2024年11月23日( 土 )

人工知能(AI)が世界を支配する時代の到来か(中)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

人工知能 イメージ    韓国の国家情報院によれば、北朝鮮の金正恩総書記の体重は140㎏を突破したとのこと。かつては極秘情報でしたが、最近ではAIの分析精度が向上したため、スパイや内通者の情報に頼らなくとも、北朝鮮のテレビ放送に映る金正恩総書記の画像から、体重はもちろん健康の具合や精神状態まで正確に推察できるようになったようです。

 最新の映像は5月16日に放送されたものですが、39歳とされる金正恩氏は目の周りに黒いクマが目立ちました。アルコールや喫煙によるニコチンへの依存度が高まっている模様です。

 北朝鮮の「労働新聞」によれば、金総書記は連日、明け方の5時まで徹夜で仕事をこなしているとのこと。重度の不眠症で、海外から睡眠導入剤「ゾルピデム」を購入するとともに、治療に関する医療データを集めているとも指摘されています。仕事のし過ぎなのか、飽食と過度のアルコール摂取が原因なのか、世界の注目の的です。

 しかし、国内では食糧不足が深刻化しており、餓死者の数は前年比で3培も増加しているともいわれるほど。かつての中国に倣ってか、北朝鮮では平壌の公務員や学生らが地方の農村に送り込まれ、食糧生産に励んでいるとの報道が盛んです。

 表向きの目的は「都市部の若者に地方の生活を体験させ、祖国愛を強めること」。意外にも、そうした農村地帯にはロシア大使館の外交官らも招かれ、一緒に汗を流す場面が北朝鮮メディアでは報じられるようになりました。

 AIを使って分析すれば、そうして駆り出された都市部の若者やロシアの外交官らの気持ちも明らかになるでしょう。農村体験を喜んでいるのか、無理やり動員されているだけなのか?

 実は、最近の「ラジオ・フリー・アジア」によれば、北朝鮮各地で警官に対する暴行事件が相次いでいるようです。というのは、公務員である警官の給与が低過ぎることで、市場や街頭で警察官が住民に公然と賄賂を要求するようになったため、怒った住民が実力行使に訴えているとのこと。町を走っている車を停めさせ、難癖をつけて罰金を徴収し、時にはガソリンを抜き取るような事件が頻発している模様です。

 こうした国民の不満や不信はロケットの打ち上げでは解消されそうにありません。身の回りにも危険を感じているせいか、夜も安心して眠れないというのが最近の金総書記なのかも知れません。

 このままでは、最悪、自国民や世界を道連れに自爆の道を選ぶこともあり得ます。AIによる精神構造の分析次第では、アメリカと韓国による斬首作戦が発動されることもあり得る話です。

 いずれにせよ、人工知能(AI)の進化は人間の想像力や対応力を超える勢いを見せています。最近、話題を集めているチャットGPTですが、西村経済産業大臣曰く「国会答弁の作成を効率化するうえで、チャットGPTなどAIは有力な補助ツールになる。公務員の業務負担を軽減させるためにも活用の可能性を追求したい」。

 国会開会中は議員からの質問に対する答弁を準備するため、多くの役所では連日、徹夜を余儀なくされているため、そうした過重労働から解放される手段になり得るというわけです。国会答弁に限らず、総務省や農水省でも日常業務の効率化を図るためにチャットGPTを積極的に導入する準備を進めています。

 先のG7 広島サミットでも、議長国として日本は生成AIの活用について知財活用の観点から議論をリードしていました。確かに、チャットGPTの威力には凄まじい可能性が感じられます。

 たとえば、米カリフォルニア大学サンディエゴ校が行った実験には説得力がありました。200件ほどの患者からの質問に、人間の医師とチャットGPTが回答し、その回答を専門家が評価したところ、何と79%は後者のほうが質が高く、正確だと判定されたのです。また、回答内容が「共感的かどうか」についても、チャットGPTに軍配が上がりました。

 要するに、「AIの発する言葉は無味乾燥で、人間味に欠ける」という常識を覆したわけです。実際、悩みを相談してみても、質問者に寄り添った返事をしてくれます。その説明ぶりも、「時間に追われている医師やカウンセラーより丁寧で分かりやすい」と評判でした。

 しかも、米テキサス大学の研究者たちは最近、世界をさらに驚かすような研究成果を発表しました。それは人が音楽を聴いたり、映像を観たりしている間に何を考えているかを読み取り、文章化することに成功したというのです。

 個人のプライバシーを侵害することにもなりかねませんが、意思の疎通のできない患者の気持ちを読み取るという意味では画期的な成果とも受け止められています。「ニューラリンク」を立ち上げたイーロン・マスク氏が実験を進める「人の脳とAIの合体」とも相通じるものがあると言えるでしょう。いずれの場合も、医療の現場での応用が優先されています。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
    国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

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