2024年11月13日( 水 )

白熱した好勝負は引き分け アビスパ2-2シャフタール・ドネツク

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 サッカーJ1リーグアビスパ福岡は18日、東京・国立競技場にウクライナのFCシャフタール・ドネツクを迎え、ウクライナ復興支援チャリティーマッチを行った。この試合の収益は、経費を除く全額がウクライナ支援のために寄付される。

 ルヴァンカップ初優勝、リーグ戦史上最高の7位と、クラブの歴史に残るシーズンを過ごしてきたアビスパ福岡にとって、2023年最後となるこの試合。相手となるシャフタール・ドネツクは、ウクライナ国内のリーグ戦・カップ戦でそれぞれ13回優勝したウクライナきっての名門クラブである。今年11月には、UEFAチャンピオンズリーグでスペインのFCバルセロナを破り、世界のサッカーファンを驚かせた。

 12月の東京は、陽が落ちるとぐっと冷え込む。フィールド上はじっとしていられないほどの寒さだったが、観客席には多くのアビスパサポーター、そして招待されたウクライナ避難民が詰めかけ、熱気に包まれた。ウクライナ国旗をマントのように身にまとった両チームの選手入場に合わせて、ウクライナ国旗を構成するカラー、青と黄の巨大なスモークが炊かれ、バックスタンドには同国国旗のビッグフラッグが翻った。

挨拶に立った上川陽子外務大臣
挨拶に立った上川陽子外務大臣

    試合に先立ち、岸田文雄内閣総理大臣からのビデオメッセージが上映された。岸田総理は今年3月にキーウとブチャを訪問したことに触れ、「現地の戦禍の様子を目の当たりにし、『日本はウクライナとともにある』という決意を新たにした」とコメントした。また、スタジアムには、上川陽子外務大臣とセルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使が訪れ、挨拶に立った。

 試合はシャフタールの圧倒的な優勢でスタートした。14日に行われたチャンピオンズリーグ・FCポルト戦のスタメンの多くが先発したシャフタールに対し、アビスパはFW山岸祐也、MF井手口陽介、DF奈良竜樹、GK永石拓海ら今シーズンの躍進を支えた主力メンバーが欠場。だが、仮にアビスパ側がフルメンバーだったとしても、その差は明らかだっただろう。シャフタールの選手たちは二手三手先が見えているように軽々とボールを動かし、アビスパ得意の前線からのプレスがまったくかからない。パススピードも状況判断のスピードも段違いで、Jリーグの試合なら奪えるボールが奪えず、逆にJリーグならミスにならないようなプレーでもボールを刈り取られる。3分には、今シーズン大ブレイクをはたしたMF紺野和也がペナルティエリア内から狙いすましたシュートを放つが、わずかに枠を外れていった。

メインスタンドに陣取ったシャフタールサポーター
メインスタンドに陣取ったシャフタールサポーター

 試合が動いたのは7分。右サイドでボールをもったシャフタールDFジョルジ・ゴチョレイシビリがアーリークロスを上げると、アビスパDF宮大樹とDF田代雅也の背後からスッと抜けてきたFWダニーロ・シカンが完璧なタイミングでヘディング。ボールはGK坂田大樹の逆を突くかたちでサイドネットに吸い込まれた。クロスの正確さ、FWシカンの抜け出す動き、ヘディングのコースまで含めて、まさにワールドクラスのゴールだった。

 だが、これで意気消沈とはならないのが今年のアビスパ。相手にボールを支配される状況はむしろ慣れっこといえる。左サイドバックのDF亀川諒史、この日キャプテンマークを巻いたFW金森健志が連携して攻め込むと、33分にコーナーキックを獲得。MF中村駿が蹴ったボールをFW金森が倒れこみながら頭で合わせると、GKドミトロ・リズニクが弾く。そこに詰めたDF宮のシュートはいったんGKリズニクに阻まれるが、浮き球になったボールを再度DF宮がヘディングで押し込み、同点に追いついた。セットプレーからの泥くさいゴール。まさに今シーズンのアビスパを体現するゴールだった。

FW城後寿は精力的にプレスをかける
FW城後寿は精力的にプレスをかける

 この後、36分にはFW金森のゴールでアビスパが勝ち越すものの、後半開始直後の53分にはFWマリアン・シェヴドの芸術的なゴールで2-2と同点に追いつかれる。この試合が現役最後の試合となるMF田邉草民、今シーズンなかなか出番に恵まれなかったMF田中達也が躍動するが、試合はこのまま終了。試合終了後は、両チームの選手たちが健闘をたたえ合った。

 大成功に終わった今回のチャリティーマッチ。可能ならば、毎年の恒例行事となってほしいものだ。もちろんロシアによるウクライナ侵攻が終わるのがもっとも望ましいが、戦争が終わっても国土の復興には長い年月が必要となる。ウクライナと日本は一体だ、という岸田首相の言葉を、サッカー界でも行動で表現していきたい。そして、アビスパ福岡が大きな役割をはたすことを願ってやまない。

【深水 央】

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