2024年12月22日( 日 )

公立八女総合病院、建替え問題で議会や市民から相次ぐ財政負担の懸念の声(前)

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 15日に八女市議会が閉会する。今回の同議会一般質問においては、複数の市議から老朽化などで建替えが検討されている公立八女総合病院について質問が相次いだ。病院を運営する企業団を構成するのは、八女市と広川町だが、早期に移転建替えを進めたい八女市と、民間移譲も選択肢と考える広川町の間で、溝が埋まらない状況にある。

病院の移転地は西部が有力視

公立八女総合病院
公立八女総合病院

 八女市と広川町で構成する公立八女総合病院企業団の諮問機関「病院機能再整備基本計画策定検討委員会」は、公立八女総合病院(以下、八女総合病院)の再整備基本計画をまとめた。

 現在の八女総合病院は1994年6月に建てられ、約30年が経過し老朽化している。計画によると、新たな病院は、企業団が運営し、ホスピス緩和ケアを担う「みどりの杜病院」と統合し、八女総合病院とみどりの杜病院で、現在は330床ある病床を約300床まで減らし、高齢住民が増加している状況を踏まえ、脳や心臓疾患への対応を強化することを打ち出している。また、隣接する筑後市立病院との将来的な施設の統合・再編を見据えた敷地の確保を図るとともに、連携強化を図る必要があるとした。

 企業団は、工事にともなう安全面などを考慮し、現地建替えではなく、複数の移転候補地を選定した。筑後市立病院との将来的な統合を勘案し、病院建設に必要な用地確保や、利用者の利便性といった条件を満たす候補地として、現在、八女市中心部にある病院を、九州自動車道八女インターチェンジに近い八女市西部を最有力に挙げている。

 北九州市に次ぐ面積を有する八女市において、山間部から最寄りの病院まで1時間以上かかる地域もあるが、久留米大学病院高度救命救急センター(久留米市)に配備されたドクターヘリが活躍している。

 2013年までは、隣接する県立八女農業高校のグラウンドを借りて対応したこともあった。八女市は国の地域医療再生臨時特例交付金を基に、約2億5,500万円かけて、ヘリポートを八女総合病院付近、黒木総合支所、矢部村、星野村の4カ所に整備している。ドクターヘリの活用で、山間部から15分で久留米まで搬送が可能となった。

いまだ進まぬ自治体間の協議

 八女総合病院は、地域医療の中核的存在で、とくに医療機関が少ない旧八女郡地域に住む住民にとってなくてはならない存在である。

 だが、同病院に医師を派遣する久留米大学が16年に医師不足などを理由に、筑後市立病院との統合を提案した。これを受けて、企業団は、将来的な両病院の統合を前提に、筑後と八女とで診療機能をわけたうえで、八女総合病院を立て替える方向で検討してきた。

 20年3月には、西田正治筑後市長は議会の一般質問に対し「筑後・八女両市で検討していきたい」と統合に前向きな姿勢を表明している。

 コロナ禍の影響を受け、議論は進んでいなかったが、構成自治体の財政面や久留米大学病院から派遣されている医師の確保が厳しくなるなか、市民や議会からも、移転にともなう自治体の財政負担の増加を懸念する声が挙がっている。

 8月、企業団議会全員協議会(八女・広川の議員から選出)が行われ、企業団側から基本計画について説明が行われた。そのなかで、広川町の議員から「まずは、筑後市を含めて2市1町で話し合うべき」との意見が出されたという。9月に行われた企業団による八女市議会への説明においても、「住民に説明会もしないで移転を決めるのか」などの声が出されている。

(つづく)

【近藤 将勝】

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