2024年11月24日( 日 )

【BIS論壇No.400】2023年の世界情勢について

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は1月1日の記事を紹介する。

  ロシア、ウクライナ戦争は新年に入っても終結の目途がたたず、長期化を予想する見方が濃厚である。バチカン、国連、それにNATO、とくに米国の介入が期待されるが、積極的な介入は現状では望めないようである。この戦争で、米国の武器産業、防衛産業が大きな利益を挙げているとの声もある。この戦争の影響で、とくに、エネルギー、食料、肥料などの価格が世界的に高騰しており、庶民の生活を直撃しつつある。

 トルコのエルドアン大統領などが和平仲介に努力しており、またインドのモディ首相が介入することへの期待もあるが、それほど目立った動きは見られない。

 日本のメディアは連日、とくにウクライナ側から見た戦況を毎回同じ顔触れで報道しているが、積極的な解決策の提示はない。平和憲法を標ぼうしている日本が積極的にロシア~ウクライナの間で停戦交渉に動くべきとの意見もある。だが、岸田政権は逆にロシア~ウクライナ戦争を奇貨として、日本の防衛費の2倍増額、GDP比2%への増額を画策しており、和平への仲介には及び腰だ。日本が防衛費をGDP比2%に増額すると、日本の防衛費は米国、中国に次いで世界で3番目に大きな防衛費になると試算されている。これまでの防衛費をGDP比1%以内にとどめるとの政府方針は反故にされ、岸田政権は国民の意向を考慮することなく、また国会での審議も十分に経ないまま閣議決定で防衛費増額を決めようとしていることに批判が高まっている。岸田政権は防衛費増額に加えて、原発の再稼働、新設、運転期間の延長についても十分に民意を聞かず、独走している状態であり、1月の訪米でバイデン大統領にお土産をもって行こうと躍起になっているように見える。

 長引くコロナ下でとくに飲食業、中小企業は経営に苦しんでいるところが多い。一方、人手不足の企業もあり、2023年の日本経済は政府の予想よりも低迷し、実質GDP成長率は1%内外にとどまるのではないかとみられる。世界経済をけん引している中国もゼロコロナ政策を転換し始めた。中国の本年の実質GDP成長率は3~4%内外とみられ、かわりに6~7%の経済成長が予想されるインドや、経済好調のベトナムが23年のアジア経済をけん引するとみられる。

 なかでもインドは特に経済が好調で、23年に人口で中国を抜き、世界最大の14億の人口国になるとみられている。一方、GDPでも購買力平価で数年以内に日本を抜くと予測されている。

 この観点から、BISとしては中国に加え、インドの研究を23年の課題にしたいと思う。

インド商材 アーユルヴェーダ イメージ BIS国際理事のインド代表 Anil Basotra氏は、2月16日のBIS32周年記念第180回情報研究会にニューデリーから参加予定である。同氏はこの機会に日本に2週間滞在し、ビジネス情報の交換のみならずインド紅茶、インド繊維品、インドファッションなど日印ビジネス開拓にも注力したいとのことである。インドビジネスに興味あるBIS会員の参加を期待したい。さらに23年春にはBIS創設32周年記念としてインド訪問団を派遣し、アーユルヴェーダをはじめとするインドビジネス開拓に努力していく所存である。BIS会員の参加を歓迎する。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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