2024年11月24日( 日 )

【BIS論壇 No.438】躍進するインド

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は4月5日の記事を紹介する。

インド大使館 イメージ    インド大使館で5日、インド工業連盟(Confederation of Indian Industry=CII)の訪日ミッション会議があり参加した。タタ・ケミカルズ、リライアンス財閥代表など13名がインドから参加。シビ・ジョージ・駐日インド大使のキーノートスピーチもあった。

 インドは2023年に旧宗主国の英国を抜き、GDPで世界第5位の経済大国に発展。さらに2026年には日本を抜き、27~28年にはドイツも抜きさり、米国、中国に次ぎ世界第3位のGDP大国に躍進すると予想されている。

 23年に中国を抜き、世界最大の人口大国となったインドは、とくに理数系に優れた人材が豊富で、21世紀に発展するITC、AIなどの分野でさらに活躍すると期待されている。

 日本とインドは戦略的互恵関係にある。明治の岡倉天心と交流があり日本を訪問したアジア初のノーベル文学賞に輝いたアジアの詩聖、ラビンドラナート・タゴール、インド独立の始祖、チャンドラ・ボースなど仏教伝来以来の関係が深い。インドには親日家も多い。

 今回のミッションはTVS Supply Chain Solutionsの会長でCII会長のMr. R. ディネーシュが団長を務めた。同氏によるとインド経済は好調で年率7.5%の成長が予想されるとのことだ。とくに日本とはSME(中小企業)分野で、技術を共有し、パートナー関係を強化。さらに技術協力を強化し、グローバルバリューチェーンを構築したい。医療器械、GX(グリーントランスフォーメーション)の強化。とくに太陽光分野でのエネルギー関連技術。日印人材交流、環境、文化関連での毎年のミッションの相互交流。さらに本州のみでなく、北海道、沖縄を含めた革新技術でのパートナーシップの強化を強く希望するとの意思表明があった。

 JETROの仲條理事は在印日本企業のインドからの輸出が2016年の14.5%から2023年には18%に増加。インドが日本企業の有力輸出基地になりつつあること。かかる趨勢から在印日本企業が現在の1,500社から3,000社に増加することを期待するとの表明があった。

 日本の代表的成功例のスズキはインドでの乗用車シェアは最大だが、EVにも進出しつつある。さらにインドは再生エネルギーや、水素、食品、デジタル、AI、研究開発分野でも日本と協力したいとの強い要請があった。半導体製造においても大型工場建設に力を入れている。インドは“Made in India for the World”を目標に、世界の製造ハブを目指したい。自由主義国家としてインドと日本は親和性があり、中小企業を始め、Smart Manufacturing Hubを志向しており、日本の協力に期待すると要請された。

 とくに、生成AI、サイバーインフラ、量子コンピューター、デジタル公共インフラなどを含む次世代の労働力育成に努力したい。日印は経済のみでなく、文化交流も活発化させ、米中経済対立下で日印の協力をさらに進化させたいとの日印双方の強い意志表明があった。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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