倒産の連鎖が止まらない欧米の金融機関:アジアへも波及?
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、3月17日付の記事を紹介する。アメリカでは大手銀行の破綻が相次いでいます。シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、シルバーゲート銀行と破綻の連鎖です。日本では馴染みが薄いかも知れませんが、シリコンバレー銀行の総資産は2,090億ドル、シグネチャー銀行は1,103億ドルと、日本でいえば大手地銀に匹敵します。
思い起こせば、2008年に証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界的な金融危機が発生しました。「その再来になりかねない」と懸念が世界に広がっています。
アメリカの資産運用大手のブラックロックのフィンクCEO曰く「過去の金融引き締め局面では、しばしば壮絶な金融破綻を招いている」と指摘し、さらなる信用不安の拡大に警鐘を鳴らすほどです。実際、スイスの金融大手クレディ・スイスの株価は3割以上急落、その他の金融株も下落傾向にあり、東京株式市場でも金融株を中心に値下がりが相次いでいます。
リーマン・ブラザーズの経営破綻を予言した『金持ち父さん、貧乏父さん』の著者でもあるロバート・キヨサキ氏によれば、「債券市場は破綻寸前」で、その理由は「ドルの価値が減少しているため、アメリカが際限なくドル紙幣を刷りまくっている」ことにあるとのこと。事態を重視した米財務省と連邦準備制度理事会(FRB)は「すべての預金を保護する」と発表しました。
バイデン大統領も緊急声明を発表し「アメリカの金融システムは盤石だ」と強調。しかし、盤石なら連鎖倒産など起きないはず。しかも、バイデン大統領の唱える保証は「1口座25万ドルまで」とのこと。ということは25万ドル以上の預金は消えてなくなるということです。
実際、ITやAI関連企業が集中するカリフォルニア州では巨額な取引が日常茶飯事であり、25万ドルを越える口座が86%を占めています。これではバイデン大統領の唱える救済策はほとんど意味がないと言わざるを得ません。
このままでは、世界経済をけん引してきたハイテク企業の連鎖倒産もあり得る話。言い換えれば、アメリカ式の資本主義が目の前で崩壊しつつあると言っても過言ではありません。背景にあるのはFRBの急速な利上げと言われています。
市場金利が急上昇し、債権価格が急落したことは否めません。実は、シリコンバレー銀行もシグネチャー銀行も融資先の大半は振興IT企業でした。しかも、その大部分を占めているのは中国企業に他なりません。そのため、中国系のメディアによれば、「中国のスタートアップ企業やベンチャーキャピタルの間ではパニックが起きている」とのこと。
言い換えれば、今回破綻したアメリカの銀行は米中間の金融橋渡しの役目を担っていたわけです。FRBが表向き「預金の保護」という措置に踏み切ったのも、バイデン大統領が3期目に突入した中国の習近平国家主席との首脳会談に意欲を見せていることが影響したと思われます。とはいえ、アメリカの構造的な金融危機を回避することは至難の業でしょう。
一方、水面下では中国との利害関係をめぐって民主党と共和党の間でつばぜり合いが演じられています。バイデン大統領とすれば、アメリカ進出を加速させる中国のIT企業を救済するための措置を取らざるを得なかったのかも知れませんが、共和党からすれば「バイデン一家は中国マネーに毒されている」との立場を補強する新たな攻撃材料を手にしたことにもなりそうです。
アメリカ政界の深層部では「中国マグマ」が火を噴く可能性が刻一刻と高まっています。問題はそこに止まりません。なぜなら、シリコンバレー銀行の経営責任者ジョゼフ・ジェンティル氏はリーマン・ブラザーズの投資部門の責任者で、その以前はアメリカ史上最大の企業破綻となったエンロンの役員だったのです。
これは単なる偶然でしょうか?そんなことはありえないはずで、アメリカの企業体質が内部から腐敗していることの現れといえそうです。そうした地殻変動の波は早晩、日本にも押し寄せてくるに違いありません。
次号「第335回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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