2024年12月22日( 日 )

ウクライナの復興ビジネスを牛耳るアメリカの投資会社

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、4月21日付の記事を紹介する。

アメリカ 日本 復興支援 イメージ    ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年3カ月ほどが経過しました。国際社会からは早期の停戦と和解を期待する声が聞かれますが、具体的な進展は見られません。それどころか、戦争の影響もあり、世界的にエネルギーや食糧価格の急騰が続いています。

 日本でも物価高が深刻化しており、景気の先行きにも暗雲が立ち込める有り様です。その一方で、大儲けをしているヘッジファンドの強欲ぶりも目につきます。たとえば、世界上位のヘッジファンド10社は食糧価格の上昇の結果、この1年ほどで20億ドルもの利益を計上しています。穀物や大豆の値上がりによって、ウクライナ戦争の勃発する以前と比べ、大きな収益を確保したようです。言い換えれば、世界各地で飢えと生活不安が高じているにもかかわらず、こうしたヘッジファンドはかつてないほどの恩恵を受けているといえます。

 もちろん世界の食糧企業も負けてはいません。食糧関連上位20社においては、この2年間で535億ドルの利益を確保しています。新型コロナウイルスとウクライナ戦争によって、食糧も肥料も値段は鰻登りです。要は、コロナの影響も甚大ですが、出口の見えないウクライナ戦争が引き起こしているエネルギーと食糧供給の不安はかつてないものとなっています。

 トルコや中国などがウクライナ戦争の終結に向けての提案を行っていますが、当事国のロシアもウクライナも交渉には後ろ向きです。それどころか、アメリカもヨーロッパのNATO諸国も、ゼレンスキー大統領からの要請を受け、最新鋭の戦車やミサイルの提供に余念がありません。これでは戦争は拡大するばかりで、もはやウクライナを舞台にしたアメリカとロシアの代理戦争と言っても過言ではい状況です。

 そんな中、水面下でウクライナ政府に食い込み、「復興ビジネス」で大儲けを狙っているのがアメリカの投資顧問会社に他なりません。ヘッジファンドも強かですが、投資顧問会社も「今こそ腕の見せ所」といった様子です。

 その代表格がアメリカの「ブラックロック」でしょう。世界最大の資産運用会社で、9兆ドルを越える資産を扱っています。すなわち、ドイツのGDPの倍以上の経済力を誇っているわけです。しかも、アメリカの中央銀行にあたるFRBを始めヨーロッパ各国の中央銀行から運用を任されている資金は18兆ドルを越えています。

 そのブラックロックが今、注力しているのが「ポスト・ウクライナ」ビジネスです。昨年から本年にかけ、ウクライナ政府との間で「復興資金の調達と分配」に関する契約を相次いで締結しています。ブラックロックの創業社長ラリー・フィンク氏は民主、共和を問わず、歴代のアメリカ大統領と緊密な関係を築き、政権幹部に自社出身者を多数送り込んできました。

 今やウクライナの経済を牛耳っているのはアメリカからの財政支援です。そうしたアメリカ政府のお墨付きを背景に、フィンク社長はウクライナに乗り込み、ゼレンスキー大統領との間で「復興計画」を取りまとめるという荒業を見せています。アメリカ政府はウクライナの財政破綻を回避させるために130億ドルの直接的資金援助を展開中です。

 しかし、「これではまったく足らない」というのがゼレンスキー大統領。「少なくとも1兆ドルは必要」と要求をエスカレートさせています。去る2月にはウクライナを訪問した岸田首相ですが、アメリカからの要請もあり、ウクライナへの資金援助を拡大せざるを得ない状況にあるようです。

 5月の広島でのG7サミットでもウクライナ支援は最重要課題と位置付けられています。とはいえ、過去最悪の財政赤字に陥っているアメリカはこれ以上ウクライナへの資金提供はできない話。そこで、これまでの財政支援をインフラ整備など復興ビジネスで回収しようと目論んでいるのがバイデン政権です。

 バイデン政権とブラックロックやゴールドマンサックスなど大手金融資本は「戦争ビジネス」という発想で連携プレーを展開していると言っても過言ではありません。何しろ、彼らの強みは運用資金の大きさと政治とのパイプの太さに加え、大手メディアへの比類なき影響力です。

 たとえば、ブラックロックは「ニューヨークタイムズ」紙の最大の株主として、その論調や報道に無言の圧力をかけることができているわけですから。国際世論を巧みに誘導し、ウクライナ支援を正当化し、「復興事業」への融資を世界中から集めようとしています。

 8,000億円を提供する意向を表明した岸田首相などは格好のカモと見なされているに違いありません。広島サミットを間近に控え、ゼレンスキー大統領からは「もっと援助の額を増やしてほしい。そのまとめ役を岸田首相にお願いしたい」との要請がきています。日本政府は福島の原発事故や震災の教訓をベースに水素燃料発電などの技術支援をウクライナへ提案していますが、ゼレンスキー大統領の「武器くれ、金くれ、ノーベル平和賞くれ」の3大要求には、岸田首相も頭を悩ませているようです。

 次号「第339回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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