種の保存を忘れたホモ・サピエンスの行方(前)~個人がバラバラに分断、解体され、この世から消滅する
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胃がんになっていた
「サロン幸福亭ぐるり」の報告者・大山眞人氏との付き合いは30年近くになる。同シリーズはNetIB-NEWSの長期連載記事の1つである。埼玉県所沢市にある公的アパートでの老人たちの終活の現状をリアルに報告するレポートを読むにつけて、政府ならびに地域行政の市民に対する冷遇ぶりには激しい怒りすら覚える。と同時に「アパート住まいの誼(よしみ)でどうして住民たちはもう少し結束しないのか?」との疑問も抱く。
第2次世界大戦に敗北した日本は、この80年近くアメリカの属国になり下がり、アメリカン・イデオロギーに洗脳されてしまった。「誰にも迷惑をかけず自己責任で生きればケセラセラ」という価値観を叩きこまれた。80年間、政治思想や経済規範ばかりでなく、生活規範までも頭を切り替えさせられた結果を見る思いだ。個人は皆バラバラに生き、分断されて、最期は孤独にあの世へ旅立つ時代を生きるようになった。
ところで、今回の「大さんのシニアレポート」を読んで異様さを感じ取った。いつも淡々とさらに批判はシニカルに展開する氏の文章なのに、今回は異様に感情が露になっている。「おかしいなー」と疑問符がついた。早速、本人に電話した。大山氏は今時、珍しい化石の人である。携帯電話をもっていない。自宅に電話しても繫がる時間帯は午前6時半から8時の間しかない。この時間に絞って電話したらようやくつながった。早速筆者の疑問をぶつけた。「今回はどうしてストレートに怒りを露にしていたのか?」と。すると電話口の回答は、「胃ガンの手術を受けていた」という返事であった。
油断すれば殺される
大山氏の手術入院中の体験談を1つ聞いた。要は、「誤診で殺されることもある」という話である。相部屋の患者で同じくガンの手術をした1人がいうには、「小腸ガンと見立てられて手術した。ところが間違っていた」のだという。大山氏はその様子について、「病気を治すつもりで病院にやってきたところが、まさか誤診であの世行きしそうな人に遭うとは、まったく恐ろしい」と憤慨した。だからレポートにも感情がこもっていたのである。電話したのは10月24日朝、下記のような封書が届いたのが24日午後であった。
児玉様
退院してから一カ月、体力がなかなか戻らず、元気な頃の生活になるには、もう少し先になりそうです。
ただ気力はほぼ元気な頃並みにあり、唯一の救いかもしれません。
次回作に向けて準備中です。
考えてみますと、八十歳目前なんですね。いつまでも元気でいられると思っていましたが、やはり思い上がりでした。
残りの時間をしっかり生きるつもりです。2023年10月20日
大山眞人(つづく)
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