2024年11月23日( 土 )

拡大するバイオマス発電市場 輸入燃料の確保が課題に(後)

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 2021年度の国内バイオマスエネルギー市場規模(エネルギー供給量を金額ベースに換算)は前年度比約8.3%増の7,261億円(見込み)であった((株)矢野経済研究所調べ)(※1)。バイオマス発電所は燃料の多くを輸入に頼っており、なかでも輸入が大幅に増加している燃料に「パーム椰子殻(PKS)」がある。PKS燃料の生産、輸出、バイオマス発電所の最新動向について、紹介する。

シンポジウム会場
シンポジウム会場

PKS燃料の品質確保

インドネシア・パームバイオマス国際シンポジウム
インドネシア・パームバイオマス
国際シンポジウム

 後藤氏はPKSの自社の品質規格について、「パーム核粕やミネラルなどの異物混入を最小限にすること、塩素500ppm未満、ナトリウムとカリウム計2,000ppm未満、水分の管理、防塵、臭いが少ないことなど品質規格としています。たとえば塩素が原因でパイプなどの金属が腐食したり、ナトリウムやカリウムの塊がボイラーのなかにできたりするのを避けるためです。日本市場にふさわしい品質の燃料が、インドネシアのPKS輸出企業から提供されることが望まれます」と語る。

 佐伯発電所で利用しているPKSは、女島埠頭にある容量4万tのPKSヤードで保管しているが、保管時に、ボイラーにダメージを与える石、木、プラスチックなどの異物を取り除いている。塵が多かったり、臭いが強かったりする場合は、消臭剤入りの水を散布して塵が舞わないように対策している。

 「イーレックスは年間100万tのPKSを購入していますが、90%はインドネシア産です。インドネシアの輸出事業者から品質の安定したPKSを確保できなければ、他の代替燃料を検討せざるを得なくなるため、よい品質の燃料を確保できるよう努めたいと考えています」(後藤氏)。

インドネシア PKSの輸出、生産状況

Khadikin・インドネシア共和国経済担当調整省パーム開発部長
Khadikin・インドネシア共和国
経済担当調整省パーム開発部長

    ここからはPKSの主要生産国であるインドネシアの輸出市場の現状に注目したい。20年のPKSの最大の輸出先は日本20万1,910t(1,924万ドル)であり、続いてタイ3万350t(282万ドル)、韓国2万3,850t(217万ドル)となった。Khadikin・インドネシア共和国経済担当調整省パーム開発部長は、「インドネシア政府はPKSをペレット化する加工産業に投資することで、輸出品としてのPKSの付加価値を高めることができると考えています」と語る。

 インドネシアにおいて、パーム油やPKSの原料となるアブラヤシのプランテーションの面積は1,638万ha(19年時点)と広大であり、パーム製品はインドネシア国内総生産の3.5%を占める主要産業の1つだ。プランテーションは、大きい順にカリマンタン島(うち54%)、スマトラ島(42%)、スラウェシ島(2%)、その他(2%)などにある。「PKSは(1)水分が11~13%と少なく、燃えやすい、(2)パーム油の残滓が含まれるため、燃焼に適している、(3)大きさが均一であり、砕きやすい、(4)繊維が含まれているというバイオマス燃料として扱いやすい特徴があります」(Khadikin)。

Dikki Akhmar・インドネシアパームカーネルシェル事業協会会長
Dikki Akhmar・インドネシア
パームカーネルシェル事業協会会長

 「インドネシアのPKS生産量はやや増加傾向にあり、22年は前年比5%増の1,130万tと試算されています。23年は1,330万t、24年は1,420万tに増加すると予測されています。PKSは生産量のうち22~25%が輸出されますが、輸出量も増加傾向にあります。21年の246.1万t(23%)から、22年は248.6万t(22%)と微増の見込みですが、23年は425.6万t(32%)、24年は497万t(35%)と輸出が大幅に増加すると予測されています」とDikki Akhmar・インドネシアパームカーネルシェル事業協会会長は語る。

PKS輸入拡大に向けて、第三者認証取得が課題に

International Green Energy Pte. Ltd. 取締役・伊東亮平氏
International Green Energy Pte. Ltd.
取締役・伊東亮平氏

    PT. International Green Energy Pte. Ltd.はジャカルタに本社があり、PKSなどのバイオマス燃料の調達・貯蔵・選別・出荷・販売を行う企業だ。再エネの開発・運営を行う発電事業を行うテスホールディングスのグループ企業であり、インドネシアからバイオマス燃料を輸出している。

 PKSを日本に輸入するには、24年4月以降(22年12月時点)、第三者認証が必要となる見込みのため、同社はGGL認証を21年に取得した。認証更新の監査では必要書類が40以上あり、輸出事業者が準備するだけでなく、PKSを供給するCPO工場にも同様に書類を要求する必要がある。International Green Energy Pte. Ltd. 取締役・伊東亮平氏は、「第三者認証を取得するためにはCPO工場の協力が不可欠ですが、多くの工場は手間と時間とコストがかかるため、第三者認証の取得に前向きではありません。多くのFIT発電所は、第三者認証が求められる制度の開始にあたり、認証済の燃料を確保できるかどうか懸念しています」と語る(本稿の内容は22年11月17日に大阪で開催された「インドネシア・パームバイオマス国際シンポジウム」を基にしたものである)。

※1 出典:(株)矢野経済研究所「バイオマスエネルギー市場に関する調査(2021年)」(21年10月28日発表) ^

(了)

【石井 ゆかり】

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