楽天の未来は楽観視できるのか、それとも落胆あるのみか?(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸アメリカの医療ベンチャーに出資
さらなる共通点は医療サービスへの関心の高さです。三木谷社長は著名な経済学者であった父親をすい臓がんで亡くしています。何とか父親の命を救おうと日本のみならず世界の最先端の治療法を探し回ったそうです。そんなときに出会ったのがアメリカの国立がん研究所(NCI)の小林先生だったといいます。
小林先生は「がん光免疫療法」の研究における第一人者。彼からライセンスを取得し、まったく新しい治療法の治験に取り組もうとしていたのがアスピリアン・セラピューティクス社(カリフォルニア州)であり、三木谷社長は同社に対して即座に開発資金を決断。三木谷社長曰く「この革新的治療法との出会いは、初めてインターネットに出会ったときの衝撃と等しいものだった」。この光免疫療法は、色素を導入した抗体と近赤外線の照射を組み合わせ、がん細胞のみを選んで破壊することのできる技術です。
残念ながら、父親の治療には間に合わなかったそうですが、この治療法の効果を確信した三木谷社長は「貧富の差に関係なく、世界中で誰でもがアクセスできるような医療の構築を目指したい」との思いから、2019年に「楽天メディカル」を創業。がんの克服という目標を掲げ、医薬品や医療機器の分野で世界1を目指すというわけです。
三木谷氏曰く「家族として共にがんと闘った父が、私に与えてくれた新たな使命だと確信している」。今では筆頭出資者になったアスピリアン・セラピューティクス社の会長に就任しています。
マスク氏「PCR検査キットはあてにならない」
一方、イーロン・マスク氏も「ニューラリンク」で実現しようとしているのは人間の脳を人工知能と一体化させることで、さまざまな病気を未然に防ぐことのようです。これまでサルやブタといった動物を使って実験を繰り返していましたが、23年中には人を対象とした治験を開始すると公表。しかも、「自らを実験台にして効果のほどを実証したい」とまで入れ込んでいる模様です。
そして、新型コロナウイルスに関しても、三木谷氏とマスク氏の間には奇妙な関連性が見え隠れしています。というのは20年4月から楽天はPCR検査キットの法人向け販売を始めたのです。ところが、このキットは性能が悪く、医療従事者の間からは大ブーイングが巻き起こってしまいました。
後に判明したのですが、このキットの製造元は三木谷氏が社外取締役を務めている会社だったのです。そのため、事前に性能を精査することもなく、ゴーサインを出してしまったのでしょう。結局、専門家の意見を聞き入れ、楽天はこの検査キットの販売を停止し、三木谷氏も製造元の社外取締役を辞任することになりました。
他方、マスク氏はアメリカでPCR検査を複数回受けたのですが、同じ日のほぼ同じ時間帯に同じキットで同じ医師の下で4回の検査をしたところ、最初の2回が陽性で、次の2回が陰性でした。マスク氏曰く「PCR検査キットはあてにならない」。自分の身体のことは、自分で判断する気構えが大事で、検査キットなど意味がない、というのがマスク氏の結論。
三木谷氏も検査キット・ビジネスからは早々に撤退してほっとしたようです。この失敗で今後は提携先の選定にはこれまで以上に慎重な姿勢で臨むに違いありません。いずれにせよ、マスク氏の背中を負いながら、新規事業にまい進するミッキーです。先行する3社より仮想化、自動化、オープンアークテクチャー化で優位に立っており、モバイル事業での単年黒字が達成されれば、楽天グループの未来は楽観視できるようになるでしょう。
(了)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。法人名
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