2024年12月23日( 月 )

「良い水創り」で社会に貢献し、協働の輪を広げて未来を創る(後)

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ゼオライト(株)
代表取締役社長 嶋村 謙志 氏

 1970年の創業以来、一貫して井水浄化システムの開発・提供に取り組んできたゼオライト(株)。地下水を逆浸透膜や限外ろ過膜を用いて浄化し、質の高い水を安定供給するこのシステムは、工場やホテル、病院といった、清潔で安全な水を大量に必要とする施設でとりわけ力を発揮。着実に信頼を勝ち得て業績を拡大し、いまや九州トップの規模に成長している。

 時代の波にも翻弄されず、堅実に事業を発展させていくそのパワーの源泉とは。創業者である河村恭輔氏(2020年11月逝去)の志を継ぎ、力強く会社を率いている若きリーダー・嶋村謙志氏に聞く!

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

ノートに託された創業者の想い

 ──新型コロナ・パンデミックが始まって丸3年が経過しようとしています。これに加えて2022年は、ロシアのウクライナ侵攻にともなうエネルギー危機、欧米の金利上昇と円下落、物価高等々、企業活動にさらなる試練が課された年になりました。

 嶋村 私どもにとっても、それはもう大変な1年でした。コロナの影響については初年度の衝撃からほぼ回復している状況ですが、燃料コストの高騰で仕入原価が跳ね上がりましたから。それだけでなく、部品などのモノもなかなか入ってこなくて…。そんななかでも、従業員がみな責任感をもって各々の仕事に従事してくれたおかげで、すべての納品を完了していくことができました。

 そして、社員が一丸となれたのも、恭輔会長の思いがあったおかげです。技術者として、そして経営者としてずっと頼り切っていた我々のトップリーダーはもういない。これからはどんな難局も自分たちで切り抜けていかなければならない。そんな自覚が、各人に芽生えたのだと思います。

 ──「もういない」とおっしゃいますが、むしろスタッフの方々の心のなかで、それも、いっそうの精彩を放って生き続けておられるように思えます。

 嶋村 そうかもしれません。恭輔会長は常に新しい構想を考えている方でしたが、日々思い浮かぶいろいろなアイデアや気になる点を、それこそ亡くなる直前まで、ノートに詳細に書き記していたんですね。まだご健在のころ、あれに挑戦してみたい、これもやってみたいといわれるたびに、「この忙しいときに……勘弁してほしいなあ」なんて思うことも正直ありましたけれど、恭輔会長のノートはいまや私どものバイブルです。

河村恭輔会長が社員に遺したノート
(画像は最終巻・最終ページ)。
日々のアイデアや構想が美しい筆跡で
整然とつづられている

    最近新しい商品が完成したんですが、これも恭輔会長が10年以上も前から構想していたものなんですね。機器から生じる排水の8割を浄化し再利用できるというシステムで、今後はクリーニング工場のような、水を大量に使いかつ排水量も多い業種の事業者さまに重宝していただけそうだと、たしかな手応えを感じています。

 一義的には下水経費の大幅削減というメリットを提供するシステムですが、SDGsがうたわれる最近の世相をみるにつけ、恭輔会長の慧眼には改めて舌を巻いています。これも、ものを大事にするという精神がベースにあってこそのアイデアだったのだと、しみじみ思います。

「変えてはならないもの」の継承

 ──嶋村社長はいま、こうして創業者の志を受け継ぎつつ、力強く会社を率いておられます。6年前に社長に抜擢されたときは、相当の覚悟を以て引き受けられたのではないでしょうか。

 嶋村 自分の判断と責任において会社の舵取りにあたる、その覚悟が最初からあったかといえば、できていなかったというのが本当のところです。私も幹部たちも、創業者ご夫妻にサポートされながら、会社のいろいろなことを始めてちゃんと理解していったという感じですね。そうやって長い時間をかけて、勝美会長からもいまやっと、会社を任せてもらえるようになってきたというところです。会長にしてみれば、これもまだ教育の一環なのかもしれませんが(笑)。

河村勝美・代表取締役会長(左)と嶋村謙志・代表取締役社長(右)。 ​​​​​​​創業者・河村恭輔名誉会長の遺影とともに
河村勝美・代表取締役会長(左)と
嶋村謙志・代表取締役社長(右)。
創業者・河村恭輔名誉会長の遺影とともに

 ──そしていま、どんな新たなステージへ会社を導いていこうとお考えですか。

 嶋村 新たな方針を打ち出すというよりは、やはりここまでの歴史をつくってきた「良い水創り、人財(ひと)創り」の企業理念を「継続」することが、私の責務と思っています。

 もちろん、お客様へのサービスに関しては、時代の変化に応じてどんどん刷新していかなければなりません。目下、お客様へ提出する点検報告書をIT化し、各々のお客様専用のボックスを設けてそこで全部やりとりできるよう、また、過去の履歴や水質情報等のさまざまな情報をアップしていつでもお客様にご覧いただけるよう、整備を進めています。

 こんなふうに、新しいサービスの提供には積極的に取り組んでいくつもりですが、その過程で決して変えてはならないものがあります。人々の健康とくらしを支える水に関わる事業であるということを胸に刻み、「良い水創り、人財創り」の理念をモットーに、私どもの技術がお役に立つところはどんどん取り組ませていただきます。

 創業者ご夫妻が整えてくれた道の上を歩んでいるという点では、私は楽をさせてもらっているのかもしれませんが、やがては創業者を直接知らない世代に事業をバトンタッチする時が来ます。彼らが創業者の志を自ずから受け継ぐような会社にしていきたいと思います。

(了)

【文・構成:黒川 晶】


<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長:河村 勝美
代表取締役社長:嶋村 謙志
所在地:福岡市博多区那珂5-1-11
設 立:1970年8月
資本金:9,000万円
売上高:(22/7)35億1,696万円
TEL:092-441-0793
URL:https://www.zeolite.co.jp


<プロフィール>
嶋村 謙志
(しまむら・けんし)
嶋村 謙志 代表取締役社長1974年1月生まれ。福岡県宗像市出身。西日本工業大学工学部機械工学科卒業後、96年4月にゼオライト(株)入社、メンテナンス部に配属される。取締役部長、取締役常務、専務取締役を経て、2014年に取締役副社長に就任。16年に代表取締役社長となり、現在に至る。

(前)

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