トヨタ自動車のEV敗退「トヨタ崩壊の足音」(前)
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トヨタ自動車は1月26日、豊田章男社長(66)が4月1日付で会長に就き、佐藤恒治執行役員(53)を社長に昇格させる人事を発表した。トヨタの社長交代は約14年ぶり。急速に進む電動化の流れのなかで、佐藤氏は遅れが指摘される電気自動車(EV)戦略の立て直しなど、山積する課題に向き合うことになる。
崩壊を予言、トヨタ自動車をモデルにした小説
自動車産業は「100年に1度」ともいわれる大変革期にあり、世界は「EV」シフトを強める。EVの世界販売シェアでは、米テスラを始め米中欧のメーカーが上位を独占。トヨタは上位10社に入っていない。
早くからEVを市場に投入してきた日産自動車を除いて、日本の自動車メーカーは大きく後れを取っている。周回遅れのランナーみたいなものだ。
そうこうしているうちに、中国から「黒船」がやってきた。EVで世界2位の中国BYDは1月31日、中型SUV(スポーツ用多目的車)「ATTO3」を発売し、日本の乗用車市場に参入した。
「テスラを超えて、いま世界一勢いがある電気自動車会社」、BYDをそう評する業界関係者は多い。新興中国企業「BYD」が勢いにのるなか、日本だけが取り残されている。日本を代表する自動車メーカー、トヨタはなぜ、EVに出遅れたのか。
トヨタの崩壊を予言したとして評判の近未来小説を基にたどってみよう。
覆面作家・梶山三郎氏は『トヨトミの野望 小説・巨大自動車産業』(講談社、2016年10月刊)と『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車産業』(小学館、2019年11月刊)の2冊を著した。
トヨタ自動車をモデルにした小説で、その衝撃的な内容で大きな話題になった。著者の梶山氏は覆面ライターで、元トヨタ担当の記者だとされる。
トヨタ最大のタブー・お家騒動に切り込む
(株)データ・マックスが発刊する「I・B」では「なぜ電気自動車に出遅れたのか?小説が描く、豊田章男社長の決断の誤り」(2017年9月14日発刊)を掲載した。
主人公のトヨトミ自動車社長の武田剛平は、トヨタをグローバル企業に押し上げた奧田碩社長・会長がモデル。もう1人の主人公、豊臣統一は、現在の豊田章男社長がモデルだ。
小説は2つのテーマから成り立っている。1つは、奥田氏と豊田本家との抗争。もう1つは、豊田章男氏が社長を務める資質があるかを問う部分だ。トヨタのお家騒動は、トヨタにとって最大のタブーだ。日本の主要メディアは、トヨタから広告を減らされることを懸念して、内紛には一切触れなかった。外資系メディアの報道で、経営陣と豊田本家との抗争の実情を知ることができた。
それ(外資メディアの報道)によると、奧田氏は章男氏を買っていなかった。「章男級の人材はトヨタにはゴロゴロいる」と口にしている。しかし、豊田家を無下に扱えない。
そのため、奧田氏はトヨタの持株会社化を思い描いた。トヨタを自工(製造会社)と自販(販売会社)に再分割して、自工と自販を統括する持株会社をつくり、持株会社の会長に章男氏を「祀り」上げ、現場には口を出させないようにするというアイデアだ。
奧田氏は「豊田家はグループの旗」と公言していた。これは、豊田家は会社の神社に祀られ、年に一度、グループの役員がうち揃って参拝する企業神になるという意味だ。
自分の死後、トヨタは持ち株体制になり、豊田家が神社に祀られることを恐れた豊田本家の豊田章一郎・名誉会長が巻き返しに出た。奧田派を追放して、息子の章男氏を社長につけた。その抗争が克明に描かれている。
本書の冒頭では、豊臣統一が女性とのトラブルから暴力団のフロント企業に拉致されるシーンが出てくる。さすがに、これは完全なフィクションではないかと思ったが、小説に書かれている多くは事実に基づいているそうだ。トヨタが隠したいスキャンダルが次々と暴露されており、トヨタには癪に障る小説だろう。
(つづく)
【森村 和男】
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