【トップインタビュー】経営支援から地域振興までサポート 福商は中小企業の身近なパートナー~福商新規部会長に聞く(3)
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福岡商工会議所
食料・水産部会部会長
(株)トクスイコーポレーション
代表取締役社長
徳島 建征 氏福博経済発展の一翼を担ってきた経済団体の福岡商工会議所(以下、福商)。会員数2万社に届こうかというメガ団体で、活動領域は会員向け経営支援から地域振興まで幅広い。その食料・水産部会(以下、食水部会)には約1,400社が所属し、地場産品のPRや講演会、懇談会などで存在感を示している。具体的成果が上がる部会の背景や福商全体の展望について福商の大ファンを自認する部会長・徳島建征氏に聞いた。
地場産品のアピールに同業者・ライバルが協力
──食水部会が主催し3月に岩田屋で開催された41回目の物産展「食品まつり 博多うまかもん市」(以下、うまかもん市)が盛況でした。
徳島建征氏(以下、徳島) 今回は初出店28社を含む65社68ブランドに出店していただいたのですが、出店社さまの魅力、会場の岩田屋さまの尽力、(株)鈴懸・中岡生公実行委員長をはじめ福商関係者の努力により、おかげさまで6日間で約3万人のお客さまにご来場いただきました。本格的な経済活性化の流れか、春の賑わいも相まって売上も上々でした。
今でこそ行政や地域・業界団体が地場産品の振興に積極的に取り組む世の中ですが、40年以上も前に、「“地元のショーケース的な物産展”を“地元”で開催した」うまかもん市の取り組みは当時画期的でした。ご来場の皆さまにご支持いただき、回を重ねるごとに販路拡大はもちろん、出店社同士の連携や、東京やほかの地域への展開などさまざまな成果が生まれ続けています。
印象深い出店社さんは、1982年の第1回から継続出店していただいているベーカリー・シモン(中央区港)さん。天然酵母を用い、石窯で焼く本格派ベーカリーの日本の草分けです。オーナー職人の平田 健太郎さんは92歳!今でも朝4時起きでパンを焼く現役です。おそらく日本どころか世界最高齢域の職人でしょう。数多くのおいしいパンを生み出す一方で人材育成、地域の食産業連携にも力を注いでこられた地元の財産です。また渡辺通にある日本料理店さんの「だしいなり」は絶品でした。ご出店いただいたときはちょうど、福岡市エリアでのファンがじわじわ拡がっているタイミングでしたが、ご出店中から人気が爆発し、一気に噂になった記憶があります。その後も、和食の粋を込めた「だしいなり」専門店に専念され、現在では東京・日本橋にも行列のできる店舗を構えておられます。
また団体での出店で印象深いのは福岡市のある離島の漁協さん。島のPRや産業振興を図るために魚の身をほぐした加工品の製造・販売を始めて、島名を冠した「漁師のしまごはん」としてご出店いただきました。ほっこり沁みるおいしさで、やはり徐々にファンが拡がり、市内の主なお土産売場では必ずお見かけするようになりました。紙幅に限りがありますのですべてご紹介できませんが、ほかにも新宮町の干物専門店さんをはじめ、たくさんすばらしいお店にご出店いただいています。
──ある意味、同業者・ライバルが同じ目的に向かってプロジェクトを推進するわけですから異例ですね。
徳島 商工会議所の特徴が表れていると思います。商工会議所ごとに会員組織の構成はさまざまですが、たとえば福商は事業分野や商流カテゴリーで11の部会を組成しており、当社はそのなかの食水部会に所属しています。部会員は農産・畜産・水産を取り扱う市場から、各種卸売、各種小売、もちろん各種生産者を含めてさまざまです。規模的にも中小企業がほとんどで、ある意味皆さん“消費者の胃袋を奪い合う”ライバル同士ともいえますが、同時に“消費者に一緒に食べてもらう”ための協力・連携関係でもあるわけです。
福商の活動に参加するようになって15年経ちますが、とくにうまかもん市では、代々の岩田屋ご担当者さん、福商事務局の親身なサポートも相まって、出店社さんが「相見互い」といいますか、食べ合って研鑽したり、ノウハウを共有するケースが多いです。そんな雰囲気のなか、皆で福博のおいしいものも持ち寄って結集し、そこを目がけてお客さまも集まっていただく…。結果、市場が拡大するという考え方での取り組みが自然に行われていると感じます。
──県や市や支援団体と開催している「Food EXPO Kyushu」(以下、フードエキスポ)も発信力のあるイベントですが、発案されたのが徳島部会長だったとうかがっています。
徳島 フードエキスポも食水部会として重要なイベントですが、実は企画自体は福商ではなく、福岡地域戦略推進協議会(Fukuoka D.C.、以下FDC)の枠組みで生まれました。2011年の設立当初は食関係の会員が少なく、当社を含めて2社。自然と地域の食産業を背負うような状況に追い込まれ、うっかり全体企画会議で「展示会はどうでしょう」と言ってしまったのが実情です(笑)。ただ、打ち手としては定石でもあり、すでに私も福商の立場として物事を考えるようになってしまっていたので…。大まかな構想をまとめて、当時の福商のうまかもん市担当部署を手始めに、育ての親ともいえる中村仁彦専務理事(当時)、そして故・末吉紀雄会頭(当時)にご相談しました。快くご賛同・ご支持といただいたうえ、福商として組織的なバックアップ、構想通りに福岡県・福岡市・福岡県商工会連合会・ジェトロ福岡へのお声がけもいただき、ほどなく各チームより経験豊富な頼もしいメンバーを派遣いただきすばらしい実行委員・運営委員会が組成されました。
さらに事務局一同で企画も練り込んで14年10月、福岡国際センターにて第1回を開催。おかげさまで初回から相応の内容・規模の展示会を開催することができました。当時、海外向けの展示会はまだ少なく、折しも県や市が海外事務所設置戦略を見直した時期に重なっていたことも幸運でした。フードエキスポは現在も九州の食を世界に発信するべく、関係各所のお力添えで毎年秋に同センターで開催されています。今年の日程は10月8、9日。昨年の商談件数は2,826件で今年はさらに増えることを期待しています。
多彩なプログラムで地域企業を支援
──影響力や陣容の分厚さを見ても福商はほかに類を見ない影響力ですね。
徳島 はい、最も着目すべきは実働部隊の強力さです。事務局に約150名の職員さんがおられます。スキル・熱意とも高く、私たち会員が本業の傍らで活動できるのも彼らの推進力があってこそです。商工会議所の規模でいいますと福商だけで会員数は1万9,710社。全国には515の商工会議所が存在し126万社が加盟していますが、そのなかで4番目に多い会員数です。質・量ともに多様な活動を実行できる編成です。
──たしかに中小企業を取り巻く経営環境が厳しいなか、実際にさまざまな取り組みを行っておられますね。
徳島 福商では、定期的な会員アンケートや事務局による会員ヒアリングによる調査を行い、会員の事業環境に寄り添った活動を行っています。現在、最新の調査結果では経営上の問題点として、「人材難、求人難、定着率の悪化」がワースト1に挙がっていますが、人材難や求人難には、人材確保に向けた支援窓口の設置、公的機関と連携した新卒人材およびキャリア人材とのマッチング支援、学校と企業との就職情報交換会、人材開発セミナー開催などにより支援しています。また採用後の課題についても、福商実務研修講座や新たに設けられた経営者・経営幹部向け講座「FCCI High-class workshop」や日商簿記をはじめとした各種検定事業などのメニューを取りそろえて対応しています。
調査結果ワースト2には「原材料高・入手難」が挙がっていましたが、福商では支援策の1つとして価格転嫁など取引適正化の推進に力を入れています。中小企業庁などが推進する「パートナーシップ構築宣言」への登録推進もその1つで、発注者側が代表者名義で宣言・登録するものです。サプライチェーン全体の共存共栄を図ることと下請企業との価格決定方法について宣言します。意訳すれば理不尽な下請いじめをしないと公に発信することになります。全国の企業が宣言・登録することにより、商品・サービスの価値に見合った適正価格での取引文化が浸透していくと期待しています。
──他の重点施策もいずれも中小企業の経営課題解決に即している内容です。
徳島 はい、やはり定期の調査結果に基づいていますので即効性がある施策が多いです。とりわけ入会時アンケートで要望が高い「交流会活性化」や「販路拡大支援」は、重要施策として取り組んでいます。
「交流会活性化」事業では福商全体、部会、新入会員、テーマ別交流などさまざまな種類の交流会があり、折々で会員の要望を取り込みながら今後さらに拡充される予定です。「販路拡大支援」は福商全体、部会ごとにさまざまですが、近年産業分野を掛け合わせたマッチングに新たな可能性を見出しています。「クリエイターマッチング」など福商が強みとする食や観光商談会にデジタルやクリエイティブの要素を加えることで生産性や付加価値を上げようという取り組みです。2年前に3件だった商談件数は、今期2月までの段階で758件に上っています。
また我々食水部会としては、やはり引き続き、第11回フードエキスポ、第42回うまかもん市や、FOODEX JAPAN への出展支援など、主力事業を含めた各種展示会・商談会・マッチング支援に注力してまいります。とくにフードエキスポから派生したオンラインマッチング「Food Biz Kyushu」はしっかりプロモートしていきたいです。
──福商では「DXの推進」にも取り組まれています。
徳島 これも一昨年の福商アンケートを基にしています。中小企業から「どこからIT化してよいかわからない」「自社にあったITツールがわからない」という結果を受けて、福商は「よかデジ」という福岡のIT企業が連携し、中小企業のサービスを強化・デジタル化を後押ししていくコンソーシアムを立ち上げています。NTT西日本、QTnet、リコー、福商の4者で事務局を組成し、福商の経営指導員とコンソーシアムのITコンサルタントが連携し、デジタルツールの提案から導入支援、導入後のフォローをワンストップ対応する仕組みです。まだ相談数が少なく評価段階ではありますが、社内にまったくリソースがない場合の相談相手やほかのサービスとの比較参照案としてぜひ一度ご活用していただきたいと思います。
──「経営課題解決」においてはコロナ禍に事業再構築補助金の申請支援を福商が数多く手がけるなど真価を発揮しました。
徳島 福商は、コロナ禍の大変な時期に、会員、非会員問わず膨大な経営相談に対応されました。また事業計画相談、必要書類の作成指導を含め、中小企業のサポートに多大な貢献をされていて、頭が下がります。ゼロゼロ融資の返済期限が差し迫るなか、さまざまな課題・問題を抱える会社も多いかと思いますが、「何から着手すればいいのか、誰に相談すればいいかわからない」ような時こそ、ぜひ福商に相談していただきたいと思います。
【鹿島 譲二】
<COMPANY INFORMATION>
福岡商工会議所 食料・水産部会
部会長:徳島 建征
所在地:福岡市博多区博多駅前2-9-28
会員数:1,434
<プロフィール>
徳島 建征(とくしま・たてゆき)
(株)トクスイコーポレーション代表取締役社長。2009年に福岡商工会議所議員。11年より常議員。23年より食料・水産部会部会長。ほかに福岡経済同友会 常任幹事。福岡貿易会 理事。九州経済調査協会 企画委員など。関連記事
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