車載電池市場で存在感を強める「リン酸鉄バッテリー」(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏新たな技術の進展でデメリットを改善
二番目に先ほど指摘したようにリン酸鉄バッテリーは三元系に比べてエネルギー密度が低く、航速距離が短いが、技術の進展でモジュール構造を排除することで、同じ体積に多くのセルを配置できる新たなセルバッケージデザインが開発され、リン酸鉄バッテリーの弱みをカバーできるようになった。韓国の車載電池会社は三元系に注力している間、中国企業は技術革新を通じてリン酸鉄系のエネルギー密度を改善し、コスト面の魅力もさらに高まったことで、市場シェアの急上昇が起きている。
車載電池はセルが集まってモジュールに、モジュールが集まってパックになる。中国CATLはモジュールの段階をなくし、セルをパックにする ‘セルtoパック(cell to pack)’ の方法を開発した。この工程技術の開発で、空間が15~20%大きくなり、エネルギー密度の弱みをカバーしたわけだ。さらに、リン酸鉄バッテリーの特許も、ほとんど期限が切れることになり、多くの企業がリン酸鉄バッテリー市場に参入できるだろう。
韓国企業も拡大しつつあるリン酸鉄バッテリー市場に参入するため、リン酸鉄バッテリーの研究開発を進めている。しかし、すでに主導権を握っている中国企業に太刀打ちできるのか、それに懐疑的な向きも多い。リン酸鉄バッテリーの採用が増加しているなか、全世界のリン酸鉄バッテリーのシェア95%を占めている中国の場合、毎年2,3倍の市場成長を続けている。今現在リン酸鉄バッテリーのシェアは三元系のシェアより多くなっている。
最新の市場動向は
このように市場シェアを伸ばしているリン酸鉄バッテリーであるが、課題も多い。材料が鉄なのでコストが安く、埋蔵量が豊富なのは良いが、鉄は重いし、天気の影響も受けやすい。それに、リサイクルも難しい。しかし、鉄は手に入れやすく、価格メリットがあるので、車載以外の分野でもリン酸鉄バッテリーの採用が増えつつある。正極材にコバルト、ニッケルなど使わないことによって、コストカットを実現している現在だが、電池にはもう1つ大事な材料がある。
リチウムである。このリチウムの採掘には約8年かかるので、供給が増えたからと言って、すぐ対応できる材料ではない。そんな中、中国のCATLはリチウムの代わりにナトリウムを使うバッテリーを開発している。もし実現できれば、ナトリウムはどこにでもあるし、コストは最大で3分の2ほど安くなるという。
それに、ナトリウムバッテリーは充電時間が短く、低温でもエネルギーを保つ能力が高いという特徴も備えている。しかし、リチウムイオン電池に比べて、ナトリウムバッテリーはエネルギー密度が低く、重いのが短所である。本格的なEV時代の到来に向けて、材料となる鉱物の安定確保やコスト競争に電池会社の各社は今後しのぎを削ることになるだろう。リン酸鉄バッテリーのシェア増大は中国企業とほかの電池メーカーの差を広げることになるだろう。
(了)
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