関西万博をめぐる高市対岸田と自民対維新の水面下の暗闘
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「政治とカネ」の問題に注目が集まるなか、次の自民党総裁選を視野に水面下の駆け引きが活発になっている。
高市対岸田・林の戦い
ポスト岸田の有力候補と目される高市早苗経済安全保障担当大臣の動きに注目が集まっている。
高市氏は27日、長野市内で講演し、能登半島地震の復興を優先するため、来年予定されている大阪・関西万博の開催を延期するよう岸田文雄首相に進言したことを明らかにした。
これは、総裁選に向けて岸田政権の「震災復興の遅れ」を指摘することで「万博延期」を訴え、安倍派をはじめとする主要派閥が裏金問題で動きがとれないうちに、総裁選に向けた土台を固めることを意図したものだろう。同時に高市氏の地元・奈良でも勢力を強めている日本維新の会をけん制することにもなる。
高市氏は、超党派の「万博を成功させる議員連盟」に対して30日付で退会届が提出したという。
現職閣僚による国家プロジェクトに対する問題提起であり、閣内不一致ではないかとの見方があるなか、官邸は火消しに動き、29日の会見で林芳正官房長官が万博の延期は行わないと言明した。
「経済産業省からは現時点において、万博関連の資材調達などによって能登の復興に具体的な支障が生じるという情報に接していないと聞いている。令和7年4月に予定されている大阪・関西万博の開会を遅らせる必要があるというふうには認識していない」
高市氏も30日の記者会見で、岸田首相に対し万博の延期を進言したことについて、「大阪・関西万博と能登半島の復旧復興、両方完璧にやり切るということが日本の名誉の上で大事だ」と述べたうえで「岸田総理が齋藤経済産業大臣に、資材の需給を丁寧に把握し、調達を計画的に進めるよう指示を出され大変感謝している。総理からは電話もいただき『被災地の復旧には支障が出ないように配慮する』と伝えられた」、「最終的には総理の判断に従うと伝えており、信頼してお任せしたい」とトーンダウンした。
岩盤保守層向けのアピール
岸田首相も強かで、高市氏のメンツを損ねないよう経済安全保障分野の機密情報に触れる権限を付与する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度」を創設する法案の今国会提出に向けた準備を急ぐよう高市氏に指示するなど、取り込みに余念がない。
政界関係者の間には、施政方針演説で「あえて自民党総裁として申し上げれば、議論を前進させるべく最大限努力したい」と憲法改正に言及したのは、高市氏と、高市氏を支持する岩盤保守層へのアピールであるとの見方がある。
岸田首相の出身派閥、宏池会は自民党内でもリベラルとみられており、安倍晋三元首相や麻生太郎自民党副総裁の力を借りて首相に就任した岸田首相にとっては、岩盤保守層の支持を確立することが党内基盤の安定となる。
高市氏は2021年の総裁選では、安倍元首相に担がれ3位と健闘したが、高市氏の台頭を阻止したい安倍派幹部らの支持を得られず、安倍氏の急逝後は孤立した状況になっていた。一方で日本会議などの保守勢力の支持は堅く、福岡でも支援組織が発足している。
ただ、総裁選立候補には推薦人20人が必要であり、自らの勉強会を旗揚げしたが出席者は10数人にとどまるなど、国会議員の支持が伸び悩んでいた。
岸田首相やポスト岸田を狙う林官房長官からみれば、経済安全保障や憲法改正の餌を与えて高市氏の動きを上手に封じれば、政権の安定につながる。
維新対自民の陣取り合戦
高市氏による万博延期の進言に神経を尖らせたのが、大阪府知事・大阪市長が属する日本維新の会である。
30日の会見で馬場伸幸代表が「政治家の信念で延期を言い続けるなら辞職すべきだ」と高市氏の発言を批判し、「首相がやるということに従うのであれば、議連を抜ける必要はないのではないか」と疑問を呈した。
また「北陸方面と関西、大阪というのは人的、歴史的な交流というのが非常に強い。来年の今頃というのは、さらに北陸が力強く立ち上がっていくなかで、万博にきていただいた皆さんが北陸方面にもお出かけいただくことで、経済的な部分で長い目で北陸を応援していくことにつながる」と万博開催の意義を強調した。
安倍元首相が存命であれば、維新と気脈を通じる安倍氏や菅義偉前首相を通じて対話をすることで関係がこじれることにはならなかっただろうが、高市氏も維新側もお互いに引くことができない。というのも、高市氏を筆頭に関西の自民党は、支持者を維新に奪われているとの危機感が強いからだ。今後も関西の自民党と維新の間で火花を散らすことは間違いない。
【近藤 将勝】
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