麻生氏の反対で福岡9区支部長空席に 今こそ大家氏の奮起を
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自民党は16日、党本部で支部長選任会議を開き、懸案となってきた衆議院福岡9区(北九州市八幡西区など)について、次期衆院選の公認候補予定者となる支部長を置かず、空席とすることを決定した。
地元の声を無視した決定
「異例の支部長空席ですよ。今まで取り組んできたことは何だったのか」
こう語るのは北九州市の自民党関係者。怒り心頭であった。
会議には茂木敏充幹事長のほか、小渕優子選挙対策委員長、世耕弘成参議院幹事長などが集まり、全国の衆議院選挙区のなかで空白となっていた福岡9区など3選挙区の取り扱いを協議した。この協議前に、茂木幹事長は大家敏志参議院議員を呼び、世耕参議院幹事長立会いの下、参議院に残るよう強く説得した。その後、茂木氏は上京していた県連幹部に協議の決定内容を伝えている。
また、福岡10区(北九州市小倉北区など)については、福岡県議会議員・吉村悠氏を支部長とすることを決定した。
なぜ、党員投票でも一番多数の票を集めた大家氏が、正式な支部長(現在は松尾統章自民党福岡県議団会長が「代行」に就任)に就くことができないのか。
福岡9区は、2021年の衆院選で自民党の三原朝彦氏が野党系の緒方林太郎氏に敗れ、自民党の地元支部長は空席となり、自民党にとって議席の奪還が命題となっていた。
衆議院議員の任期が折り返しとなるなか、解散総選挙が年内行われるという情報が飛び交い、鞍替えを目指す大家氏と、三原朝彦氏の甥で北九州市議会議員・三原朝利氏が名乗りを上げていた。
自民党福岡県連は、党員投票で勝った大家氏の支部長選任を求めてきた。10月27日、支部長代行を務める松尾統章県議団会長などが自民党本部で茂木敏充幹事長と面会し、改めて県連の党員投票で選出された大家氏の支部長選任を要望した。
そのなかで「地元は大家さんを中心とした活動で熱くなっており、それ以外の誰かに決まれば選挙はできない」ことを強調した。
松尾氏らの要望に対し、茂木氏は「鞍替えは原則認められていない」ことを説明したうえで、11月なかに判断を下す意向を示していた。要望のために上京したのは、松尾氏以外に小緑貴吏県議(北九州市戸畑区)など福岡9区内の県議や北九州市議、団体関係者など13人。党本部に対する要望書は小緑県議が読み上げたという。しかし、党本部は原則衆参の鞍替えを認めていないことや、自民党が参議院において単独過半数を割っていることなどを理由に認めなかった。
麻生氏の意向忖度は民主的手続きの否定
しかし、それは表向きの理由で、実態としては岸田文雄首相(自民党総裁)の後見人であり、中央・福岡政界に強い影響力をもつ麻生太郎副総裁の反対があったからである。
麻生氏の反対理由は、麻生氏が三原氏を推しているからとの見方が専らであるが、もともと福岡9区は中選挙区時代、麻生氏の選挙区でもあり、現在もその影響力があるといわれる。
2月の北九州市長選挙で、三原氏と福岡10区から立候補を表明している大石仁人市議は、昨年12月2日に北九州市役所で行われた武内和久氏(現・北九州市長)の政策発表に合わせて、「自民党・無所属の会」を離脱し、新会派「自民党・市民が市長をつくる北九州未来市議団」の結成に打って出た。三原氏と大石氏は麻生氏に近く、中村明彦福岡県議会議員の支援も受け、北九州市長選で武内氏を全面支援した。
麻生氏は、もともと与野党相乗りに批判的で、15年の北九州市長選では「独自候補を立てるべき」と檄を飛ばしていた。
大家氏は、元国交省官僚の津森洋介氏の選対本部長を務めていたが、今回、茂木氏との面談においても北九州市長選の敗北を引き合いに出されたという。
しかし、公募や党員投票という民主的プロセスを経て選出した支部長候補を、党本部の裁定で覆すのは、自民党が地方組織に支えられてきたことを否定するものであり、地元関係者ばかりでなく、有権者にも「自民党は民主的でない」との印象を与えかねない。
大家氏や彼を支援してきた党県連、支持団体などの方々の心中を察して余りある。
急転直下の決定となったが、ここで負けないでいただきたい。大家氏の奮起に期待したい。
【近藤 将勝】
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