2024年11月23日( 土 )

第5次中東戦争へと続くイスラエル・パレスチナ戦争(中)

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(株)日本一
代表取締役 桜 大志 氏

 NetIB-NEWSでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONAL(本部:日本)のニュースを紹介している。DEVNETはECOSOC(国連経済社会理事会)によりその総合諮問資格を認定されている非政府組織(NGO)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約1万4,000名に英語など10言語でニュースを配信している。今回は11月1日掲載の記事を紹介する。

映像により支持を失いつつあるイスラエル

 バイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相との会談で、ガザの病院の爆発への関与を否定するイスラエルへの支持を表明したが、アラブ側と会談ができずに22カ所におよぶ医療機関攻撃という大きな罪を犯したイスラエルとだけ会談して帰国したのは、中東訪問の失敗である。悲惨な映像を見てウクライナに対し世界が同情し支援の輪が広がったように、連日ガザから配信される街の破壊と血と悲鳴の痛々しい映像によって、自衛を超越したイスラエルの無差別攻撃に対し非難が高まるとともにパレスチナへの同情が増している。

 現代戦争は前線から配信される映像の力によって、国際世論が大きく左右されるメディア型戦争になっている。ガザの難民の悲惨な映像によって今はイスラエルが優位とはいえない現状だ。世界中の人々はウクライナがそうであったように、大国に蹂躙される弱小国に対する判官贔屓の姿勢をとる。よってイスラエル軍がガザに侵攻して強引に地上戦に突入し、今まで以上にパレスチナの人々を殺戮するとなると国際世論は完全にイスラエルから離れることになるのは必至だ。すでに南アフリカのラマポーザ大統領は、パレスチナとの連帯を宣言している。グローバルサウスはパレスチナ寄りの立場を取る国が増えている。またガザ市医療施設空爆における大量死によってアラブ諸国は反イスラエルの立場を一層明確にしている。

イランの参戦は中東戦争勃発と同義

 シーア派のイランが参戦すると一気にこの戦争は重量級が加わる大規模戦争になるだろう。イスラエル軍が得意とする空からの攻撃によって、原子力発電所やウラン濃縮核施設などを空爆し破壊でもしたら最後、全面戦争に発展しかねない。

 ロシア・ウクライナ戦争ではロシア側しか核を保有していなかったが、イスラエルとイラン戦争では核保有国同士の戦争ということになる。イランは公式的には非核保有国ということになっているものの、原発があり、しかもウラン濃縮施設があるということから、核開発は済んでいると見るべきである。核開発はそんなに大した技術ではないし、なければ北朝鮮やロシアから購入すれば済むことである。イランは核保有国と見ないといけない。

 毎日さまざまな予期せぬ出来事が起きるため今後どうなっていくかは正確に予測することはできないが、この戦争を引き金に大きな流れとして「第5次中東戦争」に向かっていくと考えている。中東にはあまりにも憎しみがたまりすぎており、そのはけ口を求めている。同じアラブ人が虫を殺すように異教徒に殺され続ける映像を視聴し続けたら、「イスラエル許し難し」の思いが醸成され、アラブ諸国がこぞってイスラエル掃討に向かって立ち上がってもおかしくない。

和平は遠い

 イスラエルとパレスチナは国際世論の後押しもあり、1993年にイスラエル・ラビン首相とパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長が、クリントン大統領の仲介で「パレスチナ暫定自治協定」を締結した。これを「オスロ合意」という。そして1994年にはガザに暫定自治政府が成立。国際社会はラビン首相とアラファト議長にゴマすりのノーベル平和賞まで贈った。世界はなぜ両者がノーベル平和賞を受賞できるのか驚くとともに、ノーベル平和賞なる賞は政治的な意味合いの深いものとの認識が固定化しノーベル賞の格が下がった。それはオバマのノーベル平和賞で決定的になった。

 しかし、イスラエルとパレスチナの合意に世界中は歴史的快挙と賞賛し、これで両者の争いは雪解けに向かうと思われたが結果的にはそうならなかった。パレスチナ人の75年間に渡る憎しみはそうやすやすと氷解するものではないし、暫定自治政府が認められようが難民状態に変化はないので根本的解決をはたすにはいたらないのは当然かもしれない。

 逆に2001年にはイスラエルの首相に就任したシャロンは中東和平交渉を停止し、ガザ地区に8mの高い壁を建設してアラブ人居住区にパレスチナ難民を隔離した。西暦2000年の少し前に一時は歩み寄りのあった両者の関係は、2001年以降冷たい関係に再び戻った。ラビン首相は「オスロ合意」締結後に国内のシオニストの青年に暗殺され、アラファト議長も病死した。両雄の努力は無に帰した。そしてトランプ政権の時代に米国はエルサレムを首都に認定する宣言まで発令し、アラブ人を強く刺激し中東は混とんのままに置かれた。

 歴史的沿革からしてパレスチナ人および全アラブ人のイスラエルに対する憎しみは深く、それはイスラエルという国家がパレスチナの地から消滅するまでなくなることはない。消滅すると簡単に述べたが、イスラエルの人口は現在約950万人であり、それがなくなるということは想像を絶することが起きるということでもある。

 東アジアでは習近平が台湾の主権を主張し軍事攻撃を辞さない構えをみせているが、中国と台湾は同人種であり、両国に横たわっている問題はパレスチナ同様の領土問題ではあるものの爆発するような憎しみがたまっているわけではない。

 中国共産党政府はただの一度も台湾を領土化した歴史はないのだから台湾は奪われたわけでもないし、歴史的沿革からしてもどこまで遡っても大陸の支配下に置かれたことなどない。中国共産党の国力が増したことにより肥大化し上限のない領土欲によって、「台湾も支配下に置く」という願望を抱いているに過ぎない。ところがイスラエルとパレスチナの憎悪はすさまじくどちらが勝つか決着がつくまで終わらない。「勝つか」とはどちらが「滅びるか」という意味である。

(つづく)

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