2024年11月23日( 土 )

第5次中東戦争へと続くイスラエル・パレスチナ戦争(前)

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(株)日本一
代表取締役 桜 大志 氏

 NetIB-NEWSでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONAL(本部:日本)のニュースを紹介している。DEVNETはECOSOC(国連経済社会理事会)によりその総合諮問資格を認定されている非政府組織(NGO)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約1万4,000名に英語など10言語でニュースを配信している。今回は11月1日掲載の記事を紹介する。

イスラエルとサウジの国交正常化阻止に成功したハマスの攻撃

(株)日本一 代表取締役 桜大志 氏    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、イラン最高指導者直属の「革命防衛隊」メンバーとハマスなどの幹部が8月以降に会合を重ね、イラン側が攻撃計画を策定し支援したと報じた。英紙『ファイナルシャル・タイムズ』はハマスが3,000発以上のロケット弾を発射できる能力を備えていたことから、「ハマスとイランの関係がどれほど深化していたか再検討する必要がある」と論じた。

 ハマスはイスラム教スンニ派、イランはイスラム教シーア派だが、対イスラエル作戦で組んでいるのは当然と見ないといけないだろう。ではなぜこの時期かというと、ちゃんとした理由がある。

 イスラエルが進めるサウジアラビアとの国交正常化協議を妨害したいからに他ならない。両国が国交を結べば中東の勢力図は一変しイランもハマスも孤立が進むと見られていた。そこでイランを後ろ盾とするハマスが協議の妨害を目論み、7日の大規模攻撃を着手したという見方は当たっているだろう。3000発~5000発とも発表されているロケット弾はイランから供給されていることは想像に難くはないだろう。(一部北朝鮮製のミサイルの破片が現場で発見されたとの報道もある)

 そして14日ロイター通信は、「サウジアラビアはバイデン政権の仲介で進めていたイスラエルとの国交正常化協議を凍結した」と伝えた。ハマスとイスラエルの戦闘激化によってアラブ諸国で反イスラエル世論が強まっているのを受けた措置とみられている。協議が再開された場合も、サウジがイスラエル側にパレスチナ問題で大幅な譲歩を求めるのは確実で協議は暗礁に乗り上げる可能性が高まった。

 バイデン大統領はイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を手柄に次の大統領選を戦うとの思惑があったが、思わぬ事態の連鎖によってその目論見は失敗したことになる。それに...ついでに言っておくがバイデン政権は戦争を起こし続けた。ウクライナ戦争、ハマス戦争と2つの戦争のことである。トランプ大統領であったなら、ウクライナ戦争は100%起きなかったと断言できる。

 実際にトランプ大統領の時代には一度も世界戦争は起きなかった。これは国際外交の手腕の差と言える。なにせ38度境界線にある板門店を潜って北朝鮮に入り金正恩と握手をして、核実験とミサイル発射実験を停止させるという離れ業をやってのけたのだから、その外交手腕は異次元である。「共和党政権よりも民主党政権のほうが戦争をする」、とよく言われるが残念なことにその通りの結果となった。

 トランプは「タフ・ネゴシエーター」、バイデンは「ア・バッド・ネゴシエーター」である。ロシア敵視主義に基づくロシア外交の大失敗と、中東政策の失敗は地球の未来に暗い影を落とすことになった。ハマス戦争もバイデンの中東政策の失敗を如実に表しているに過ぎない。覇権国大統領の見識力、交渉力のなさは民衆の巨大な悲しみと、血と、都市の破壊という悲劇をもたらすことになった。

 このように今回のハマスによる軍事行動はイランの思惑通りに事が進み、サウジとイスラエルの国交正常化によって中東勢力が一変して勢力図が変わりイランが孤立化するのを防ぐことに成功したといえる。

 つらつらと述べたものの、今の見方は政治的な理由でしかない。実際は「感情論」のほうが強いはずである。イスラエルへの憎しみがたまり爆発した。ロケット弾に憎しみを込めてイスラエル市街に撃った、ということだと思う。

イランの戦争介入通告は重くのしかかっている

 イランは「イスラエル軍が地上攻撃を実行したら介入する」とイスラエル政府に通告している。イスラエル軍によるガザでの地上戦突入はそのままイランとの戦闘を意味している、というわけである。だからイスラエル政府は地上戦開始を思案しすぐに実行に移していない。バイデン大統領の18日のイスラエルでの会談でXデーは決定したのだろう。

 イスラエルは、「ハマス」「ヒズボラ」「シリアのイラン革命防衛隊」、そして「イラン」と同時に戦わねばならなくなる。それにヨルダン川西岸のパレスチナ武装ゲリラも参戦することまでも予測される。さあどうする。

 17日夜にガザ市病院がイスラエル戦闘機による攻撃を受けて500人以上の死者が出たというニュースがあった。イスラエルは攻撃を否定しハマスと敵対するガザ地区にいる武装勢力のロケット弾の誤爆によるものであると反論している。反論はしているものの、トルコのエルドアン大統領を始め世界各国元首および国連も「人道上決して許されない行為」と批判している。つまりイスラエルは嘘をついていると決めつけているということでもある。

 バイデン大統領は18日にイスラエル訪問の後、ヨルダンに訪問しヨルダン国王、アッバス・パレスチナ暫定自治区議長、エジプト大統領と会談予定であったが、イスラエルの非人道的な行為に対して、それをしでかしたイスラエルの同盟国のアメリカ大統領と今は会談すべきではないとする政治的判断により、会談を断られてしまうという思いもしない事態となってしまった。あれは米国が立会を断られたのであって米国が断ったのではない。

(つづく)

(中)

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