消費期限に応じた食品の自動値下げ実験 フードロス削減と現場効率化なるか
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国内で年間522万トン(令和2年度)の食品が廃棄されている。そのうち、企業等による事業系排出量は約半分の275万トンに上る。
この廃棄(フードロス)削減に向けた実証実験が、佐賀県唐津市にある「まいづる百貨店 キャロット浜玉店」で2月末まで行われている。
実験では従来のバーコードよりもデータ量が大きい、国際標準2次元コードのGS1データマトリックスで商品を管理する。コードのなかには消費期限の情報も含まれており、店頭在庫の消費期限管理の自動化につなげる。また、店頭での値段表示には電子棚札を設置し、消費期限ごとに異なる値引きを自動表示することによって、消費者に消費期限切れ間近の商品の購入を促し、フードロスの削減につなげるのが狙いだ。
同店で今回実験の対象となっているのは、パンコーナーの一角に設けられたリョーユーパン(福岡県大野城市)の25品目(画像1)。
たとえば、画像の例であれば、商品には消費期限の違いに従ってD~Gのシールが貼られている。
値札にはD~Fと「その他」として4つの価格が設定されている。画像は2月4日午後4時過ぎの価格だ(画像3)。Dは消費期限が当日(2月4日)で半額。EとFは1日ずつ消費期限が伸びるが、それも少しずつ値引されている。Gは値札に表示されないが、「その他」に該当する。「その他」に表示されているのが値引なしの標準価格に該当する。
電子棚札は1日に複数回、値段が更新される。消費期限が迫った商品(画像例ではDとF)の価格が、朝から夕方へ時間に経るに従って徐々に値下がりする。日付が変わると、消費期限切れとなったDは値札から消え、E、F、G、「その他」が表示される。2月5日午後4時過ぎには、E(64円)、F(90円)、G(116円)となる。
今回の実証実験の目的は、フードロスの削減ばかりではない。小売現場の作業効率化と、食品の過剰製造の抑制につなげることも目的の1つだ。
従来のバーコードは一般的に商品識別コードでしかなく、消費期限は製造時に別途印字されている。よって多くの小売店では、それらの消費期限をスタッフが目視確認して、消費期限が近付いた商品に対して値引きシールを貼り、期限が過ぎた商品は店頭から撤去していた。
しかし、2次元コードのなかに消費期限まで盛り込めば、レジ通過時に消費期限別の販売数を把握して、在庫状況を可視化して管理することができる。また、商品の売れ行き状況を食品メーカーと共有することで、適正な見込製造量の予測につなげ、過剰な製造を押さえる効果も期待される。
この実証実験は、経済産業省が日本総合研究所に委託した「令和4年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化および食品ロス削減の事例創出)」によるもの。
実施主体企業と役割分担は次の通り。
■(株)まいづる百貨店(佐賀県唐津市)
本実証実験の実施場所提供と運用
■日本総研(東京都品川区)
本実証実験の全体設計・推進・効果検証
■今村商事(株)(東京都品川区)
本実証実験のシステム設計支援と運用設計支援
■(株)サトー(東京都港区)
ダイナミックプライシングシステムの提供、電子棚札の提供、本実証実験の運用
■西日本イシダ(株)(福岡市博多区)
POSシステムの改修また、協力企業として、(株)リョーユーパン(福岡県大野城市)が、対象商品供給と本実証実験の運用にも参加している。
【寺村朋輝】
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