2024年12月22日( 日 )

日本一アビスパ、3つのポイントで振り返る(前)

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 1996年のJリーグ参加から27年、アビスパ福岡はクラブ史上初めて、3大タイトルの1つYBCルヴァンカップの優勝という栄誉を勝ち得た。優勝カップ、賞金1億5,000万円という実利に加え、アビスパが得たのはカップウィナーという格である。来シーズン以降のユニフォームには、アビスパのエンブレムの上にタイトル勝者を示す星が永久に刻み込まれるのだ。この歴史に残る勝利はなぜ実現したのか。「(1) 人材:的確な補強と起用」、「(2) 一体感:“控え”なきチームづくり」、「(3) リーダーシップ:常に選手と向き合い続ける指揮官の姿勢」の3点に絞って振り返ってみよう。

(1) 人材:的確な補強と起用

決勝戦、リラックスして入場する選手たち
決勝戦、リラックスして入場する選手たち

    2020年にアビスパは就任1年目の長谷部茂利監督のもと、J1昇格をはたす。このとき主軸となったのは、MF遠野大弥(川崎)、MF増山朝陽(神戸)、DF上島拓巳(柏)、DFエミル・サロモンソン(広島)らレンタル移籍の選手たちだった(所属はいずれも2020年当時)。このうち、2021年のJ1シーズン開始時にチームに残ったのは完全移籍で獲得したDFサロモンソンのみ。しかも19年、20年とレギュラーを務めたGKセランテスの放出に踏み切ったことで、「この陣容で、J1で戦えるのか」と不安に思うサポーターも多かった。

 だが、その不安はあっという間に解消する。GK村上昌謙は正GKの座をがっちりとつかみ、鳥栖から復帰したMF金森健志、新加入のDF志知孝明、DF宮大樹らが大活躍を見せる。この年、レンタルで加入したのはDF奈良竜樹のみ(シーズン終了後完全移籍加入)。まずJ1昇格ありきだった2020年と、J1定着を目指す初年度だった2021年とでは、明確に補強方針を変えてきたのがわかる。

決勝点となった2点目を決め、吼えるDF宮大樹
決勝点となった2点目を決め、吼えるDF宮大樹

    もう1つ目立つのが、いわゆる「長谷部チルドレン」の獲得だ。20年から22年までキャプテンを務め、ルヴァンカップ決勝ではMVPに選ばれたMF前寛之、GK村上、DF志知、22年に加入したMF平塚悠知は、いずれも19年に水戸ホーリーホックでプレーしていた選手たち。この年、水戸を率いていたのが長谷部監督だった。指揮官が能力、性格、プレースタイルを熟知した選手たちを獲得し、適材適所で起用する。「当たるも八卦」で高額な外国人選手に投資するより、はるかに有効だといえるだろう。

(つづく)

【深水 央】

(後)

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