2024年11月23日( 土 )

日本は独立国と言えるのか?沖縄の米軍基地移転問題について考える

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、1月5日付の記事を紹介する。

普天間基地 イメージ    戦後75年余りが経ちましたが、日本各地には130もの米軍基地があり、なかでも沖縄にはその7割以上が集中しています。異常としか言いようがありません。独立国であるならば、アメリカとの同盟関係は外交上も重要であることは論を待ちませんが、安全保障上の観点から米軍基地を日本政府の経費負担の下で維持し続けることは見直すべきでしょう。

 もし、普天間基地が辺野古へ移転されることになれば、今後100年以上にわたり、沖縄は過剰な基地負担を背負わされることになります。2019年の政府発表によれば、移転総経費は当初の4倍に達する9,300億円。今後も増額するに違いありません。

 これだけの国費、税金を投入する移転の是非が、国会で十分に議論されてこなかったのは問題です。今こそ日本政府は沖縄県民の意思を尊重し、米軍基地のない沖縄の実現に知恵を縛るべきではないでしょうか。沖縄県の意向を無視する形での辺野古への代執行が強制されれば、中央政府との軋轢が深まり、他の地方自治体にとっても同様ですが、政府への不信感は強まるばかりになるでしょう。

 沖縄の玉城デニー知事は辺野古への移設阻止を「1丁目1番地」の公約として掲げて選挙を勝ち取ってきました。そのため、政府の代執行に従うことはできないはず。戦後の米軍統治や米軍関係者の引き起こしてきた数々の事件に対し親身の対応をしてこなかった中央政府への怒りをためています。そうであれば、辞表を提出し、改めて県民の民意を問う「出直し選挙」に訴える可能性も否定できません。

 玉城知事はこれまで繰り返し「政府との対話」を通じて、問題の解決を目指してきましたが、中央政府からは前向きの対応は得られませんでした。中央政府がアメリカとの関係を重視するあまり、沖縄や他の地方政府の意向を蔑ろにする姿勢を取り続けるなら、政権への反発や不安定化が大きくなることは避けられないでしょう。

 中央政府は沖縄県民の「不公正」感への配慮が必要です。なぜ国土面積の0.6%しかない沖縄が全国に広がる米軍専用施設面積の70%を押し付けられたままなのか。そもそも、戦後の米軍による占領下において、多くの沖縄住民が収容所に隔離されていた間に無断で居住地や田畑が接収され、米軍基地にされてしまった経緯を忘れるわけにはいきません。

 多くの沖縄県民は日米安全保障体制の必要性には理解を示しています。しかし、県民の理解を得ないまま辺野古への移設を強行することになれば、県民の対米意識も中央政府への信頼も悪化し、結果的には日米関係の不安定化につながりかねません。日本政府は日米合同委員会等の場で一方的にアメリカの要求を突き付けられてきましたが、今回の普天間基地の辺野古移設についても、現状の強制的な手法では日米関係にも悪影響が及ぶことを説明し、沖縄県民の納得が得られるような方向に再調整を図るべきと思われます。

 とくに、辺野古周辺の海域はジュゴンをはじめ絶滅危惧種262種を含む5,300種以上の生物が確認されているではありませんか。日本最大の世界自然遺産地域に他なりません。そんな豊かな自然環境の破壊につながりかねない米軍基地の移転計画は国際的にも反発を呼び起こす恐れがあります。


著者:浜田和幸
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