金の備蓄増の背景には、脱ドル化の動き
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、12月1日付の記事を紹介する。中国の投資家は、このところアメリカの国債を急ピッチで手放し始めています。8月だけで、212億ドル相当の米国債が売られました。と同時に、中国の中央銀行はこれまでにないペースで金の購入と備蓄を進めています。その背景には、中国が直面している経済的困窮が隠されています。
アメリカの国債やドルを手放すことで、人民元の価値を高めようとする意図がうかがえます。中国はアメリカとの通商貿易関係を拡大してきましたが、アメリカ政府が直面している財政赤字や予算問題に危機感を募らせ始めているようです。
アメリカの2023年度の財政赤字は、1.7兆ドルを突破し、国家の負債は33.5兆ドルにも達しています。誰が考えても、これほど深刻な財政危機に陥っているアメリカのドルを、また債権を、買い支えるリスクは膨らむ一方と思われます。
これまでアメリカは、強力な政治力や軍事力を背景に、国際的な基軸通貨であるドルを外交上の武器として活用してきました。しかし裏付けのないドルを保有することには、BRICSをはじめ多くの国々が懐疑的になってきています。そのため、価値が保証されている金に対する重要性が急速に高まるようになったわけです。
中国の人民銀行は2002年から2019年の間に、1,448tの金を確保したと述べています。恐らく実際には、それをはるかに上回る金を世界中から、とくに最近はロシアから大量に調達している模様です。そのため、日本もそうですが、国際的に金の市場価格が高騰を続けています。
実は、金の購入を加速させているのは、中国に限りません。非ヨーロッパ諸国の間では、2022年に過去最大となる1,136tの金がシンガポールやインドなどの中央銀行によって、買い増しされ続けています。
BRICSのなかでも、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国だけでも、この10年間でほぼ3,000tもの金を購入しています。と同時に、BRICS諸国はそれまで保有していたアメリカの赤字国債を手放し、10年前の10.4%から今日では4.1%にまで60%以上も減らしているのです。
アメリカの財政赤字や国家としての先行きに対する不安感が背景にあることは間違いありません。このところ中国とロシアの連携プレーが注目を集めるようになってきました。
とくに注目すべきは、中国が主導する上海金取引所とロシアの国家金融協会との間で新たな金の取引市場を開設しようと動き始めたことです。西側諸国からの経済制裁を受け、ロシアは2022年以降中国との金の輸出を急拡大しています。
中国、ロシアに限らず、インドでも2022年、金の未来市場に関する新たな取引制度が発足しています。また、ヨーロッパのポーランドやチェコといった国々の間でも、金の確保に向けて動きが加速していることが確認されています。
世界的な戦争の拡大や経済対立が加速するなかで、金に対する信頼度や依存度は増す一方です。裏付けのない赤字国債から金という普遍的な価値を有する新たな債権が市場に出回り始めています。
日本においても、こうした脱ドル化の動きと新たな金本位主義的な経済政策が求められるようになっています。しかし、残念なことに日本はアメリカの圧力のもと、裏付けのないドルや赤字国債の購入を余儀なくされています。これからは、政府の言うことを鵜呑みすることなく、真に価値のある資源や不動産に投資する道を模索すべきと思われます。
まだまだ金の市場価格は高まっていくものと予測される今日この頃です。
著者:浜田和幸
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