マイナ保険証をめぐるお粗末ぶりと決断できない岸田首相
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国民の不安が高まるマイナ保険証
現行の健康保険証の廃止およびマイナンバーカードへの統合が進められているが、さまざまなトラブル、問題が続々と発覚している。
たとえば、厚生労働省は先月、別人の情報を誤って登録していたケースが2021年10月から22年11月までの約1年間で7,300件以上あったことを明らかにした。また、国からの給付金を受け取るための預貯金口座をマイナンバーと紐づける公金受取口座の登録に関して、本人でない家族名義の口座が登録されているケースも多数判明しており、当人が給付金を受け取れなくなる可能性も指摘されている。
岸田文雄首相は21日、通常国会が閉会したことを受けて記者会見を行い、国民の不安が多い健康保険証とマイナンバーカードの一体化について次のように説明した。
「来年秋の保険証廃止への国民の不安を重く受け止めており、現行の保険証の全面的な廃止は、国民の不安を払拭するための措置が完了することを大前提として取り組みます」。
岸田首相がもし本当に国民の不安を重く受け止めるのであれば、与党内からも「急がなくていい」との声があるなかで、なぜ急ぐ必要があるのだろうか。
岸田首相は会見において、健康保険証の廃止時期を来年秋とする現行方針は維持する姿勢を崩さなかった。なお、健康保険証がマイナンバーカードに統合され、予定通り健康保険証を来年秋に廃止した後も、健康保険証を最長1年間利用できる特例措置が設けられている。
岸田首相の会見と同じ日、全国保険医団体連合会(保団連)は、記者会見を開いて全国の医療機関に実施したアンケート調査の結果を公表した。同連合会のアンケートでは約1万の医療機関が回答している。
会見において、マイナ保険証が無効などと表示され「無保険扱い」となった患者に対し、医療費などを10割負担で請求した事例が1,291件あったことが公表された。マイナ保険証のみの場合は、オンライン上で資格が確認されるまで「無保険者」となってしまう。「他人の情報が紐づけられていた」事例は31都道府県で114件確認された。また、医療機関で本人確認を行った際に、マイナ保険証所有者と別人の顔で認証されたケースが3件あったという。
日本が誇る国民皆保険制度の根幹にかかわる問題だが、国が頑なに方針を変えないのはさまざまな利害が絡んでいるからではないか。
ある企業経営者は「マイナンバーカードに健康保険証や免許証などを、紐づける動きをしているが、あれは海外の支配層が人々の情報を一元化して支配することを目論んで、日本政府にやらせている」と自説を語った。その真偽はさておき、現状維持をよしとする日本の政府や官僚が、何らかの思惑抜きに社会システムを大きく変える動きを進めることはないだろう。
解散よりライバル一掃を考えた岸田首相
マイナカード保険証1つとってもお粗末な岸田首相は、国会開会中の解散も決断できなかった。岸田首相の後見人である麻生太郎自民党副総裁などの反対があったようだが、政治はタイミングが重要だ。国際情勢も刻々変わっていく。だらだら続けるとなると、解散権行使の前に政局が動くこともあり得る。
ある識者は、岸田首相は「党内のライバルをまずどうにかすることを優先したのではないか」との見方を示している。問題となっているマイナ保険証の関する政策を主導していた厚労省よりもデジタル庁のほうだ。同庁の担当大臣は河野太郎氏。岸田首相にとって前回自民党総裁選で争った河野氏は次の総裁選のライバルになり得る。河野氏は旧統一教会問題をめぐって、岸田首相の頭越しに審議会をつくって不当勧誘寄付に関する規制法の審議・制定を主導した。今回の問題を河野氏の頭を抑える好機と捉えたとしてもおかしくない。
安倍晋三元首相をめぐってはその政策や政治姿勢は賛否両論であったものの、安倍元首相は積極的にさまざまな手を打って政権を1日でも長く維持するための動きをしていた。その結果が7年以上におよぶ長期政権であった。菅義偉前首相は在任時の21年、総裁選を控えるなかで党内から反乱が相次ぎ、出馬することもできなかった。岸田首相には安倍元首相のような強力な支持層はない。ここぞというタイミングを逃したら、来年9月の総裁任期満了前に、国内外の変動をきっかけに失脚することもあり得る。
【近藤 将勝】
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