2024年12月22日( 日 )

公立八女総合病院、建替え問題で議会や市民から相次ぐ財政負担の懸念の声(後)

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議会から噴出した財政負担への危惧

公立八女総合病院    12月の八女市議会は、4日に立憲民主党所属の花下主茂議員、5日には保守系無所属の牛島孝之議員、同じく石橋義博議員の3議員から、八女総合病院の移転新築計画について一般質問のなかで質問が相次いだ。

 とくに石橋議員は、「これ以上借金をして、最終的に廃院になって数年後には八女市民がその借金を被ることになりかねない」と指摘し「市役所新庁舎に加え、病院、図書館、消防署と建てるというが、建替えに一体いくらかかるのか」「足かせどころか八女市の倒産につながりかねない」と厳しく質した。

 しかし、三田村統之八女市長は、いずれの質問に対しても、筑後市や久留米大学との協議中であることを理由に「ここで経過をお話しできる環境ではない」「一番大事なことは、八女地域の医療、安全、命を守ることを基本として公立病院を考えていかなければならない」とのらりくらりした答弁に終始し、明確な言明を避けた。

 広川町は、渡辺元喜前町長時代に、17年に赤字状況が続く病院経営や、先述した医師確保の問題から民間譲渡を最適とする文書を企業団に提出し、19年には「企業団からの脱退もあり得る」とした文書を出しており、4月の町長選挙で就任した氷室健太郎町長は「筑後市を含めた話し合いの場をもつべきで、現状では賛成できない」としている。

 広川町は久留米市に隣接し、同市内に救急や高度医療に対応した総合病院が複数あることから、八女総合病院を手放しても、地域医療に影響は小さいとみる向きが少なくない。山間地を有する八女市との温度差はそのあたりにあるだろう。

 また、八女市民の間でも、筑後市に隣接し、JRや九州自動車道を通じて福岡都市圏や久留米市へのアクセスが良い旧八女市西部と山間地が多い東部や旧八女郡とでは、考え方の相違がある。八女市は、国道3号線周辺を境にして、平野部の西部地域は、商業施設や飲食店、医療機関、学校などが立ち並び、近年、筑後市と隣接する地域は、新たな住宅やアパート建設が相次ぎ、児童数も増加傾向にある。山間地が多い東部地域は、スーパーやコンビニエンスストアも少なく、医療機関はわずかしかなく、人口の減少も著しい。

 現在、八女・広川両自治体が企業団に支出する負担金は、全額が国からの交付税で賄われている。病院の移転新築にかかる費用も病院事業債を活用することで、27年度までに生じる費用の4割は交付税で措置されるが、11月中の申請が必要であった。しかし、両自治体の足並みがそろわず、総務省への申請はできなかった。

 11月に八女市内6カ所で行われた市民と議会の意見交換会でも、市民から八女総合病院の在り方や財政負担の増加を懸念する質問が相次いだ。過疎化による人口減少が続く八女市にとって、地域医療の維持と財政負担の増加とをどのように考えるのか。来年11月に市長選挙が行われることも念頭に、今後も激しい議論が続くと思われる。

(了)

【近藤 将勝】

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