2024年11月24日( 日 )

反省しない日歯連、迂回献金の問題性

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

kaigi 日本歯科医師連盟(日歯連)の前会長ら3人が東京地検特捜部に逮捕された迂回献金事件は、「政治とカネ」をめぐって、日歯連という組織の抱える問題と、これまで捜査が困難な迂回献金禁止の問題を浮き彫りにした。

 際立つのは、日歯連の政治活動の異質さだ。2004年の自民党橋本派へのヤミ献金事件後、日歯連の反省は、政治家の公約くらいの軽さしかなかったようである(TPPをめぐる自民党の公約のように、公約が軽くなったことの是非は論じないが)。業界団体の政治連盟は数多くあり、各団体の要求を実現するために政治活動をしているが、繰り返し政治資金をめぐって事件となる政治連盟は滅多にない。

 組織内候補を擁し、約30万票の得票、比例上位当選という組織力をバックに、診療報酬アップなどの政治的要求の実現を迫る。この構図は、業界団体の活動や本来の政治献金のあり方と似て非なるものだ。
 間接民主主義は、主権者が自分たちの要求を通すために、代弁する候補者を、票も金も出して議会に送り出すことによって、代表者を通じて主権を行使できる。金を出すこと自体は問題ではない。逆に、国民は、代弁してくれる政党・政治家に対し、1人の個人として、もっと票も金も出さないと、主権を行使できない。安保法成立がいい例だ。日本では、米国のように個人献金がもっと根付かないといけない。
 問題は、政党や、政治家個人の資金管理団体ではなく、政治団体をトンネルとして、最初に献金した者の意図を離れて、一握りの人間が集まったお金を動かし、そのお金の力で政治的影響力を行使することだ。

 今回、前会長らの逮捕容疑は、政治資金規正法違反(虚偽記入、量的制限違反)である。迂回献金疑惑というのは、日歯連が2013年、石井みどり中央後援会に対し、直接4,500万円を寄付し、西村まさみ中央後援会を経由して5,000万円の計9,500万円を寄付したという疑いと、2010年、西村まさみ中央後援会に対し、直接5,000万円、民主党参議院比例区第80総支部を経由して5,000万円の計1億円を寄付した疑いだ。

 迂回献金というのは、今回のように政治資金規正法で定められている政治団体間の寄付の上限(年間5,000万円)を超えて寄付するため、複数の政治団体をトンネルにして、目的の政治団体に寄付をとげるものだ。金に色が付いていないのをいいことに、複数の「川上」と複数の「川下」を混ぜて政治資金を流せば、上限を超えて寄付する意図の立証が難しく、起訴は困難だった。
 政治家が抜け道をふさぐ法改正に踏み切るか、政治家みずからが受け取った献金をチェックし厳しく律しなければ、再発は防げない。

【山本 弘之】

 

関連記事