逼迫で国民に消費税大増税を求めている国の、当然の選択であった。オリンピック後に事業収入を得るために、コンサート会場として利用できるように屋根を付ける必要があるとの主張があるが、本末転倒のおバカさんの主張である。屋根を付けるための膨大な費用が掛かり、コンサートの事業収入など、焼け石に水にしかならないのだ。簡素でシンプルなスタジアムを造り、そのスタジアムをオリンピック後に有効活用すればよいだけのことだ。
費用をかけずに、シンプルで洗練したデザインを構築し、今後のオリンピックのあり方の範を示すべきである。神宮の森に建設するのであるから、巨大な人造物の建造物ではなく、自然と調和した簡素な造りを実現するべきである。簡素な造りにすれば、工期も費用も大幅に削減できる。
これからコンペを実施して建設工事に入れば、2020年のオリンピックに間に合わせることは十分に可能である。新しい設計については、主権者が目を光らせて、決定過程を監視しなければならない。建設費用の上限を700億円程度に抑制することを、まずは決定事項として確定し、そのうえで次のプロセスに移行するべきである。
どのような政治を実現するのかという点で、何よりも重要なことは、選挙であると述べた。
私は、現在のような状況を想定して、2013年7月の参院選で警告を発した。※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1195号「原発・憲法・TPPオールジャパン25%運動」で。
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