CDMO事業に注力する韓国の製薬会社(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏現在、世界で創薬に成功した品目の約8割がベンチャーによって生み出されているという。新型コロナのワクチンを開発した米モデルナも2010年に創業したベンチャーだが、米政府による大規模な製品購入や資金支援によって急成長した。CDMOのなかでも、とくに注目されているのがバイオ医薬品の分野だ。
細胞は日によって活性度が異なることはよくあるし、どのような培地を好むかなど、試行錯誤を繰り返して初めてわかるような要素も多い。バイオ医薬は製造工程が複雑なうえ、治療薬の種類が多く、いち企業ですべてに対応するのは難しい。事業規模が比較的小さくても、独自の技術力を生かせば活躍できる余地もCDMOビジネスには十分ある。
日本企業でCDMOビジネスにいち早く目を付けたのが富士フイルムだ。同社は11年に米メルクからCDMO2社を買収し参入して以降、積極的にM&Aや設備投資を展開し、現在では世界有数のCDMOになっている。製造能力ではスイスのロンザなどの世界トップ企業に匹敵する規模だ。韓国にもサムスンバイオロジクスやSKバイオサイエンスなど、CDMO分野においてグローバルに事業展開する企業がある。
業界のゲームチェンジャー肥満薬
製薬業界も時代によってヒット医薬品が変わっている。世界売上高ランキング1位は抗体医薬品(バイオ医薬品)であった。そして、コロナ感染の期間中はコロナワクチンがランク1位に躍り出た。ところが、現在は肥満症薬が世界市場をリードしている。21年に発売したノボノルディスク肥満症薬「ウゴービ」は供給が需要を追いつかない状態で、工場はフル稼働している。肥満症薬の市場はデンマークのノボノルディスクと米イーライリリーの2社が主導している。
人体には「GLP-1」というホルモンが分泌される。このホルモンはインシュリン分泌を促進させると同時に食欲を抑制する。しかし、体内ですぐ分解されてしまうので、医薬品にならないが、似たような構造で長く効果が持続するたんぱく質をつくり体内に注入する方法が効果を発揮している。この市場は毎年30%ずつ成長し、30年には100兆ウォン市場になることが予想されている。
このような状況下で、CDMO市場にも追い風が吹いている。肥満症薬の製造には今現在も製造施設が足りないなか、今後需要が伸びていくことが予想されているからだ。ノボノルディスク社はライバルのイーライリリーが使用していたCDMO工場3カ所を2月はじめに22兆ウォンで買収した。イーライリリーはこの結果製造するところを失い、同社は28年度に新工場が完成するまで新しい工場を探す必要に迫られている。業界の専門家によると、このような状況が今後5年間は続くだろうという。
バイオ工場は設備投資だけで済むわけではなく、バイオ医薬品のプロセス開発などが必要であり、数年は時間が必要であり、グローバル企業によるCDMO企業へのM&Aが活発化することが予想される。一連のプロセス短縮のためにはM&Aは有効な方法であるからだ。たとえば、グローバル企業は韓国のサムスンやSKに委託案件を相談し、キャパが足りなくなった韓国大手企業が中小企業を買収してキャパを増やしていくような連鎖反応が起こるだろう。いきなり新薬開発を行うよりはハードルの低いCDMO事業に韓国製薬会社は注力している。
(了)
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