2024年11月13日( 水 )

エースストライカーの競演! 福岡2-2磐田

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 サッカーJ1リーグアビスパ福岡は20日、ホームのベスト電器スタジアムにジュビロ磐田を迎えて第9節の試合を行った。磐田は2022年にJ1最下位となり、球団史上3回目のJ2降格。選手移籍ルール違反があったために補強禁止処分を受けるなど、苦しい戦いの末に今シーズンからJ1復帰を成し遂げた。かつてJリーグで一時代を築いた古豪だが、近年は難しいチーム状況が続いている。

 そんな磐田とアビスパが久しぶりに顔を合わせたこの試合を彩ったのは、両チームのエースストライカーだった。

 チーム戦術全盛の現代サッカーにおいても、「エースストライカー」という存在が持つ魔力はいまだに健在だ。この日、ベスト電器スタジアムに詰めかけた観衆は、その魅力に存分に酔いしれた。

 まず輝きを見せたのが、ジュビロ磐田のエースストライカー・FWジャーメイン良。日本代表経験こそないものの、俊足と優れた身体能力で常々未完の大器として期待を集めていた。昨シーズン、J2で9ゴールを挙げてついに覚醒。今シーズンも第2節の川崎フロンターレ戦で4ゴール、第6節のアルビレックス新潟戦で2ゴールと固め打ちを決め、計7ゴールを挙げて博多の森に乗り込んできた。

 試合はアビスパのペースでスタート。攻守に積極的なプレーを見せ、何度かチャンスをつくるアビスパに対し、磐田はややスローペースの立ち上がり。だが、磐田の数少ないチャンスで結果を出して見せたのがFWジャーメインだった。30分、中央での競り合いから磐田は右サイドに展開。MF松本昌也がフリーでクロスを送ると、ゴール前に斜めに走りこんできたFWジャーメインが横っ飛びしながら見事なヘディングシュート。先制点は磐田に入った。

 後半開始直後、またもFWジャーメインの見せ場が訪れる。47分、MF藤原健介がまたもフリーで上げたクロスボールにMF平川怜が頭で合わせるが、これはアビスパGK村上昌謙がセーブ。だがボールがこぼれた先に走りこんでいたFWジャーメインが、倒れこみながらもダイレクトシュートを叩き込んだ。これで0-2と磐田がリードする。

 だが、ここからが本番だ。アビスパのエースストライカー・FWシャハブ・ザヘディが、満を持して登場する。

 きっかけは、長谷部茂利監督の采配だ。左ウイングバックを務めるDF前嶋洋太の裏を突かれての2失点に対し、長谷部監督はDF前嶋に代えてFWウェリントンを投入。左ウイングのFW岩崎悠人をウイングバックに下げ、トップにFWザヘディとFWウェリントンが並ぶ布陣に変更する。これが功を奏したのが、交代わずか2分後の60分だった。

60分、針の穴を通すようなFWザヘディのシュート
60分、針の穴を通すようなFWザヘディのシュート

 中央でパスを受けたMF前寛之がピッチを見渡し、左サイドを後ろから快足を飛ばして駆け上がってくるFW岩崎にロングパス。FW岩崎が左足でややアバウトなクロスを上げると、FWウェリントンが完璧に競り勝ち、FWザヘディの前にボールを落とす。ザヘディは落ち着いてボールをさばき、5人の磐田守備陣と元日本代表GK川島永嗣のあいだを射抜く、針の穴を通すような正確なシュートを決める。これでベスト電器スタジアムの空気が一気に変わった。

78分、FWザヘディはDFリカルドグラッサをかわしシュート
78分、FWザヘディはDFリカルドグラッサをかわしシュート

 そして78分、ベススタが歓喜で爆発する。交代で入った磐田MFレオ・ゴメスがピッチ中央でボールをもつが、アビスパの選手たちは鋭い出足でパスコースを消す。焦れたレオ・ゴメスが長いグラウンダーのパスを送るが、これをFWザヘディが奪い、そのままゴール前まで前進する。ペナルティエリア内で相対した磐田DFリカルド・グラッサを冷静にかわすと、強烈なシュートを打つ。GK川島はなんとか触ったものの、弾かれたボールはそのままゴールに突き刺さり、0-2からついに同点に追いついたのだ。

78分、同点ゴールを決めサポーターに向かって喜びを爆発させるFWザヘディ
78分、同点ゴールを決めサポーターに
向かって喜びを爆発させるFWザヘディ

 その後、勝ち越しを狙うアビスパが猛烈に攻め立てるものの、磐田も執念でゴールを死守。試合はそのまま2-2の引き分けに終わった。

 終わってみれば引き分けのゲームではあるものの、冷たい雨のなかベススタに訪れた観客にとっては今シーズン一番の好ゲームだったのではないだろうか。ザヘディが2ゴール目を叩き込んだ瞬間、ベススタの観客席からはこれまで聞いたことがない、ほとばしる地鳴りのような大歓声がピッチに降り注いでいた。

 監督の采配でしぶとく勝つ玄人好みの試合もいいが、敵味方のエースストライカーが強烈なゴールを叩き込む派手な試合もまたすばらしいもの。あのスタジアムの雰囲気を一度でも味わうと、サッカー観戦はやめられない。

 アビスパの次のホームゲームは、ゴールデンウィーク期間中。ベススタで行われる5月3日のガンバ大阪戦、5月6日の川崎フロンターレ戦で、あの歓喜の瞬間を1人でも多くの方に味わってほしい。

【深水 央】

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