2024年11月05日( 火 )

安倍元首相ドキュメンタリー映画『妖怪の孫』、監督が制作秘話など語る(後)

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 3月17日に新宿ピカデリーなどで全国公開される映画『妖怪の孫』(内山雄人監督)の先行上映会が2月23日に東京都内で開催された。A級戦犯容疑者(後に不起訴)となりながら首相の座にまで上り詰めた“昭和の妖怪”こと岸信介・元首相と、その孫の安倍晋三・元首相に斬り込むドキュメンタリー映画。上映会後には、企画プロデューサーを務めた元経産官僚の古賀茂明氏、東京新聞の望月衣塑子記者と内山監督が対談、亡くなった映画プロデューサー・河村光庸氏の思いを受け継いで完成に至った制作秘話をはじめ、銃撃事件後も続く“アベ政治”などについて語り合った。

望月氏
望月氏

    望月氏 マスコミの状況はひどいと思っていたけれども、安保三文書が決まって以降は、公然と、その前の9月から防衛力強化を話し合う有識者会議のなかに、日経新聞の喜多恒雄顧問と、読売新聞の山口寿一さんと朝日新聞の元主筆だった、私もすごく尊敬していた船橋洋一さんが入っていて、そのなかで話し合った議論のなかでは、戦争の準備行為をしよう、武器輸出を解禁しようという話がでてきました。そして、スタンド・オフ・ミサイルがないのであれば、当面、外国製のミサイルを買えとか、ほとんど準戦時体制に入るという内容の有識者会議での発言をしていたということが1月に(安保)三文書が決まった約1カ月後に分かったというのがありました。このドキュメンタリーで描かれているときはまだまだ後ろでコソコソやっている感がありましたけれども、もはや堂々と安倍さんの亡霊を引き継いだ、妖怪の亡霊を引き継いだ岸田政権がメディアとともに、有事に備えよということをやって、人々の、市民の生活を圧迫して、見えない将来がますます暗くなってきたなと思っています。

 異次元の子ども対策と言いながら、官房副長官の木原さんが、子どもの数が増えれば自ずと子どもに対するお金が増えていく。出生率を増やすためにお金を増やすのではなくて、子どもが増えれば、それに合わせて子どもの予算が増えるという滅茶苦茶な話をしているのです。これを見ても、妖怪の孫から引き継がれた今の岸田さんというのは、とにかく政権を維持して今のポジションから引きずり降ろされたくない。それがために、もはや日本の国民の命をアメリカに突き出して、何か起きたときにはもうすぐに日本の本土が敵基地として狙われる。そういう体制が着々と整えられていて、これにメディアのトップたちが関与しているという(状況)。公然とやり始めたと思っています。

 だから何よりも今の問題に気づくためには、この「妖怪の孫」を本当に多くの人たちに見ていただきたい。良くも悪くもキャラクターが入ってきたり、内山さんの情けない葛藤が出てきたりとか、河村さんと内山さんと古賀さんの3人がつくり上げたすごく共感をもてる映画、ドキュメンタリーになったと思います。

 今日見た方がダメ出しを含めて、「今、見なきゃ」というふうに多くの人が河村さんや皆さんの気持ちと連帯をしてくれるような発信をしていただいて、「おかしい」「これはそうではないのだ」という声も含めてもいいのですけれども、とにかく、このドキュメンタリーを見て、今の社会や政治を変えていく、考えていく一歩につながればと思っています。

 古賀氏 国のかたちが変わります。変わることが決まったという状況になっている。これをひっくり返すのは大変なことです。ずっと戦後70年以上、日本は軍事、軍備にはお金をかけない。軽武装で行きますよ。それは戦争を絶対にしないから。絶対に戦争をしない前提があるから軽武装でいって、余裕がないのだから国民経済、国民生活最優先で生きていきましょうというのを60、70年ずっとやった。それで日本はすごく発展してここまで来ました。いまやっていることは何かというと、隅から隅まで財源を探して見つかったら、まず防衛費に当てますということになったのです。

 その前提としては、戦争をするかもしれません。それは中国がいるからです。北朝鮮がいるからです。中国に負けないようにしなくてはいけません。だから防衛費を拡大するのです。これは際限がない。ですから重武装ですよ。国民生活よりも何よりも、子育て予算をどうするのかは何も決まってないのに防衛費のためには余っているものがあったら全部入れますということは決まっている。基金もつくって、そこにドンドン入れていく。軽武装・国民生活優先から、重武装・軍事優先にほぼ変わると。憲法改正と同じくらいのことが起きている。

 原発も同じですよ。原発もまったく今までの政策が転換される。だから本当に国のかたちが変わっていくということをどうやって広めるのかということをぜひ、皆さんも考えていただきたい。今日の話はとにかくツイッターでもフェイスブックでもインスタでも何でもいいのですが、どんどん発信していただけたら、と思います。よろしくお願いします。

(了)

【ジャーナリスト/横田 一】

(中)

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