「全国商工会議所観光振興大会2017　in　前橋」に参加して（３）

大河ドラマをフル利用した上田市観光関係者たち

　この全国大会では必ず『全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞』が顕彰される。上田商工会議所は、2009年に上田商工会議所会頭を筆頭とする「NHK大河ドラマ 日本一の兵 真田幸村公放映の実現を願う会」を結成し、市民の機運を高め、地域一丸となって署名活動を全国展開し、約84万人から署名を集めた。結果、2013年に大河ドラマ『真田丸』の放送が決定した。

　上田商工会議社はこの「真田幸村公」の地域資源を観光振興事業として成功させるための市民・行政・経済界が一体となる“オール上田”で展開した。上田市に訪れる観光客には“おもてなし”宣言をした。また関連商品開発、販売拡大、街なか回遊事業等を行い、リピーターとなってもらおうと取り組みを実施した。その結果、2016年に放送された『真田丸』効果による上田市の消費総額は67億9,000万円となった。その実績による大賞の栄誉を上田商工会議所が顕彰されたのである。

　問題は確かに残る。果たして2016年の勢いを持続できるかという懸念だ。だがしかし、8年間続いた『真田丸』放映実現のための“オール上田”の活躍の経験は今後も大いに生かされるであろう。上田市民には申し訳ないが、数少ない歴史観光遺産「真田幸村公」を必死で利用し商売に結びつけた。この奮闘ぶりには福岡観光関係者は爪の垢を煎じて飲む必要があるようだ。

観光産業GDP総寄与額は？

　観光産業のGDP総寄与額は幾らか興味深いところである。当局の調べによると2016年は前年比で3.5％の増加で40兆8,105億円となっている。10年後の2026年には年1.7％の成長を見込んで48兆5,033億円という試算がなされている。トヨタ2社分の売上となる。凄い裾野広い産業であることが認識される。

　雇用面での貢献は一段高い。2016年で直接雇用が123万9,000人、間接雇用者が478万2,500人になる。10年後の2026年には直接雇用が134万人と推定され間接雇用が507万9,000人と見込まれている。後述するが外国人観光客は想定をはるか超えて増加する見通しである。となればGDP総寄与額が50兆円を優にクリアするであろう。日本経済の活性化を果たすにはまことに観光産業は無視できない産業なのである。

観光産業は日本経済における戦略的な要所を占める

　資料を参照していただければ、観光産業の明るい未来が理解できるであろう。2016年の外国人の旅行消費額は3兆7,476億円、一人当たり15万5,896円というデータが発表されている。外国人の観光客数は12年には836万人であったが、16年には2,404万人と3倍の伸びとなっているのには驚かされる。今年9月まで訪問者数は2,120万人であるから年率換算でいえば2,826万人となるはずだ。そうなれば旅行消費額は4兆円を突破する。

　余程の政治的動乱、経済の混乱が発生しない限り、外人観光客数の増加傾向は続く。2020年東京オリンピックの年には4,000万人が訪問してくれるのではないか。そうなれば旅行消費額は5兆円まで膨張することが期待できる。日本には成長産業は数少ない。誰でもがこの観光成長産業を見逃すはずがない。手を拱いていたら経営者としては失格であろう。企業間の競争も激しくなるし地域間格差も広がる。努力した者、地域だけが報われる。素晴らしいことだ。

九州地区でも急増

　九州地区でも外人客=インバウンド数は急増している。特徴は福岡県が独り勝ちで韓国・中国・台湾への依存度が圧倒的に強いということである。福岡県の独り勝ちの所以は福岡空港への国際飛行便数がとびきりに多いことと、クルーズ船寄港数がダントツであることだ。また韓国と海を隔てて隣接するという地の利があり、船舶便数があるという優位性が重なって独り勝ちとなったのだ。

　2010年当時の外国人訪問者数は100万人、16年372万1,122人、17年9月までが348万9,896人となり、年換算で465万人となる。18年に500万人突破は間違いない。8年間で5倍増である。上記の一人当たり平均数字に500万人をかけると7,800億円の旅行消費額になる。最大のビジネスチャンス市場となる。

　添付している資料を詳細読んでいただければ、インバウンドビジネスへの挑戦意欲が湧いてくるであろう。福岡商工会議所においても特に観光・飲食部会を先頭にインバウンドビジネスを有効に掴む研究・実践を推奨するはずだ。今後の粥川部会長の指導力に期待したい。筆者も前橋大会を覗いて沢山のことを勉強した。来年も参加しよう！！